しゃっくりを止めるには?

プテラノプラス

しゃっくりを止めるには?

「ひっく」


 食卓で一人の男が場にそぐわぬ高い音を発する。


「あれ。しゃっくり?」


「大丈夫?こういう時はそうだなー。驚かせてあげればいいんだっけ?」


「ああ、いやこんなの勝手に止まるよ」


 彼の制止も聞かず、同じ卓を囲んでいた二人の少年少女たちは食事の手をとめドタバタと何かしらの準備をする。驚かせるのにそんなに準備がいるのかは疑問だ。


 やがて少女の方が部屋の奥から何やらフィギアのようなものと水の入ったコップを持って来る。


「これねー私が最近集めてる奴でね。水に溶かすと姿が変わるってやつなの。見ててね」


 そういうと少女はくたびれたサラリーマン風の男性フィギアを一つまみしてコップに落とし込む。この娘はこんなフィギアのどこに惹かれたのだろうか……そう考えている内に、フィギアの入った水は凄まじい勢いで色素を変えていきとても健康に悪そうな水になる。


「そろそろいいかな。はい」


 少女はコップに手を突っ込み変わり果てたサラリーマンの姿を見せてくれたそれは


「おお……おじいちゃんになってる……どうなってるんだこれ、凄いな」


「でしょー!よくできてるっしょ。このシリーズ他にも一杯種類があってねー。ほらこれとか」


 男の反応にご満悦の少女は女子高生のフィギアを一つまみし同じようにコップに放り込む。そして先ほどと同様に時間を置いて、フィギアをサルベージする。すると少女の姿はみるも無残な老人の姿になっていた。それも老婆ではなく皺皺の男性の姿だ。


「性別が変わっている?!」


「へへ~これそういうシリーズなの。みんな水につけたらおじいちゃんになっちゃうの。ほらこんなワンちゃんだって~」


 驚く男を尻目に犬のフィギアを水に放り込む。そして取り出したる姿はやはり。


「ジジイなのか……」


「そう、人面犬なんかに逃げないよ~絶対に人間のジジイになるのです!最高でしょ!!」


 小型犬から杖を突いた老人になったことで溶ける前よりむしろ体積が増えてる気がするのだがどういう技術の産物なのだろうかコレ……。というかこの娘はこんなに老人のフィギアを集めてどうするのだろうか、まさかこの齢にして枯れ専になったのだろうか……下手すると死んだ婆さんに呪われかねない……!


「次おれ、俺ね!」


 と少年は元気よく手を上げる


 もうしゃっくりはとっくに止まっているのだが。まあいいだろう。

しわがれた男は孫たちの気遣いに微笑みを浮かべる。

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