第8話
時刻は7時
季節が夏であるためか、夕日が少しずつ沈んでいくのがわかる。
カーマと明日華、カーミアは夏祭りの場所へとたどり着いていた。
「結構賑わってるな」
白い川の模様の紫色の浴衣を着ているカーマ。
「地元の人は娯楽が好きだからね」
赤い花びらの模様の黄色い浴衣を着ている明日華。
「……」
白い花びら模様のピンクの浴衣を着ているカーミア。
「? カーミア、元気ないな」
「えっ?! ごめん。無理につれてきちゃったから怒ってる」
カーミアを覗き込むカーマと心配する明日華。
「違うの。 こういうところははじめてだから緊張しますです」
「「しますです?」」
変になる言葉遣いに頭をかしげる二人。
「まっいいや。 大丈夫ならいこう」
「カーマ!?」
「お姉ちゃん!?」
二人の手を取ったカーマは、夏祭りへと駆け出した。
彼女達がはじめに立ち寄った屋台は金魚すくいだ。
三人とも受け皿とポイを両手に狙いを定める。
「んっ」
「それっ」
「えいっ」
それぞれタイミングを見計らい、ポイで金魚をすくおうとする。
カーマとカーミアのポイは見事に金魚に貫かれ、穴をあける。
明日華の取っ手付きの桶には五匹目の金魚が追加された。
「あー! もうこれで五度目よ! 何で一匹もすくえないのよ!」
「まあまあ、カーミアちゃん。 こういうのはコツがいるらしいから」
「だとしても、失敗ばかりするのはわたしの主義に反します!」
「カーミアちゃん燃えてるね。 カーマ?」
「……おじさん次のポイ……」
カーマはプラ舟を泳ぐ金魚から目を離さない。
屋台のおじさんからポイを受け取ったカーマは構える。
ポイを持つカーマの右手がほのかに光る。
「今だ!」
カーマから放たれる高速の金魚すくい。
水の中からすくいあげたポイは穴が開き、金魚一匹取れてはいなかった。
「……ばかな」
穴の開いたポイを見つめ呆然とするカーマ
「……お姉ちゃん」
「強化できるのは体だけみたいだね」
的当てにてカーマがすべての的をひっくり返していた。
「よっしゃ! 三つめもコンプリート!」
「すごい」
「むむむ、また同点」
「そう簡単に姉を超えさせないね。 もういっちょ、いく?」
「望むところよ!」
カーミアが四つ目の的当てに挑戦する。
一から九までの的を一つずつひっくり返す。
「どう、お姉ちゃん。 ギブアップする」
「何を言うかと思えば、そろそろ格の違いってやつを見せてくれる」
「二人とも、頑張れー」
明日華にピースサインをおくり、カーマは四つ目の的当てにはいる。
時計回りに2、3、4、5、6、7、8、1と真ん中に9の的。
一球目は2と3、二球目は4と5、三球目は6と7、四球目に8と1。
最後に9の的をひっくり返すカーマ。
「どう。 玉の余りがあるのはワタシ。 どういうことかわかるはずだけど」
「むむむ……」
「カーミアちゃん?」
「くあああ! お姉ちゃんに負けたー!」
「はっはっはっ! 愉快愉快!」
かき氷の屋台にて三人はかき氷を受け取っていた。
「誰が一番早くキーンってさせるか勝負しよっか」
「おっ、いいね」
「きーん?」
明日華の発言に乗り気のカーマと頭をかしげるカーミア。
「カーミアちゃん。 キーンって言うのは」
「早食いってこと」
「なるほど」
明日華の言葉を遮るように告げるカーマ。
「はいドン」
「いきなり!?」
「負けない!」
カーマの宣言で始まった早食いに驚く明日華と食べ始めるカーミア。
「うっ!?」
「つぅ……」
「じゃりじゃり」
こめかみを抑える明日華とカーミア、口に含んだ氷を噛みしめるカーマ
「これがキーン……」
「久々にきた……」
「まだこないなー」
かき氷を食べ終えた三人が会場を歩いていると空が光りだした。
「なに!? 敵襲!」
「……花火だぁ」
「もうそんな時間か」
身構えるカーミアに対して明日華は唖然としカーマは何気なく空を見上げる。
「花火?」
「夏祭りの風物詩だよ」
「夏だなーて感じになるぎょーじ」
疑問を浮かべたカーミアに明日華とカーマは説明をいれる。
夏祭りも終わり三人で夜道を歩く。
三人のほかにも子連れや彼氏彼女の仲の人たちも帰りだす。
カーミアはある光景を見つめる。
娘の右手を父親が、左手を母親が握り仲睦まじく歩く姿。
カーミアの視線に気づいたカーマは左手で右手を握る。
「!? なに!?」
「明日華」
「えっ、 あぁ、 はい」
「明日華さんまで……」
カーミアの左手を右手で握る明日華。
「……はずかしいよ」
「あきらめろ」
「なんだか家族みたいだね」
恥ずかしく頬を染めるカーミア、きっぱりと告げるカーマ、のんきな明日華。
「いいんじゃない」
明日華の言葉にはにかむカーマ。
手を握り合い歩く三人はまた一つそれぞれを知ることができました。
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