ロコノミシリノ②
「ふわ~……んん」
昨夜も遅くなってしまった……眠い。
「ちょっと、あなたから誘ったんだからしっかりしなさいよ」
「ふぁい……」
隣に美少女がいるのに抗いがたい眠気。
「まったく……」
結局、1人では行きづらいところで可愛い女の子連れて歩く、と言ったらテーマパークだろうと言うことで、電車に揺られてる。
朝早くから2時間近く電車に揺られるとなると、流石にね。
彼女は一応非難の声を時折浴びせるけど、基本的にはずっとスマホを操作していた。
ゲームでもやってるのかな。
あとで同じのやりたいから、教えてもらおう。
今は、とにかく眠い……。
目蓋とまぶたが~……ごっつんこ~……くぅ……。
「って、乗換駅過ぎてる!」
「ふえぇあ?」
そんなこんなで何とかテーマパークに着いた。
うん、なんか疲れた。
「さ、乗るわよ」
え、嘘、なんかめっちゃ気合入ってる。
「せっかくなんだし、しっかりネタ集めしなきゃね」
「ネタ?」
お笑い芸人目指してるのかな?
「あ、な、なんでもない」
「ふぅむ」
気になる。
「さ、行くわよ!」
「あ、ちょ、ちょっと~……」
私が付き合ってもらってる体なのに何故か腕を引っ張られる。
まぁ、美少女に引っ張り回されるのも悪くない。
それに、スーハースーハー、良い匂いが鼻を満たしてくれる。
2時間後。
「ちょ、ちょっと休憩しましょうか……」
「はいはい、飲み物買ってくるから座ってなって」
「お言葉に甘えるわ……」
始めの勢いはどこへやら、今はベンチに座ってぐったりしている、こころん。
本当に大丈夫かな、と思うくらいだけど、またスマホを取り出して何かやり始めたから、とりあえず売店に向かう。
少し並んで、戻ると、少し人だかりが出来ていた。
「何事!?」
慌ててベンチまで駆け戻ると、ぐったりして動いていない、こころんがいた。
「こころん?こころん?」
屈んで声を掛けると、身動ぎした。
良かった、生きてる。
「ん……あっ」
目をうっすら開けて、身体を起こす。
「ごめんなさい、ちょっと眠っていたわ……」
「眠ってたって」
顔青白いよ?
「飲み物ありがと」
私の手から飲み物を取ると、ストローに口をつける。
遠巻きに見ていた人たちも大丈夫そうだと判断して、その場を去っていく。
私も横に座って、飲み物を飲むことにした。
「って、なんでちょっと離れるの?」
「は、離れてないわよ」
真ん中あたりに座ってたのに、いつの間にか端に移動していた。
だから、無理やり身体をくっつけるように座ってやろうとした時、
「えっ」
こころんの身体がすごく熱かった。
「ズズー、ズズー……」
こころんは中身が氷だけになったのをまだ吸おうとしている。
「私のもあげるから、それ飲んだら帰るよ」
「あら、そんなに怖い顔してどうしたの?」
「む~~…………!」
なんで、そんな熱あるのに減らず口なのか。
「冗談よ。ごめんなさい。迎えも呼んだし、そうさせてもらうわ」
だけどそう言って、すぐに視線を反らしてしまった。
こういう時は素直なんだ。
心配する半面、新しいこころんが見れて嬉しくもあった。
そして、遊園地を出ると、1台の車が待ち受けていた。
「ちょうど良いタイミングだったね。良かったよ、こころ」
「ごめんなさい、兄さん。手間を取らせて」
「可愛い妹のためならなんてことはないさ」
「気持ち悪い……」
そう言うと、後部ドアを開けて乗り込むこころ。
「はっはっは……」
お兄さんはこちらに目を向けて、恥ずかしそうに苦笑いをこぼす。
あら、美男美女兄妹、羨ましい。
ふむぅ、これは私は1人電車で帰るパティーンかな。
さみしぃ~~~~くなんか……ないわけないよ!寂しいに決まってるさ!
そんな思考を繰り広げながら、傍から見たらボケーっとしていると、
「お友達かい?君も乗ると良いよ。送るから」
「当たり前じゃない。ちゃんと送りなさいよ、兄さん。ほら、遠慮しなくて良いわよ」
ちゃんとお声をかけてもらえました。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」
誰かの車に乗るのとか久々だな~。
こころんが奥に移動して空いた座席に座る。
おっほぉ~、ふっかふか!
なんだ、この座席!
「飛び跳ねない」
「……はい」
怒られてしまった。
「はは、面白い友達だね、こころ。えっとお名前は?」
お兄さんも乗り込んでシートベルトを着けてエンジンをかける。
「あ、神林璃乃って言います」
「神林璃乃さんね」
ミラーから見るお兄さん、うん、良い……!
