桜俊 <短編集>

桜俊

<短編1> 色褪せた写真と手紙

 断捨離で部屋を片付けていた日の出来事。押し入れにしまっていた箱を取り出しました。

その中で懐かしい写真と手紙の入った封筒を開く。

宛先はエミちゃんからでした。


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 この出来事は、保育園児だった頃の話。


「大人になったらね、あなたのおよめさんになるの」


 押し入れから引き出した写真や手紙を取り出しては、当時の思いにふける。


久々に取り出した写真は色褪せていて、当時の雰囲気がセピア色と共に脳内に染まるように蘇らせる。


(ああ、近所のエミちゃんだ。本当に懐かしいな)


耳の聞こえないたっくんの手を引っ張って、あちこちに遊びに連れて行ってくれたお姉さん。


(ああ、そうか。僕もエミちゃんの事が好きだったんだな)


良家のお嬢さんで、時にはママごとをしたりした。恥ずかしいという感情はなく、むしろ嬉しかった。

あれから何十年も経った今では、どこかで幸せにやっていることだろう。何処かにいるエミちゃんの安寧と健康を祈願して、手紙をそっと仕舞う。



ありがとう、エミちゃん。



あなたが幼少だった頃の記憶。

手紙や写真を開いた時に思い出される瞬間。

色褪せた記憶が、当時の想い人に感謝の気持ちを告げる。


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<あとがき>

桜俊です。

近況ノートの方に描いたイラストを貼り付けています。そちらも見て頂けると嬉しいです。

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