第4話 冒険者登録をしよう
ついに冒険者ギルドへとたどり着いた。
非常に活気にあふれた雰囲気でゴツい屈強な男ばかりかと思ったが意外とそうでもなく華奢な男性や女性も割と見受けられる。
とりあえず冒険者登録をしないといけないので奥のカウンターへと向かう。
「あのー、すみません。冒険者登録をしたいのですがここで合ってますか?」
「はい、合っておりますよ。ようこそ冒険者ギルド、サウスプリング支部へ。冒険者登録でしたらこちらの紙に名前と年齢をお書きください」
すると謎の記号が書かれた一枚の紙を手渡された。書いてくださいと言われても...これってどこに何を書けばいいんだろう??
そう思ったのも束の間、頭の中に先ほどの声が鳴り響いた。
《スキル『多言語理解』により、アルクス文字を習得しました》
再び渡された紙を見てみると先ほどまで意味不明だった記号がなぜか文字だと認識できて読むことも出来た。やっぱり持っててよかったな~、このスキル。
というわけで冒険者登録用紙と書かれた紙にアルクス語で「ユウト」そして「15歳」と記入して受付嬢さんに渡した。すると彼女はカウンターの下から一枚の板のようなものを取り出してカウンターの上へと置いた。よく見ると何か文字や図形のようなものが描かれている。
「ではこちらに手を置いていただいてもよろしいでしょうか」
「はい、分かりました」
感触的には金属のような冷たさをしていたが今までに触ったことのないような触り心地でなんだか不思議な気持ちになった。
手を置いて数秒後、板に描かれている文字や図形が光り出した。先ほど警備兵さんのところで見た魔道具と同じ白い光を発している。すごく幻想的だな~と見入ってしまっていたが、それは2秒ほどですぐに消えてしまった。
「もう大丈夫ですよ、ありがとうございました」
板の上に置いていた手を引っ込める。すると受付嬢はその板をひっくり返し、裏のくぼみにはまっている四角いカードのようなものを取り出した。前世で言うクレジットカードほどの大きさだった。
「これで冒険者登録は完了となります。そしてこれがユウト様のギルドカードとなります。再発行には銀貨1枚が必要になりますので紛失しないようにお気を付けください」
「ありがとうございます」
えっ、もう登録終わったの?
思った以上の早い手続きでとてもびっくりした。受け取った銅色のプレートには「ユウト」「15歳」そして「Fランク」と記載されていた。
「では冒険者としての最低限守って頂きたい注意事項がありますのでご説明させていただきます」
「はい、よろしくお願いします」
「では1つ目、冒険者同士の争いは禁止です。二つ目、犯罪者以外への殺人・窃盗・詐欺・恐喝行為は禁止です。ルールを破られますと最悪の場合、当ギルドから追放という形になりますのでご注意ください。以上になります」
あれ?それだけなのかな。これもまた非常に簡潔で最低限のことばかりだけど...
「では何かご質問などはありますか?なければこれで以上となります」
もしかして他のことは当たり前のことばかりだからもう知ってますよね的な感じでわざわざ言わないのかな。
「あのー、もしよろしければもっと詳しくギルドについて説明して頂けると助かるんですが大丈夫ですか?」
「...え、あ、はい!大丈夫です!」
めちゃくちゃ目を丸くして驚かれてしまった。そんなに冒険者ってギルドの説明なんて聞かないのかな?
てか今初めてちゃんと受付嬢の顔を見たけどめちゃ可愛いじゃん...!茶髪でセミロング、澄んだ水色の瞳。間違いなく今まで見てきた女性の中でもトップクラスの可愛さだ。...よく見たら他の受付嬢もレベル高っ!!
「基本的なギルドのルールは先ほどですべてですが、あと依頼を受けるにあたっていくつか注意事項やランク制度の説明がありますがお聞きになりますか?」
「はい、ぜひお願いします」
「まず冒険者にはランク制度というものがありまして、Fから始まり、E、D、C、B、A、Sの7段階の区分があります。ユウト様など登録されたばかりの方はみなさんFランクから始まります。その後依頼を達成していただき一定の基準を満たしますと次のランクへと昇格するという形になりまして、ランクが上がるにに応じて受けられる依頼の種類も増えてきます。」
「次に依頼を受けるにあたっての注意事項です。各依頼には最低受注可能なランクというものがありまして明記されているランク以下の方は該当の依頼を受けることが出来ません。また依頼を破棄、または失敗された場合には違約金を支払って頂くことになりますので慎重にお選びください。これで説明は以上になります」
なるほど、俺が知っている冒険者の仕組み通りだ。やはりお金をたくさん稼ごうと思うとランクを上げてより難しい依頼を受けるということが必要になってくるんだろうな。しかし失敗すればお金を失う、自分の実力と依頼の内容をしっかりと見極めなければいけないな。
「すみません、依頼の中には緊急的に出されるものや直接指名などで断ることが出来ないものとかってあったりしますか?」
「非常事態にギルドから緊急依頼を出すことはありますが、それは絶対に受けなければいけないというわけではありません。しかし報酬も普通の依頼より多めに設定されている場合が多いので基本的には皆さん、お受けになられますね。あとはAやSランクになるとギルドから冒険者様への直接指名の依頼が出されることもあるそうですがそれに関してはあまり詳しくは分かりかねます。申し訳ありません。」
「いえいえ!こちらこそ教えていただきありがとうございます。これからよろしくお願いします」
そうか、緊急クエストは断ることもできるけれど報酬が良いから断る理由がないということか。それに直接指名の依頼は高ランクにならないとないから、あまり事例がないのかもしれない。AとかSランクの冒険者はかなり数が少ないのかも。
「こちらこそよろしくお願い致します、ユウトさん。私はサウスプリング支部にて受付を担当しておりますレイナと申します。何かありましたらぜひお声がけ下さい。」
レイナさんは笑顔でそう答えてくれた。いやー、この世界の受付業務ってすごいな。処理も早いし、丁寧で対応も素晴らしい。最初の受付さんがレイナさんでよかった。冒険者も何とかやっていけそうだ。
ということで冒険者登録も完了したので早速依頼でもこなしてみますか。
初めての冒険者としての仕事にオタクとしての憧れを抱きつつ、俺は依頼書が沢山貼られた掲示板の方へと足を運ぶことにした。
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