第19話 夢の終わり/始まり

 

 三日目からの日々は、あっという間に過ぎていった。

 まるで時の流れが、ある目的の地点へ向かって加速しているように、彼女たちの夏は駆け足で過ぎていった。


 調査。報告。調査。報告……。


 そんな繰り返しが毎日の日課になり始めたあの日。

 少女たちの非日常は、唐突に終わりを迎えた。


 ——いや、始まりを迎えたのだった。


 ***


 五人の少女たちがこの世界で目を覚ましてから、今日で七日目。

 その間、徐々にではあるが、彼女たちはこの世界の法則を理解し始めていた。



 まず、この明らかに人の気配を感じない違和感についてだが、これまでの調査で彼女たちは『私たち以外、人間は存在しない』という結論に至った。


 電車での移動が失敗に終わったことで、彼女たちは自転車や徒歩で行ける範囲の調査を地道に行い、足の届かない範囲については、ましろと茜音が公共電波を使っての呼びかけを試みた。

 放送は上手くいったものの、いくら待っても外からの反応はなく、結果、この世界に存在するのは『ここにいる五名の女子大生だけ』という非情な結論を下したのだった。


 他にも、いくつか判明した事実がある。


 一つは、電力や水道が絶えず供給されているということ。

 もう一つは、生活に必要な物資や食料が午前零時を境に、未知の方法で陳列され直されているということだ。


 まるで、彼女たちにだけ見えない何者かが存在し、密かに彼女たちの生活を支援しているような、そんな不気味な優しさが感じ取れる現象。


 しかし、そんな未知の現象のおかげで、彼女たちの衣食住はそれなりに満たされる結果となった。

『代金は支払うべきか』という道徳的問題も直面したこともあったが、「後で何か言われたら払えばいいでしょ。……まぁ、何か言ってくるやつがここにいるかは知らないけど」という咲希の一声によって、実質半永久的な後払いを採用することとなった。


 不本意ではあるが、この生活も慣れてしまえば案外悪くないのかもしれないと、誰もが思い始めていた。



 ——しかし、そんな考えは、一人の少女のある〝気づき〟によって儚く霧散することとなる。

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