元勇者、極東の島国へ目指して

いちのさつき

秋頃のヒューロ王国 

第1話 王の依頼を引き受ける

 俺はエリアル・アンバー。 ヒューロ王国にある小さい村の出身だ。


 ヒューロ王国はグスター大陸の近くにある小さい島国でな。人間以外に耳先が尖ってるエルフ、動物の耳と尻尾を持つ獣人族、額とか頭とかに角を生やしてる鬼族が住んでる。


 特産は叫ぶ人参のマンドラゴラって奴。とにかくうるっさい人参で、薬に使われている。


 小さい村で生まれ育って、目立たない農民のはずだった。小さいきっかけは10歳になって聖樹っていう大きい木で精霊の加護を貰う習わし。フツーは1つの属性で火・風・土・水の中から。多くて2つ。 俺は全部の属性に光と闇っていう前代未聞の精霊の加護も受けた。誰だって白目向くって。俺もありえねえって思ってたしな。


 噂があっという間に広がって。王族が村に来て。騎士団の入団の誘いが来た。その時は断った。 父さんと母さんの手伝いとかやることあったしな。入団の誘いの理由、子供だったから分からなかったな。たかが精霊の加護って感じだったし。


 いつから大きく変わったって言うと。俺が14歳になった時か。空は真っ黒の雲ばかりになった。雷雨だ。やっべえ。作業中だったのにって思ってたらフード被った真っ黒い大鎌を持った奴が村に襲ってきた。 必死に農具で戦ってどうにか倒した。その後、王子が村に来て話を聞いた。


「あれは周辺国から報告例がない。早めに元凶を倒さないと周辺にも影響が出る。死者が大量に出るだけではない。世界の国家が全滅するかもしれない。だから俺達に力を貸してほしい」


 って言われたらやるしかねえじゃん?


 村を守りたかったし。だから俺は王子と一緒に戦って元凶を倒した。 世界を救ったって言われてっけど、仲間がいなければ出来なかったことだし。あと誘われたからってのもあるからな。 だから勇者って言われるとちょっと複雑だな。全て終わった後は王国騎士団の指導者として働いてる。


 何で自分語りしてるんだろうな。まあいいや。いつも通り、朝の鍛錬し終えてから指導の書類を纏める。


「エリアル様。国王陛下がお呼びです」


 部下のブレイドから急用の伝えがあるのはいつも通り、なんだけど彼奴じゃない国王陛下から呼び出し?


「分かった。すぐに向かうとしよう」


 俺はただの騎士。彼奴は国を纏める王。立場が違うからあまり話す機会なんざなかったんだけどな。仕事中にプライベートなんて話す性格じゃねえし。まあ話聞けば分かるか。


「エリアル。サボりね」


 げ。何で俺の馴染みと出くわすんだ。名前はアズマ。ヒューロ王国じゃ珍しいよな。髪が黒いって。目は緑色。これ以上言ったら精霊が殺しにかかるだろうから言わねえ。何でだ?だってこの間の酒場で同僚のアホが燃やされて真っ黒に焦げてたのを見てるからだ。


「サボりじゃねえよ!あいつから呼ばれたんだ」


 色々と誤解招くと面倒だからな。アズマの奴、俺をおもちゃみたいに扱うとこあるし。


「国王陛下から? たかが普通の騎士が呼ばれるって絶対危ない案件でしょ」

「そういうお前もいつもの調査だろ。まああり得る」


 昔はともかく今はよっぽど国際情勢って奴が悪化しない限り国王に呼び出しされねえんだけど。いや待て。国の関係が悪化して戦争直行? いやそれなら騎士団長が先じゃねえか。


「戦争はないよ。今の情勢は安定してるって話」


 此奴、たまーに俺の心読んで言ってねえか? 気のせいだよな?


「じゃあ猶更なんでだ?」


 あ。彼奴の眼鏡の縁、上にあげやがった。こういう時は彼奴も分からねえっていう仕草なんだよな。取り合えず。


「話を聞くしかねえだろうな」

「そうね」


 そんなわけで宮殿の王座の間に着くまで、最近流行りの服職人について話したってわけ。


「エリアル・ヒューロ。アンズ・アズマ。国王陛下に呼ばれて参りました」

「どうぞ中へ」


 見張り番に入る許可貰って入る。やっぱ玉座に座ってんな。エドモンド・リ・ヒューロ。昔の俺の仲間で、たまに城下町の酒場で呑む友人。


「忙しいのにすまないな」


 太っていると思う。昔はそんなことなかったのにな。顔立ちが整ってるとか性格が良い(実際良いけど)からとかで女の子からモテモテだったんだぜ? 今と昔の姿見比べると、信じられねえことだけど。


「書類終わってるから問題ありません。でも何故一般の騎士の立場であるはずの俺が呼ばれるのですか? 騎士団長が来るとこだと思いますが?」


 取り合えず分からないとこ言っておく。友人と言っても、王だからな。敬語を使う。


「そこら辺は後でだ。先にアズマ」

「はい」

「フロイア自治領から救援要請が来た。流行り病で手が足りてないから何人か来てくれと」


 フロイア自治領ってエルフの魔術師が統治するとこだよな。こっからだと5日かかるし、魔獣がいるし、行くのに危険なんだよ。それはこの王国民なら当たり前に知っていることだ。だから彼奴も納得いってるみたいだけど。俺も納得いった。護衛任務って奴だな。


「フロイアですか。なるほど。だからこの馬鹿を護衛にするんですね。納得がいきましたよ」


 待てアンズ。俺のことを馬鹿って言うな。確かにさ。学があるわけじゃねえけど。


「察しがいいね。その通りだよ。4か5人いると助かるはずだから、選抜は君に任せるよ」

「分かりました。決定次第、文を送ります」

「エリアル。アズマたちを頼んだ」

「はい」


 国王直々の依頼でフロイア自治領に行くことになった。戦いが終わってから行ってねえな。どうなってんだろう。

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