「はい!皆からはよく――」
「五月蝿いわよ、神林」
「えー……」
良い雰囲気にしようとしたら、隣からいきなりぶった切られた。
「ははは、ごめんね、神林ちゃん、こいつこんな性格で」
あ~~~~……神林ちゃん……。
「い、いえ。大丈夫です」
せっかく、りのっちって呼んでもらおうと思ったのに……!
隣を恨みがましく睨んでみる。
流れるように過ぎる窓の外を見て、どこ吹く風だった。
こっち見ろよ、ムキー!
その後は、私とお兄さんとの会話に口を挟まれることなく、車は地元の方へ近づいていった。
ふむぅ、一体何がしたかったのかな。
とりあえず、お兄さんからの呼ばれ方は神林ちゃんで定着してしまったけどね……。
まぁ、ちゃん付けだから良しとしよう。
「あ、ここで良いです」
家の近くの通りまで来たので、お兄さんにそう告げる。
「ここで良いの?家の前まで送るよ?」
ハザードランプを付けて減速しながらも、そう提案してくれた。
「いや、流石に悪いんで……お心遣いありがとうございます」
バッグミラー越しに頭をペコっと下げる。
車が停まって、ドアが開けられるか確認して外に出る。
「また良かったら、こころと遊んでね」
「はい!喜んで!」
どこぞの居酒屋みたいに元気良く答える。
そして、また感謝を述べて、反対側に回って、窓の外を見たままのこころんにも挨拶しようとしたら、眠り姫がいた。
大人しいと思ったらそういう事だったのね。
遊園地でも思ったけど、寝てると本当にお人形さんみたい。
ハフゥ〜、いくらでも眺めてられる。
さっきはそれどころじゃなかったしね。
いくらか顔色も戻ってる。
「良かった良かった」
名残惜しみながらそっと離れると、お兄さんはまた車を走らせた。
クラクションの代わりに、窓から右手を出してヒラヒラと振ってくれた。
去り際もカッコいい!
私は見えなくなるまで見送った。
そして、車のナンバーもスマホにメモしておいた。
ほ、ほら、街中で見かけたりとかあるかもじゃん!
私、これでも肉食系女子なんですよ、がおー。
勝手にスキップになる足をそのままにまだ太陽が高いところにある帰り道を辿る。
なんやかんやで今日は良い日だったね。
まだ終わってないけど。
「フヒヒ」
2人で撮った写真を見返して、顔がニヤけた。
リア充じゃん、私。
「ママー、あのお姉ちゃんの笑い方怖い~」
「しっ、見ちゃダメよ」
親子とのすれ違いざまにそんなこと言われた、若干傷ついた……。
けど、聞かなかったことにしよう……!
今度、藍澤さんに今日のことノロケよっと。
「ただいまー」
靴を脱いで上がろうとしたら、母さんの声がした。
「あら、早かったのね」
「ちょっとねー」
手を洗いに行きがてら、軽く答えると、それ以上は追求してこなかった。
それで納得するのねー。
まぁ、追求されてもどう答えて良いかわかんないんだけどね。
「あんた、普通なら1聞いたら10は返ってくるから」
「あれ、心の声漏れてる!?」
「ふぅ~」
部屋着に着替えた体をベッドに背中から倒れ込ませる。
「こころん大丈夫かな~……」
あの突然の熱の上がり方って、何だったんだろう、具合悪かったのかな……もしかして、病気……。
「ふむぅ……」
結局はいくら考えても想像でしかなくて、答えが出せるほど頭なんて良くない。
どうせ、頭悪いですよー。
「よし、うだうだタイム終わりっと」
ベッドから跳ね起きて、PCの電源を入れる。
さてと、時間できたし、ご依頼のものを描きますかね~。
通っているゲーセンの店長さんからたまにイラストを頼まれる。
ちょっとしたお小遣い稼ぎというか、そんな感じ。
帰宅部だしね。
「と言っても、お世辞にも自分じゃそんなに上手いとは思わないけどね~」
画像投稿サイトとかつぶやき見ると、うへぇ~、すごーいって思ってばっかりだもん。
私なんか、しがない街のゲーセンのPOPとかUFOキャッチャーの手本とかそんなレベルで十分さ。
といことで、あと少しで完成のイラストを仕上げていく。
あ、そうだ!こころんが詰まってたやつのガイドでも作るかな。
と言っても、あれ、本当に簡単なはずなんだけどな〜。
「ふむぅ……ま、狙い目とか描いとけばいっかな〜……」
椅子の上に胡座をかいて椅子を回す。
グルグル〜。
グルグル〜。
はい、酔う前にやめまーす。
構図なんかをパパっと描いて描き起こす。
「ま、こんなとこかな」
いるのかいらないのかよく分からないくらいの当たり前の狙い所しか描かれてない。
持っていくだけ持っていくか。
印刷とラミネートはゲーセンでやる。
プリンターとか高いしインク代高いし我が家には無いのであーる。
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