第4話―すばやいボドゲ―

窓からの閃々せんせんに光る桜わずか。


(好きでもない桜なのに眺めていると、

あの夢に頃ままの千代との出逢いを

美しい光景をブルーレイレコーダーに入れたディスクのように再生みたいによみがえってくる。

桜が終わろうとしているからか、ふっと懐古心を刺激されている)


それは夢想のしずき。

けど、どのようであっても懐かしんでいるのは穏やかに揺れていることには事実なはず。

こうしたきっかけがあって千代といる事が出来る。

きっと逆に千代も俺という存在に大きく人生を左右されている。

まるで運命の相手じゃないか…それは以前よりも強くそう思えてならない。

高校生にもなって、とんでもない夢想家だと俺は自分に自分を苦笑する。

だからこそ俺という人格を形成したのは星のようにある影響の一つに千代は大きい。

缶コーヒーに転んで泣いていた千代を今でも困っていると本能的に助けようと動く。

その習慣化みたいなのか身についてから損得など思考する前に助けようと

手を伸ばすのがクセになった。

そんなことで俺の客観的な人格形成はその日も発揮してしまう。

教室内では早い段階から浮いていた毛利弘元を探していた。


(あんな猛獣もうじゅうのようで鬼気迫る顔をしている一方で魂が抜けたように顔が憔悴しょうすいしきている。

分からないなぁ…明るく馴れ馴れしく接しているけど)


この男にはボロボロになりなからも手に武器を落とさず挑み続けようとする時代劇でいうと新選組のような

さわやかで苛烈な生き様を垣間見えるところがある。

それから放課後になると毛利弘元は塾でもあるのか一目散と出ていった。

どこへ行くのか気にはしたけど尾行するのは迷惑になるので諦める。

自席の前に絵に描いたような美少女が回り込んできた。


「それじゃあ授業が終わったことだし、センガク行かない?

その、ボドゲに」


ボドゲとはボードゲームの略称。


「はは、本当ボドゲ好きなんだな」


「い、嫌だった。もしかして…」


「そんなネガティブな発言するなよ。

正直に告白すると俺はボドゲ好きじゃない。けど千代とボドゲするのは

……楽しいんだから、いい加減そこを理解してもらわないと」


ここでストレートに好きと言おうとしたが妙に恥ずかしくなって楽しいと

表現を変えた。


「…そうなんだね。

うん、ありがとうね!センガク次からは認識しておくから。

改めて誘うよ。今日もワタシと付き合ってほしいなぁ」


「よろこんで。付き合うとも」


差し出した手を俺はそっと手を置く。

こんな気障きざなセリフして羞恥心が込み上げるものがあるけど千代の満面な笑顔を見て正解だったかと

不思議と後悔はなかった。

鼻歌とスキップの上機嫌な千代と手を繋いでいると校門で声が聞こえる。


「み、見ろよ。才媛さいえんで名高い加賀さんがあんな男に舞い上がるなんて…オレは地獄をみているのか」


「ね、ねぇ。あそこまで男の子に好きなの分かりみ。もう勇者なんだけど」


(男子から崇拝に近い対象に見ていて、女子からは見ていて恥ずかしくなる千代の振る舞いに驚いている)


ただ観客のように傍観しているだけなので気にしないで後にする。

日本の都市とも呼べる尾道(少なくとも俺の中ではそう)には新しくボドゲカフェが開店している。


(ここ変にオシャレなんだよな)


そもそもボドゲのカフェなどの店内には収集家の色が濃いのだが千代に勧められた店内は静かな装飾してあり

音楽はベートーヴェンの[田園でんえん]が流れており観葉植物も置かれており家具アンティーク風となっている。

ここまで行くと店を間違えたのかなと最初に入店をした頃は思ってしまい引き返そうと思ったが当時の千代は、

ここだよと言った。

ともあれ今日はボドゲで千代に楽しませたうえで勝ってやる。

数時間が経過して俺は向かいに座っている千代の右に置かれている皿の上は納豆をこだわった料理の数々それに、ドリンクかぶせ茶(緑茶の一種)。


「…なんかすごい和食感がある」


「無形世界遺産に登録している和食料理は無敵だからね。

今日はストレス発散ということで自分のご褒美に。ねぇ」


「普通その自分ご褒美っていうのは

スイーツとか肉なんかの健康気にするかとかの暴飲暴食なイメージなんだけど。でも…今更すぎるか」


「本当に今さらだよ」


ここまでこだわりを持つのは語る必要がないだろう。

千代の病的なまで好物がその納豆と緑茶になる。ちなみに甘い物は、あまり得意ではないのこと。

数々の武勇伝があり尾道にある時間内に完食すれば

無料という気前のいい飲食店を潰してきた千代。まぁ今のは比喩で実際には赤字がひどくて廃止となっただけであり現在もその飲食店は経営してある。

案の定と言うべきか千代はお金がないとすがりついて貸してと涙目になって頼んできた。

少しはその、頭脳で計算をしろよと思いながらも俺は財布を出して数枚を千代に渡すのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る