第3話 足止めの警備兵
「すげぇ...でっかい壁だな」
目の前には町を囲うようにそびえ立つ大きな壁。その周りには水路が掘られている。これは難攻不落の要塞って感じだな。
初めてみる異世界の町の様子に圧倒されながらも町へ入るために門へと向かう。水路を渡るために懸けられた橋を渡りきると目の前に大きな門とその両サイドで警備をしている兵士が見えた。
するともうちょっとで町に入れそうなところでその警備兵、すごく強面なTHE・戦士と言わんばかりの男と目が合った。
「$&'`@-#?\;+`\|」
ん、なんだ?明らかに俺に話しかけているのは分かるが全く聞き取れなかった。何か意味不明な呪文のようなものを唱えていたけど...
《スキル『多言語理解』によって、アルクス語を習得しました》
「!?!?!?」
急に頭の中に声が鳴り響いた。これってあれかな常識提供さんが教えてくれたのか?でも常識提供さんは俺の質問に回答をするスキルだからこれはまた違うよな。
《先ほどの音声はスキル『常識提供』の音声ではなく世界を構成しているシステムの音声です》
「なるほどね、...てかシステム?」
なんか気になる単語が出てきたけど、今はとりあえず町に入るか、
「おい、そこのお前!」
「は、はいっ!な、なんでしょう...?」
それにアルクス語を習得したおかげで何を言っているかようやく理解できた。それにしても急に怒鳴らないで欲しいんだけど。
「お前さん、見ねぇ顔だがこの町は初めてか?」
「えっ、はい。初めてです」
「そうか、とりあえずこっちに来てくれるか?」
「わ、分かりました」
すると俺は市壁の中にある一室へと連れていかれた。
「すまねぇがこれに手をかざしてくれるか?」
「はい、これでいいですか」
先ほどの兵士の人が円状の土台の上に水晶が浮かんでいる器具を運んできた。とりあえず言われたとおりにしてみる。
水晶に手をかざした瞬間、その水晶が白い光を放ち出した。これで何が分かるんだろう...?めちゃくちゃ怖いんですけど!!!
「...白か。問題なしだな。悪いな兄ちゃん、呼び止めちまって」
「え、大丈夫ですけど...これって何をしていたんですか?」
「ああ、これは犯罪歴を調べるための魔道具でな。盗賊とかの犯罪者を町に入れるわけにはいかないからよ。あんたは白だったから問題なしってことだ!」
「なるほど...です。突然連れていかれたので何かやらかしてしまったと思ってビクビクしてました。」
「ハハハッ!それはすまねぇ!!」
いや~、マジでびっくりした。
何はともあれこれでようやく町に入れるな。
「では、失礼しますね。」
「おう!すまなかったな兄ちゃん。俺はこの町の警備兵団に所属してるガイルってんだ。何かあったらいつでも頼ってきな!」
「ありがとうございます。僕はくr...」
いや、ちょっと待てよ。もしかして家名があるとどこかの貴族かなにかと勘違いされる可能性があるかも。
ガイルさんも名前しか名乗ってないし貴族以外には家名はないのかもしれない。ここはこっそりと鑑定させてもらいますか。
俺は心の中で鑑定と唱えて目の前にいるガイルさんのステータスを見せてもらうことにした。プライバシーに関しては申し訳ありません!絶対に他言しませんから!!
====================
名前:ガイル Lv.31
種族:ヒューマン
HP:2697 / 2697
MP:775 / 775
攻撃力:527
防御力:775
俊敏性:186
知力:80
運:50
称号:
統率をとる者
スキル:
剣術Lv.5 槍術Lv.6 物理攻撃耐性Lv.5 魔法攻撃耐性Lv.3 体術Lv.5
魔力操作Lv.2 火属性魔法Lv.2
====================
ふむ、やはりこの世界では普通は家名がないようだ。それにしてもガイルさんのステータス超高くない?!レベル31ってもしかして警備兵団のトップなのかな?
「...ん?兄ちゃん、どうかしたか?」
あっ、ステータスとか名前のこととか気になりすぎてぼーっとしてしまった。
「あ、ごめんなさい!僕の名前はユウトと言います。よろしくお願いします」
「ユウトか!もちろんいつでも頼ってくれていいぞ!!」
「そういや、ユウトは何しにこの町へ来たんだ?」
実は僕、転生者でして...って言えるはずもなく必要最低限の情報だけで何とかしよう。
「実は諸事情があって旅をしておりまして、もうそろそろお金が尽きてしまいそうなのでこの町で冒険者登録をしようかと...」
「旅...って手ぶらでか?」
あっ、そうだよな。旅してるのに何も持ってなさそうなのはおかしいよな。それにたぶんインベントリのことはあまり言わない方が良いと思う。
「えーと...お恥ずかしい話なのですが、道中でモンスターに襲われそうになった時に荷物を囮にして逃げてきたんですよ。」
「なるほどな、それは災難だったな。しかしそれは何も恥ずかしいことじゃねぇぞ!命を守るためにした立派な行動だ。それが出来るってことは冒険者に向いてるってことだからな、頑張れよ!!ただ無理だけするんじゃねーぞ。」
「ありがとうございます!気をつけます!」
そして俺は軽く談笑したのちに固い握手(というより痛い握手)を交わし、その後は門まで見送りに来てくれたガイルさんに別れを告げて俺はようやく町の中に入ることが出来た。ちょっと予想外のことが起きてしまったがいい出会いもあったので良しとしよう。
門を抜けるとそこはアニメや漫画で見ていた通りの中世ヨーロッパ風の世界が広がっていた。すごく活気があふれている。前世の都会ほどの人の量ではないにしろ、多くの人でにぎわっていた。
......つまり俺の苦手な場所でもある。とにかくここからはすぐに離れよう。
人通りの多いところを抜けるとようやく人がまばらになりゆったりとした雰囲気が周囲を包んでいた。
とりあえずまずは冒険者ギルドへと向かおう。場所は先ほどガイルさんに聞いておいたので迷わず着きそうだ。
あと僕のステータスを『ステータス偽装』を使っていい感じに変えておいた。これで余計な面倒ごとに巻き込まれずに済むといいけど。
====================
名前:ユウト Lv.1
種族:人族
HP:50 / 50
MP:100 / 100
攻撃力:50
防御力:50
俊敏性:80
知力:100
運:80
残りステータスポイント:0
称号:
研鑽を極めし者
スキル:
剣術Lv.2 体術Lv.2 気配遮断Lv.5 ストレス耐性Lv.7 精神攻撃耐性Lv.6
鑑定Lv.2
====================
そんなことを考えているうちにこの町の冒険者ギルドに到着した。何事もなく登録できますように...!
もちろんフラグじゃないよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます