暁の夜叉

@karasumaruxx

第1話

細部が不鮮明な空間である女を見た。

あらゆる光を吸い込むような黒のドレスに灼熱のごとく紅い髪、そして蒼い瞳。

何も言わぬが目の前のとある一点を憎々しげに睨む。

あぁ、これは俺を殺すのだとそう思った。

そんなところで目が覚める。意識が覚醒する。体を起こす。ついさっきまで体を預けていた布団と着ている服には嫌な汗が染み込んでいた。枕元に置いてあるスマートフォンは11:25を知らせている。肺の底から深く息を吐き出す。いつかに頭に書き記した予定表をそのまま反芻させる。「だいがく…」と言葉を口にしてたった3日前に俺は社会的地位が地に落ちたことを思い出したのである。記憶していた予定表は未だ大学生気分が抜けていないらしい。ベッドに再度、体を寝かすが湿るシーツに不快を覚え本格的に生活を開始することを決めた。


朝…というか昼飯を口に運びつつスマホを眺める。メッセージアプリには恨みの、怨みのこもったメッセージで溢れている。

まぁ、致し方あるまい。なんせ…なんせ…。

と、そこで電子コールによって意識が現実に引き戻される。教務課からの連絡。内容は退学手続きのため一度、教務課まで足を運ぶようにとのことであった。

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