<短編8> おとなへの階段
小学五年生に上がった三郎くん。
やんちゃで悪ふざけが過ぎて、しょっちゅう学校のガラスを割っちゃっていたんだ。
悪気は無いんだけれど、気が付いたらガラス窓やドアに体当たりしていて割れちゃう。
ガラスを割る度に、クラスのみんなの前で先生に殴られる三郎くん。
「またアイツやっちゃったよー」
「ほんと!元気だね!」
「また叱られてるぜー?」
クラスの子たちの様々な反応の中に、違う色の視線がある。
「何故彼は、こうも自由なんだろう?羨ましい」
いつしか、三郎くんを見つめる視線がドキドキ感を帯びてくる。
きっと先日の女子だけ集められて受けた、性教育の影響なのかもしれない。
なんだか三郎くんを見ているとドキドキして、顔と胸が熱くなってくる。
「ねぇ……あなたと私の赤ちゃんがここにいるの」
澪は自身の下腹をさすりながら、三郎君からの眼差しを斜めに逸らしていく。
そのまま三郎くんの元から逃げるように走り出していった……
わたし何を言ってるんだろう?感じたままの気持ちを伝えてしまった……
三郎くんは困惑していたけれど。でも澪はちゃんと気持ちを伝えられた事でひとつ、大人の階段を上がれた気がした……
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