(二)-8

「いや。そういうことはないなあ。営業先から戻るときの話じゃないかな。上司と回ってるからね」

「上司かぁ。そう。じゃあ、見間違いだったのかなぁ」

「そうだよ。見間違いだよ」

 そう言って彼は缶ビールに口を付け、喉を鳴らしながら三口飲み込んだ。

 私も一口、彼への疑いと一緒に飲み込んだ。ビールは私が普段飲まない辛口だったので、少し咳き込んでしまった。

 結局この日は、一本だけ空けて家に帰った。「泊まっていけば」と誘われたけど、明日仕事だからと断って帰宅した。


(続く)

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