第五章 投票制度
☆
アリサが出て行ってから一日が経過した。
鼎ハウス内には暗い雰囲気が漂っている。
たった二週間とはいえ、人一人いなくなるのは空間に大きな空洞が出来たようで、一抹の寂しさを感じさせた。心細い、とまでは言わないが、騒がしかったアリサがいなくなったことで心なし静かになったような。
『イェーイ!』『ざまあ』『当然の報い』『これでアリサも本格的に終わったな』『ありのままのアリサが観られちゃったからね。どこも使いたがらないんじゃない?』『鼎ハウスでのアリサの唯一の功績は、由利穂ちゃんの本音を聞き出したこと』
視聴者コメントはどこまでも辛辣だった。
――当然だとは思うけれど。
アリサが専有することの多かった大部屋の大きなソファであの日のことを思い出す。
「アリサ……さん」
思えばアリサの名前を呼ぶのはそれが二度目だった。
アリサは栞の方を見ることもなく立ち上がると、一人部屋へと向かった。テーブル上のノートパソコンを見てみれば、退去の為に荷物をまとめ始めたアリサが映っていた。
暴れるかと思った。そうじゃなくても何か悪態の一つでも付くと。
しかし最後までアリサは一言も交わすことなく、投票結果発表の翌日には出て行った。
新垣も別れの言葉を口にしたが、アリサは何も応えてくれなかったらしい。
「じゃあねー。糞ガキー。全然応援してないけど頑張れよー」
と、何故か知菜にだけは言葉を残していったようだ。
「どっこいしょういち」
ソファがぐっと沈んだ。
そのふざけた言葉に一瞬薫子がやって来たのかと思ったがすぐ隣には轍の顔があった。
「飲んます?」
にかっとした笑顔でマグカップを差し出してくる。両手にマグカップを持っていた。その片方を栞の方へと向ける。
「……どうも……って、なんですか、これ」
薄茶に緑を混ぜたような何とも言えない色の液体がカップを満たしていた。
「ロイヤルほうじ抹茶ミルクラテっす。眠ることのできない夜によく飲むんすよー」
「はあ」
飲んでみた。味は微妙だ。名前通りというか。まず抹茶の風味が口に広がり、続けてほうじ茶の味が来る。そしてやたらと甘い。せっかくのほうじ茶の風味が台無しだ。
飲めなくはないけれど、好んで飲むような代物じゃない。
眠ることのできない夜? はて。
眠れない夜、ならよく聞く言葉だけれど。
「そのまんまの意味っすよ。締め切り間近。胃もキリキリギリギリ。そんな胃を甘みで満たしてさらにカフェインで眠気を覚ます為のブツっす。夜しか飲まない」
「今は昼ですけど」
「にょふふ。実はですねー。この度作品が完成致しまして」
「! そうなんだ……! おめでとうございます……!」
「いやあ。あはは。これはそのお祝いっす。自分へのご褒美&誰かにこの喜びを共有したくって。本当はケーキとか甘い物も一緒に食べたいんすけどー。ほらー、アイドル目指してるし、あんまり取り過ぎもよくないかなあって」
嬉しそうだ。
いつになく表情が明るい。彼女のこんな顔を見るのは何時ぶりだったか。そうだ。会った時ぶりだ。その後はずっと目の下に隈を作ったような顔をしていた。
よく作品が完成しないことに対する愚痴を零していた。
夜が遅いのも知っていた。部屋の前を通るといつも電気が付いていた。
「ようやく、しばらくはこの企画に集中出来るっす」
決意を秘めた瞳を天井の片隅にあるカメラに向けた。
「集中、ですか?」
今までも十分集中してように思える。少なくともアリサよりはよっぽど。
「後はもう新しいアイディアが降ってくるのを待つ段階っすから。アイドルやりながら考えるとします……それよりもっす! 大変っすね! 私たち」
「順位のことですか?」
「そっす」
忘れていたわけではない。
栞は第六位。
そして第七位が轍だ。
一応、すぐ下に名前があるとはいえ、十点差以上も離れているわけだけれど。
栞は自分で予想しているに以上に下がってしまった。ツーランクダウンである。初日のインパクト頼りでここまでほとんど何もしてこなかったのが悪かったのか。栞が先週やったことと言えば、薫子を飲酒の危機から救ったくらいである。それだって十分な功績だと思っているのだが。まあ、土下座踏み付けよりは地味でインパクトは薄いし、自分より薫子の方が人気があるのは、本来の位置に戻ったと言える。そこは落ち込んでいない。当然の結果だ。
