第7話 仕事後の夕食

 モンスターの討伐依頼を遂行して、その後の訓練も終わった。


 キャッキャウフフと楽しそうにしている女性メンバーを引き連れて、街に到着するまでは気を引き締めるよう注意しながら、戦乙女クランの拠点に戻ってきた。


「おかえりなさいませ、ギル様」

「ただいま。今日の依頼は、無事に完了したよ。それから訓練のために、依頼以外に何十体かモンスターを狩っておいた。討伐証明は、ここに」

「ご苦労さまです。受け取ります」


 拠点で出迎えてくれたクラシスに今回の成果報告をする。彼女が後でまとめてから冒険者ギルドに報告してくれるので、非常に助かる。


 その後、拠点の会議室で任務に同行したクランメンバーとの反省会をする。


 今回は、皆が素直に戦闘指示を聞いてくれたので特に問題は無かった。帰り道だけ気を抜かないようにすること。後は、反省するような点は見当たらない。


 良かった点を重点的に、同行したメンバーたちを褒めておく。


「やった! ギルさんに褒めてもらえた」

「良かったね皆」

「私、仲間に自慢しちゃうもんね」

「……」


 喜び合うメンバー、そんな中に1名だけ何か待ち構えている者が居たので彼女には個別でアドバイスをしておく。


「エレーナ、君はクランの中でも一番に近い筋力の持ち主のようだし、大斧の扱いも慣れていて良かった。今後は、どんどんと前線に出て戦うことになるだろうから少し自己主張を強く、積極的に戦いに参加していければ更に良くなると思う。もちろん、今日のサポートも十分に良かった。切り替えを上手く出来るようにね」

「うん……!」


 今回の依頼に同行したメンバーの中では飛び抜けて戦闘能力の高かったエレーナ。これから先、成長したら戦乙女クランの主力メンバーに成り得る人材だと感じているので、彼女に向けた特別なアドバイスをしておいた。


 僕の言葉を頷きながら、口元は嬉しそうにして熱心に話を聞いてくれるエレーナ。これから、どんどん頑張ってほしいと思う。


「良かったね、エレーナ! ギルさんに目を掛けてもらってるよ」

「流石だ。仲間として誇らしいよ」

「頑張ってね、応援してる」

「……ありがとう、みんな」


 エレーナが女子たちに褒め称えられていた。どうやら仲間にも慕われているようで良かった。


「じゃあ、今日は解散。疲れを残さないように、ちゃんと休んでね」

「「「「はい!」」」」


 こうして依頼の後処理が終わり、ようやく今日の仕事が全て完了となる。




 仕事が終わって、まず僕は食事をする。戦乙女クラン拠点の中には食堂があって、いつでも美味しい料理が用意されている。それを食べるのが楽しみで、夕食をとると1日が無事に終わったと感じる瞬間であった。


「こんばんわ、ソニアさん。今日の晩ごはんは?」

「お疲れ様ね、ギルちゃん。今日は羊肉をローストしたステーキに、サラダ。それとオニオンスープね」

「わぁ、お肉か。いいね。今日も豪華だね」

「すぐに持ってきてやるから、待ってなさい」

「うん。お願い」


 夕食を配膳してくれたのはソニアという名の、戦乙女クランで料理番を務めている人物だった。


 彼女は、食材の管理をして戦乙女クランの活動を支えてくれている女性である。


 まだ30代ぐらいの若い女性なのだが、食堂で働く女性スタッフをまとめている。戦乙女クランのメンバーが口にする毎日の食事を用意してくれる、裏方として非常に活躍してくれている人だった。


 戦乙女クランは彼女無しでは成り立たないだろう、と言われるほどの重要人物だ。冒険者にとって、毎日の食事というのは非常に大事だから。


 メンバーの皆からソニアは、お母さん的な存在として親しまれている。


 夕食の準備をお願いして、食堂に用意されているいつも座っている席につく。僕の目の前には、上流階級がとるような豪華な食事が運ばれてきた。


 お肉に、新鮮な野菜に、温かいスープ。


 一般家庭だと麦を粥状にしたオートミールと呼ばれている食べ物が主食で、お肉を食べるのは特別なイベントの時ぐらい。


 少なくとも並の冒険者では食べられるようなものではないメニューが、この戦乙女クランでは毎日のように用意されていているので、クランメンバーたち皆が美味しい料理を食べることが出来ていた。


 というのも冒険者として活躍するためにはしっかりとした物を食べないとダメだ、というような考えを持っているクランマスターの方針に従い、戦乙女クランの食堂で提供される料理は用意されていた。


 多くの賛同者を得て、拠点で用意される毎日の食事にクランの運用費がふんだんに分配されるぐらい重要視されていた。そして実際に用意されているのが、美味しくて豪華な食事。


 食材はソニアが中心になって、こだわりと手間をかけて各地で調達してきたという厳選した物を使っているらしい。更に、彼女が長年に渡って磨いてきた技術を存分に活かして調理された料理。マズイわけがない。


「ほら、小さいんだから残さず食べるように。野菜も食べなさいね」

「あ、はい。美味しく頂いてます」


 面倒見もいい人で、身体が小さい僕をいつも気遣ってくれていた。


 毎日、沢山食べるように嫌味もなく言ってくれる。もう僕の成長期は過ぎていて、これ以上に身長が伸びるのかどうか定かではないが、とりあえず言われた通り残さず食べる。もっと背が伸びれば良いな、と思いながら。


 食堂で料理を食べ終わったら後は、拠点の中にある自室に戻って休むだけ。こんな感じで、僕の戦乙女クランでの1日が終わる。

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