第692話 タウンハウスに友達を呼ぶ
学園にある地下道の調査は、今週末の学園が休みの日に行うことになった。それまでは準備期間である。俺はその間に、カインお兄様とミーカお義姉様へ小型蓄音機をプレゼントし、それを無言で見ていたダニエラお義姉様にも同じ物をプレゼントした。
欲しいなら欲しいと言ってくれたらよかったのに。義姉として、義弟に物をねだるのはよくないと思ったのだろうか? そんなの気にしなくていいのに。
「アクセルとイジドルをタウンハウスへ呼びたいと思っているのですが、構いませんか?」
「私は構わないわよ。久しぶりに二人にも会いたいわ」
「構わないぞ。仲良くなっておいた方がいいだろうからね。それに、アクセルは強いんだろう?」
「強さとか、連携とかを確認しておいた方がいいものね」
どうやらアクセルとイジドルを呼んでもよさそうだな。そんなわけで、さっそく二人にタウンハウスへ遊びにこないかと誘った。もちろん、泊まりである。
「俺は構わないぞ。なんだかお世話になってばかりで悪い気もするけど」
「アクセルの言う通りだね。でも、ボクも問題ないよ。ユリウスの魔法が見られるんでしょ?」
「まあ、そうなるのかな?」
ちょっと不安要素はあるが、まあ、なんとかなるだろう。魔法的を壊さない程度に魔法を使えばいいだけなのだから。
二人はさっそく来てくれるようだ。急なお願いだったのにすまないね。
お泊まりセットを持ってきたアクセルとイジドルと合流してタウンハウスへと戻る。いつもよりちょっと早めの帰宅なので、カインお兄様たちはまだ帰ってきていなかった。
ダニエラお義姉様はあとから王家の馬車で帰ってくることになっている。アクセルとイジドルの荷物があったからね。さすがにギュウギュウになってしまう。
タウンハウスに到着した俺たちはさっそく腕試しをすることにした。訓練場でアクセルと打ち合うことはあっても、本気で打ち合うことはなかった。それをやると、色々と言ってきそうな人物がいるからね。団長の息子とかが。
「ようやくユリウスとまともに打ち合うことができるな」
「ユリウス、次は魔法を見せてもらうからね」
「分かってるよ。順番、順番」
どうやら二人が泊まりにくることを決めたのは、このためでもあったようだ。それならキッチリとそれに応えないといけないな。
庭でアクセルと打ち合う。人目を気にしなくてもいいので、気楽に打ち合えるな。もちろん俺が勝ったが、アクセルの剣術の腕前はカインお兄様よりも上だと思う。その事実に、カインお兄様が落ち込まないかちょっと心配である。
「やっぱりユリウスは強いな。団長よりも強いんじゃないか?」
「さすがにそれはないよ」
あるかもしれないが、それは言わないでおく。これ以上、アクセルに追求されないためにも、魔法の的当てをすることにした。次はボクの番だとイジドルが目を輝かせている。
魔法的に向かって、それを壊さないように慎重に魔法を使う。色んな魔法を使っているので、イジドルにも喜んでもらえるはずだ。
「本当にユリウスは多才だよね。こんなにたくさんの種類の魔法を使える人は、そんなにはいないんじゃないかな」
「そうなのか? 俺は魔法があまり得意じゃないから分からないけど」
首をかしげるアクセル。そんなアクセルを見て、イジドルが信じられないものを見るかのような目をしている。
たで食う虫も好き好きだからね。興味がなければ、そんなもんだろう。
「これだけ色んな魔法を使えるのは研究者くらいだと思うよ。ねえ、ボクにも教えてよ」
「もちろん構わないよ。どれにする?」
イジドルが興味のある魔法を教えつつ、アクセルとまた打ち合いつつ、時間が過ぎていった。そのうち、カインお兄様とミーカお義姉様が帰ってきた。
「お、今日は早かったみたいだな」
「お帰りなさい、カインお兄様、ミーカお義姉様。昨日話していたアクセルとイジドルも一緒ですよ」
「お世話になります」
「よろしくお願いします」
あいさつする二人を見て、カインお兄様とミーカお義姉様がほほ笑んでいる。だがその笑顔の裏には色んな思惑が渦巻いているように見えた。
「ユリウスがいつもお世話になっているね。今回の件、よろしく頼むよ」
「よろしくお願いね。アクセルくん、あとで手合わせしない?」
「え? それはもちろん構いませんが……」
「俺も俺も!」
大人気のアクセルだったが、その勢いに少し押され気味であった。その間にお茶の準備をしておこう。ダニエラお義姉様もそろそろ帰ってくるころだろうからね。
そんなわけで、三人が仲良く対戦している間に、俺とイジドルは魔法談義を咲かせていた。
帰ってきたダニエラお義姉様とミラを誘い、ちょっとしたお茶の時間にする。このときばかりは三人も休憩だ。
「強いな、アクセルは」
「ありがとうございます」
「上には上がいるわね……ユリウスちゃんにもっと鍛えてもらわないと」
どうやらお互いに認め合ったようである。途中からは二対一で連携の練習もしていたもんね。危うく俺も巻き込まれるところだった。タイミングよくダニエラお義姉様が帰ってきてくれて助かった。
「準備はしっかりとできているみたいね。うらやましいわ。やっぱり私も一緒に行こうかしら?」
「ダニエラお義姉様にはミラのことをよろしくお願いします。さすがに学園へミラを連れて行くわけにはいきませんからね」
「それもそうね」
学園が休日であるとはいえ、生徒の大半は寮生活をしている。そのため、学園内には多くの生徒がいるはずだ。そんなところへミラが登場したら、絶対に注目を集めることになる。
そうなれば、地下道の調査をすることができなくなる。だれにも内緒で行うことになっているからね。司祭様にもすでに話は通っているみたいだ。
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