終末のアポカリプス〜ラグナロクと目次録と終焉と〜
@HOREIZAI
第1話 プロローグ
貴方は今日、死にました。
一生に一度でも、真面目な意味でのこんな言葉を受けることがあるだろうか。
「貴方は今日、死にました」と。
予言ではない。
既成事実としてだ。
精神的に死んでしまったものは言われる機会があるかもしれない。
あるいは、社会的に死んでしまったものも言われる機会があるかも知れない。
だが、それらは比喩だ。
今言っているのは「肉体的な」死。
確率はほとんどと言って良いほど、ゼロ。
ありえない。
生死の法則が逆転しても、いや、それでも可能性は限りなくゼロに近い。
確かにイエス=キリストのような聖人なら奇跡的な蘇生をして、それを可能にするかも知れない。
しかし、そんな聖人など、この世界には一握りだ。
ましてや俺は聖人でもなんでもない。
ただの男子高校生だった。
しかし何故か俺は今、見渡す限り闇の空間にいる。
そして脳内にはこんな声が反響している。
「貴方は今日、死にました」と………
##########
俺――
朝、遅刻ギリギリを狙って学校へ行き、帰りは近くのアイス屋に寄り道して帰る。
家に帰ってからは宿題を十分でやって、後はずっとゲームをしている。
外には出ない。
こう書くと引きこもり一歩手前だが、少なくとも俺はそうではないと信じている。
理由は単純明快。
俺のコニュニケーション能力が限りなくゼロに近いのだ。
それこそまさに、数学でいうところのeとかいう記号で表せるほどに。
「あーーー! アイス屋閉まってんじゃん! 今日はマラソンで疲れた自分へのご褒美に四百二十円のメロン味のアイス食べるの楽しみにしてたのに―――!!」
或る秋の日。
俺は絶叫した。
その日はマラソンで疲れた自分へのご褒美にちょっとお高いアイスを食べるのを楽しみにしていた日だった。
だが事もあろうにアイス屋が閉まってやがったのだ。
ああ、なんというであろう。
俺の一ヶ月に一回の贅沢が………。
だからといって、別の日ではダメなのだ。
学校で凄い疲れた後――それも一ヶ月の中で一番疲れた日ではないとそれは俺の美学に反する。
俺の美学ではマラソン&アイスは徹夜&夜食カップラーメンの次に崇高な存在なのである。
それを怠るとは笑止千万。
そんなもの僕は許さない。
と、いうことで――
「うう……ワンランク下がるけど今日はコンビニアイスで我慢するか……?」
なんだかそれっぽい妥協策を自分で考え、一人納得する俺。
そして、気を取り直して回れ右――
「は………?」
した先にはバスが迫っていた。
「え……? どういう状態?」
あまりのことに情報整理が追いつかない。
「えーー、バスが、バスがぁ……」
ブロロロロロロロ。
そしてバスは迫る。
「迫ってきてぇ……」
ブロロロロロロロ。
そんな俺の動揺を無視し、さらにバスは迫る。
「あれ、もしかしてこれ、やばい?」
ブロロロロロロ。
そしてバスが目前に迫った時。
「と、とりあえず!避けっ!」
遅かった。
瞬間、なにかが飛ばされるような音と、続いてそれが何かに叩きつけられる音が響いた。
「あ、熱い」
熱い。
右半身が熱い。
とにかく熱い。
熱すぎる。
熱い。
熱い。
なにもわからない。
わかるのは、右半身が焼けるように熱いこと。
それ以外はわからない。
「あああああああ!!」
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。
錯乱する。
そんな僕の前で横転したバスは――
コンコンコンコンコン……!
そのガスボンベが不気味な音を立てる。
(おいおい、まさかとは思うが――!?)
やっと思考が追いついてきた。
右半身を強く痛めたことも、今、かなり危機的状態であることも。
そして――
(流石にそれが爆発するとかはねえよな?)
目の前のガスボンベが破裂寸前ということだった。
「に、逃げ、逃げないと」
幸いまだ俺には意識はある。
急いで手当てして貰えば命だけは助かるだろう。
まだ死にたくない。
その一心で、俺は移動した。
――喉が渇いた。
水が欲しい。
血を出しすぎて体内の水分が不足している。
しかし、それでも俺は進んだ。
必ず助かると信じて。
それだけを頼りに進んだ。
だが、その意味はなかった。
何故なら――
コンコンコンコンコン、ドッガァァァァン!!
そんな俺の努力を嘲笑うかのように、遂にガスボンベが大爆発を起こしやがった。
そして俺は確実にあの世への片道切符を手に急行あの世行き列車に乗り込んだはずだった。
その筈だったのに。
その後、気付くと、ここに、いた。
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