第700話 地下道の調査を終える
地下道を抜けて地下室へと戻ってきた。そこでは慌てた様子の司祭様が待っていた。何かあったのかな? 思わずみんなと顔を見合わせた。
「先ほど窓の外に、天高く光の柱が昇ったのですが、何かあったのですか!?」
「え、地上にも見えてました?」
「それは一体、どう言うことでしょうか?」
司祭様が首をかしげた。どうやら俺の使った魔法が地上まで突き抜けていたようだ。これはまずいかもしれない。
それに気がついた俺たちは地下道で何があったのかを司祭様に話した。
「なるほど、リッチにターンアンデットですか。どこでその魔法を……いや、これ以上は聞かないでおきましょう。ダニエラ王女殿下からの手紙にもそのように書かれておりましたからな。ささ、昼食の準備が整っておりますよ」
ダニエラお義姉様の手紙には一体何が書かれていたのか。地下道に入る前よりも丁寧な口調になった司祭様に導かれて、俺たちは教会の食堂へと向かった。
教会内ではちょっとした騒ぎになっていた。
「司祭様、今まで一体、どこに! 貴族街から光の柱があがっておりました。あれは一体?」
「何も心配する必要はありませんよ。悪しき者が倒され、天へと昇っただけですから」
「は、はぁ」
一体何を言っているのか分からないような顔をした修道士だったが、司祭様にうながされて昼食の準備へと向かった。
「あれでよかったのですか?」
「問題ありませんよ。すべては神のご意向によるものですから」
意味深な発言をする司祭様。ますますダニエラお義姉様の手紙に何が書かれていたのか気になるな。しかしそれを見せてもらうわけにもいかず、案内された食堂で昼食を食べた。
「司祭様、午後からは残りの地下道を調べます。他に祭壇はないと思いますが、一応念のために」
「よろしくお願いします。まさか本当に祭壇があるとは思いませんでした。この役目を引き継いだときにも、そんな話は出ませんでしたからね」
申し訳なさそうな顔をする司祭様。もう少し若かったら、自分も一緒について行くと言ってたんだろうな。
これを機に、引退するとか言い出さないよね? なんかそれだと、俺たちが引導を渡したようで嫌だな。
「ユリウス様、そのようなお顔をなさらないで下さい。ユリウス様たちがしっかりとお役目を果たして下されば、今しばらくは心安らかにいられますからね」
そう言いながら笑う司祭様。どうやら顔に出ていたらしい。そしてそれを踏まえて、冗談のように言ってくれたようである。よくできた人だな。俺も見習わないといけない。
教会で出された昼食はとてもおいしかった。カインお兄様に聞いた話だと、学生寮で食べている食事とほぼ変わらないとのことだった。
王立学園の昼食はこんな感じなのか。さすがは高位貴族の子供が通うだけはあるな。そう言えば、王族も通うんだったか。それなら納得だな。
アクセルとイジドルもとてもうれしそうな顔でモリモリと食べていた。
午後からの地下道探索が始まった。昼食もしっかり食べたし、十分な休憩も取った。聖なるしずくの効果はまだまだあるし、何も問題はない。あるとすれば、ちょっと眠たくなってきたということだろうか。
「何もなさそうだな」
「何もなさそうですね」
「こちらも反応はなしだよ」
部長さんのペンデュラムにも反応はないみたいだ。もちろん俺の『探索』スキルにも反応はない。どうやら午前中に見つけた祭壇しか、この地下道にはないようだ。
その祭壇だが、司祭様から受け取ったお札のようなものを使って、アンデット系の魔物が再び現れないように結界を張り巡らせある。
この結界を作る作業には部長さんが夢中になっていた。得がたい体験だったのだろうな。俺はちょっと面倒臭く感じてしまった。魔法で結界を張った方が早い。でもそれをするわけにはいかない。しょうがないね。
「あ、見て! 扉が見えてきたわ」
ミーカお義姉様が指し示した先には確かに扉のようなものが見える。これが王城側からの入り口なのだろう。
こちら側のカギは持っていないので、俺たちが進めるのはここまでである。道中にゾンビはいなかったので、これで地下道は安全になったと言えるだろう。
「よし、引き返そう。俺たちの仕事はこれで終わりだ」
「やはり祭壇は一つだけだったみたいですね。ダニエラお義姉様にもしっかりと話しておかなければいけませんね」
「そうだよなぁ……俺が壁を壊して封印を解いてしまったことも話さないといけないよなぁ」
カインお兄様がどこか遠い目をしている。もしかして話したくないのかな? でも、事の経緯を話さないといけないと思うんだけど。
そんなことを思いつつ、見逃しはないかともう一度確認しながら地上へと戻った。
「お帰りなさいませ。その様子だと、他に異常は見つからなかったようですね」
ホッとした様子で、司祭様が俺たちを迎えてくれた。長時間、こんな場所で待たせてしまって、さぞ退屈だったことだろう。だが司祭様は嫌な顔一つしていなかった。
「反対側の扉の前まで進みましたが、特に異常は見られませんでした」
「ありがとうございます。これならこの地下道も、しばらくの間は問題なく使えることでしょう」
司祭様が深々と頭を下げた。そこからはなんだか申し訳なさが見え隠れしているように思えた。本当は自分たちの力でなんとかしたかったのだろうな。
俺たちのような学生に任せるのは不本意だったのかもしれない。
「祭壇は封印しましたが、定期的に見回りをした方がいいかもしれません。もちろんダニエラお義姉様にも同じ提案をするつもりです」
「なるほど、確かにその通りですな。こちらもその方向で話し合ってみようと思います」
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