サイハテカナタ

 病室に一羽だけのあおい折り鶴が、最後に目で見たもの。


 手足の軸が、埋まる。


 芯から凍る、不可思議な現象。


 この冷たい空気が意外と好きなんです。


 手足が末端から閉じていく。


 凍っていく。


 嫌いじゃない。もっとも身近に死を感じられるから。


 秋からこの冬、そして春、僕のむくろは、存在しないアクアリウムカーペンターの花に押し上げられることを待たずに、起き上がるだろう。


 止まってほしいと。


 次はいっそ夏で始まり夏で終わってと望む願望。

 この絶望も焦燥も、全てが無意味なのだから。



 いつぞやの冬虫夏草とうちゅうかそうが僕に尽くす。


 ああ、彼女はベースを弾いたんだった。


 どうして、同じようなことを、いくつも忘れているんだろう?


 たしかに夢を持ち、しかし、無関係な多くの遊びを、すべて中途半端に浴び続けていた。


 まるで夏休みの宿題に背を向け続けつつ頭から消えない焦燥のよう。


 同じく、時計の針が心を切り刻み続ける、終わらない夏休みの宿題みたいな、やることなすこと空回りする世界で。


 僕も知らない世界を、新しい夏を、いつか見たいと願うよ。


 孤独?二人?その選択は花をみ取るがごと惨劇さんげきか?


 折り鶴は病室から窓辺に、放物線を描いて舞うのか?




  

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