初恋

中筒ユリナ

第1話 初めてのドキドキ

それは、いきなりやって来た。


学校の授業の一部として、体育館で学年が集合していた。男女一列に並び、三角座り、又は体育座りとも言う、そんな座り方をし、前を向いていた。周りは男女入り混じり小さな声でコソコソと話し声が聞こえてくる。そんな声にも耳を傾けずただ、前を向いていた女の子。


おかっぱ頭で、おとなしい。いや、暗いとも見られかねない。そんな雰囲気漂う、名はリコ。


この娘にいきなりひとりの男子が話かけてくる。


「陽が好きなんだって。」


自分に話かけられた事すら認識できず、何の事を言われたのかも理解出来ず。ただ、解ったのは、このリコに話かけてきた田中の周辺の男女がからかうように笑っている。


田中はもう一度リコに言った。


「陽くんが、リコさんを好きなんだって。」


次はリコでも、どういう意味かよくわかった。。。思わずその陽をチラリと見る。しかも恐る恐るに。。。


陽は黙ったままだった。。。


リコは硬直し、静かなパニックを起こしていた。


「リコちゃん、モテるね!」


と言う声が、背中から聞こえる。


リコ(な、なんなわけ?、、、何が起こっているわけ?、、、)


かなりの緊張感がリコを襲いドキドキと心臓の音が聞こえそうだ。


リコ(じ、冗談!、、からかわないで欲しい、、、私男子、嫌なのよ!)


そうなのだ。リコは異性が大の苦手だった。嫌いと言うより、恐怖すらあったのだ。同じ人間で、生きものなのに、全くの異性体、危険物にすら見えていたのだ。


この田中が言っていた陽。。。


彼は、「伊集院 陽」という。彼が、リコに好意を抱くのは本当の事だった。


リコは小学生の頃から、朝の通学は、家の周辺の子供達、学年も低学年から高学年まで並び、学校までの距離を歩いていた。学校までは、以外にも距離があり、子供の足でも40分位歩く。

人数も少人数であり、4人位で一列に並びながら、歩いていた。


高学年になると自動的にリコは班長となり、連れて行ってもらう身から、自分が連れて行く側になった。その通学の途中にその陽がいる班とかち合い、その列の後ろに付いて歩く事が多かったのだ。


だだ、リコと陽は、話すことも無く、朝の「おはよう。」これすらも無い。

ただ、淡々とリコ達が後ろから付いて来るだけという、変な感じのものだった。


そんな時にリコが連れて行っていた低学年の子供が通学途中に具合が悪くなり、リコは途中の信号の旗おばさんに相談し、その子の家に公衆電話から連絡をする。すぐにその子の母親がくる事になるが、その間リコは具合が悪い子のお世話をしていた。


その様子をじっと見ていたのが、陽だったのだ。当時からリコの容姿も、さることながら、優しい姿が何より彼の心を捕らえていた。もちろん、リコは全くそのような事、気づきもしない。


そんな小学生だったリコは中学に上がり今度は自転車での通学となる。しかも、小学6年間一度も同じクラスになった事がない陽と、同じクラスになっていた。。。


だからどうだと?。。


リコは何にも気にも止めなかった。そればかりか、この中学に上がった位からやたらと、男子には異様な位の拒絶反応だった。ただ、嫌。。ではなく、「恐い」と言う恐怖感すらあった。


女子の友達は直ぐに出来たものの、男子には近づこうとすら、しなかった。


だが、クラスの男子の顔と名前位は覚えるリコだった。それは、まるで、誰が1番危険物か、その品定めするかのようだった。


そんなリコにいきなりやって来た、遠回しの告白。。。


なんとも。。。どうしようもなく何も言い返す事も出来ないリコだった。。。


さぁ、リコ!恐怖におののいている場合ではないぞ!


席替えなのだ。。。


リコにとっては、嫌な時間だった。普通ならば、(好きな男子の隣がいいなぁ。)位の事、思ってもよかろうに、、

なぜか、リコは(あぁ、、、やっと隣、近所の男女の雰囲気に慣れてきたのに、、、またぁ。。。嫌だなぁ。。)

とまぁ、毎回こんな感じだった。


そして、指定された場所へ移動する。荷物を持ち、片付けていると、


隣にいきなりやって来た男子。


「俺、ここだって。」


陽ではなく、田中だった。


この時の「俺、ここだって。」の一言を大人になったリコはいつまでも忘れない。


なぜなら、彼がリコの初恋の相手になるのだから。。。


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