第25話 冒険者vsゴブリン軍団
緊急依頼の発表から1週間が経過した。
ついにゴブリンの大規模集落掃討作戦の決行日になった。
集合場所であるフーリットの森の入り口には大勢の冒険者が集まっている。探知魔法で辺りを見てみたところ、数えきれないぐらいたくさんの冒険者が今回の作戦に参加するようだ。
こんなに多くの冒険者がいると思うと非常に心強い。説明でもあったが、今回の依頼は非常に厄介そうだからな。
ただ、一つ懸念点があるとすれば...
レベルが低そうな冒険者がかなり多くいるという点である。
実は最近、探知魔法で対象を認識すると同時に魔物や人といった対象の強さが何となく分かるようになった。具体的なステータスとかは視認して鑑定を行わなければ分からないのだが、ある程度の強さぐらいは感覚で分かる。
しかし、中には相当な実力者たちも数人参加しているみたいだ。彼らがおそらく今回の主戦力となるのは間違いないだろう。
「これで全員揃ったか!」
冒険者集団の先頭にギルドマスター、アースルドさんが立っている。もちろんギルマスも戦闘に参加するので背中に大剣を背負って完全武装状態である。
「改めて、これから緊急依頼『ゴブリン大増殖(スタンピード)の阻止』を開始していく。今から私が今回の作戦実行のための部隊編成を発表するので部隊ごとに作戦を把握するように!!」
そう告げるとギルマスは素早く部隊編成と作戦を伝えていった。こういうのに慣れているのか、手際はかなりのものだった。
冒険者がそれぞれ部隊分けられ、役割を告げられる。冒険者ごとの実力や安全面をも考慮された部隊分けとなっており、そこからギルマスの指揮能力の高さがうかがえる。
今回の主力となるのはギルマスとBランク冒険者パーティ、そしてゲングさんなど実力のあるCランク冒険者たちで構成された部隊である。彼らは洞窟最深部にいるであろうゴブリンの大将、ゴブリンロードたちを相手取る予定だ。
その他の部隊は、最初に洞窟の前に建てられているゴブリンの拠点を襲撃する役割を担っている。その中で一部の部隊は拠点の掃討が終わり次第、先行して洞窟に入っていった部隊の援護に向かう算段になっている。
ちなみに何故か分からないが、俺は後ほど洞窟に向かうDランク冒険者部隊に一人突っ込まれた。
他のEランク冒険者はまとめて別の部隊に編成されているのに...
「いいか、諸君!どの部隊も重要な役割を担っている。一つが失敗すれば作戦の結果に大きく関わってくるだろう。気を引き締めて、冒険者としての誇りを胸に全力で作戦にあたって欲しい」
「しかし自らの命、そして背中を預ける仲間の命は必ず守り切れ!諸君らが生きて作戦を遂行することこそが町で待っている皆の未来を守ることにつながることを心せよ!!!」
ギルマスの喝が集まった冒険者の気を引き締める。
いよいよ、初めての緊急依頼が始まろうとしている。
「では...作戦開始!!!」
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岩肌に大きく空いた穴が一つ。
あれが例の洞窟だろう。
その入り口の前には大規模な集落が構えてある。
知能の低いゴブリンたちがここまので集落をどうしたら築けたのだろうか?
非常に疑問に思うところだが、とりあえずは作戦に集中しよう。
「全部隊、位置に着いたか?」
ギルマスがハンドサインで各部隊に確認を取る。
すると各部隊のリーダーたちが配置についたことを知らせる準備完了の合図を送る。
「それでは行くとしようか......突撃!!!」
タイミングを見計らい、ギルマスは配置についた部隊に突撃の合図を送る。
その時をもって冒険者たちとゴブリン軍団の戦いが開始された。
「うおおぉぉぉぉぉ!!!」
集落にいたゴブリンたちは意表を突かれ、その数を徐々に減らしていく。
綺麗に集落を囲む形で突撃したこともあり、冒険者たち優勢で戦いは進んでいる。
「そろそろだな。主力部隊!洞窟内部へ侵入する!!他の部隊は我々の援護を頼む!!!」
集落にいたゴブリンたちとの戦闘が始まり、良い頃合いだと判断した主力部隊たちは洞窟内部へと侵入していく。それを見たゴブリンたちは何とか侵入を阻止しようと動き出すが、最初に突撃をした俺たちの部隊が逆に侵入の邪魔をさせないように立ち回る。
主力部隊が完全に洞窟内部へと侵入しきったのを確認し、俺たちは洞窟の入り口を守るように残りのゴブリンたちを討伐していく。あとは主力部隊たちが上手くロードを討伐してくれれば作戦完了である。
突撃を開始してからしばらくして洞窟前の集落にいたゴブリンたちの掃討が完了した。こちら側の被害としてはやはり一部のEランク冒険者たちがダメージを受けてしまっている。だが、誰も命に別状はなく作戦は順調に遂行できたと言えるだろう。
集落の掃討に参加した冒険者たちは仲間のけがの手当てや討伐したゴブリンたちの素材回収、疲れた体を休めるなどしている。
特にこの後、洞窟内に侵入する予定の部隊はポーションで自身のHPやMPを回復したり、武器のメンテナンスを行ったりと念入りに準備を行っている。洞窟内に存在しているゴブリンは集落にいたゴブリンたちよりもさらに強力な個体が多いと予想できるため、より一層気を引き締めなければならない。
「よしっ、準備は出来たか?俺たちも洞窟に侵入するぞ!」
俺たちの部隊のリーダー、Dランク冒険者のラユルドが部隊メンバーに声をかける。
他のDランク冒険者たちはすでに準備を済ませており、いつでも行けるようだ。
俺の場合は全く消耗していなかったのですでに準備は出来ており、逆に暇なぐらいだった。
「ユウトさんは大丈夫ですか?」
「はい、準備万端です!いつでも行けます!!」
ラユルドさんはかなり俺のことを気にかけており、優しく声をかけてくれた。おそらくこの部隊内で唯一のEランクだからということもあり、心配してくれているのかもしれない。普段からパーティを率いているらしく、面倒見がいい人なんだろう。こういう人が今回の部隊のリーダーで良かった。
「それでは、僕たちも今から洞窟内に侵入する!行くぞ!!!」
「「「「「「「おぉぉぉぉ!!!」」」」」」」
掛け声で士気を高め、さらに戦闘が激しくなるであろう洞窟内へと入っていく。
薄暗くて何も見えない洞窟の奥からは何だか不穏な気配が漂っており、何だか嫌な予感がしてくる。
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