ただの人間の俺が悪魔の王子様に娶られ調教され気づいたらなんかガチ恋して結婚してた

十鳥ゆげ

第一部:馴れ初め

第1話

 昔々とある世界で——

 いや、昔でもねーし世界はひとつだ。

 現在、世界は生物はそれぞれの種族別に独立した国を持って暮らしている。

 エルフの国、ドワーフの国、妖怪の国、等々。


 しかし、一国だけ例外がある。


 海と山、盆地や平野などを擁する、自然豊かな『ウォルズ王国』である。


 ウォルズ王国は『種族の坩堝るつぼ』と呼ばれている。

 多種多様、古今東西これまでかというほどの数の種族が揃っているが、みな極めてフレンドリーでピースフルに、平和に生活しているのだ。


 なぜか?


 それは、ウォルズの大地が『波動』というものを発しており、これが生命的な琴線に触れた者は、もうウォルズから離れられないほどウォルズLOVEになってしまうのだ。

 オラ自分の国に戻りたくねぇだ、オラあんな国いやだ〜ウォルズさ行くだ〜といった具合に移住してくる。そして、ウォルズを守るため争いを起こさないのだ。いい話だろ?


 さて、本題に入ろう。

 つい先ほど『ピースフル』と思わず口走ってしまったが、差別というものはどこにせも発生するものであって、クリーチャーにも『ランク』が存在する。


 今、王都ラリーハリー近くの森の奥、名もない農村で長身の吸血鬼が畑仕事をしている。周囲には赤鬼やゴーレム、堕天使などの姿も見える。


 この吸血鬼、名はセイジュ。


 


 ウォルズ王国のクリーチャーで最下層に位置するのが『人間』である。

 もちろん大抵のクリーチャーは無害だが、印象は悪いし、タチの悪いのに当たると怪我をすることもある。


 よってセイジュ少年は、吸血鬼コスをして生活しているのである。


 この物語は、人間・セイジュが、その優しさ故に発生した人生の大波乱を描くものだ。よかったらお付き合い願いたい。



 余談だが、なぜウォルズ王国において『人間』が最下層クリーチャーかというと、


 1.なんか弱い

 2.すぐ死ぬ

 3.突出した特殊能力がない

 4.見た目が地味


 くっだらねっ!! 特に4! ウォルズの国民アホなんじゃね?!

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