「不思議に思わなかったっすか?」
「不思議?」
なんのことだろう。
轍はチラリと確認するようにカメラを見上げた。
「投票制度のことっすよ。どうしてこんな点数制度を採用してるんだろうって。私は不思議で不思議でしょうがなかったっす」
「はあ」
言われてもパッと思い浮かばなかった。
そういえば、轍は第一回目の投票発表の時、何かに引っ掛かっている様子だった。引っ掛かる要素なんて無かったと思うが。
「ほら。普通、こーいうバラエティなら、百点満点で順位付けちゃうよりも、得票数で競った方が見栄えよくないっすか? 選挙みたいに。誰が何万何千何百何十何票獲得しましたーっとかやった方が絶対良いと思うんすよ。グラフとか作りやすいですし、実際作っちゃえば視覚的にも凄さが伝わりやすい。ネットとはいえ、テレビっすよ? なして、百点満点で点数付けてるんすか? その基準はなんすか?」
「ああ」
指摘されてみればたしかにそうか。なんだってテストみたく百点満点なんだろう。
うん。分かる。言いたいことは分かる。しかしすぐにそれは駄目なんじゃないかと思い直した。
だって、それをやってしまうと――。
「それこそ人気の差がはっきり出ちゃうからこうしてるんじゃないんですか? ミリオン四本持っている国民的歌手に、元国民的アイドルグループ、全国放送で喋っていたアナウンサー」
アリサだってほんの少し前までアイドルグループにいた。テレビで、ライブで、ファンの前で、歌って踊っていた。彼女たちには大勢のファンが付いている。
「わたしたちじゃ勝負になりそうにないからこうやってるんじゃないですか?」
「こうやってっつーのは?」
「……だから、平均して割ってるんでしょう?」
「視聴者に、百点満点で採点してもらって、その点数を平均化するってことっすか?
でもそれだって万全とは言い難いっすよね? 挙げてもらった何人かは元々芸能活動をしていた人たちっす。片や、作家業の私、音楽分野で活動していた栞さんや薫子さん――まあ、薫子さんはボーカルなんでファンも結構抱えていたでしょうが――、そもそも知菜ちゃんなんかはこれまでメディアに一切露出してこなかったわけっすよ。
前述した三人は信者と呼ばれる熱狂的なファンを抱えているわけっす。実際多いんすよ。愛さんや由利穂さんもっすけど、新垣アナだって未だにアナウンサーの仕事はしてますし、本人もあの通り美人さんっす。脱落してしまったけどアリサさんだってそうでした。元ザ・セスタの元センターっすから。センター。
ね? 不利っすよ、不利。私たちからしてみれば、こんな投票制度自体が理不尽だって文句付けてやりたいくらいっす」
そりゃあ、根っからのファンは、彼女たちの普段の生活など関係なく、百点百点九十何点と高得点を入れてくれそうなものだけど。
しかし、今更意見を言ったところでどうにもならないだろうに。
だとしたってって話だ。
番組側の意向ならばそれに従うしかない。
「だから調べてみたんすよ」
「調べて?」
聞き返したが、栞も実は投票サイトへのアクセス事態はしていた。
言うつもりはないが、こっそりアカウントを作って投票しようとしたのだ。もちろん自分にではない。薫子にだ。少しでも彼女の順位を上げようと試みたのである。結局、ノートパソコンには投票ページへのアクセス制限が掛けられていて、それならばスマホからならいけるかと思ったがこちらもダメだった。ワイファイを切ってみても同様であった。
鼎ハウス全体に、どうやってやったのか投票ページへのアクセス制限を掛けているようだった。
その時は自身に投票させない為の措置だと諦めたのだが――。
――まあ、かおちゃんの順位高かったんだけど。
「個人でこの番組のことまとめてるサイトあるんすよ。知ってます?」
知っている。
気になってちょこちょこそういうサイトは夜寝る前に見てしまっている。個人個人のその日の動きを眺めていたくらいだ。投票制度までは頭が回っていなかった。
「したら見つけて。うっはぁ~、えっぐ、そういうことかあ~ってなって」
轍は言いながらスマホを取り出してブラウザを表示させた。
検索バーから履歴を辿って表示されたのは、個人サイトが投票システムについて言及しているページのようだ。マニアックなファンもいたものである。
「見てくださいよ、これ。これが投票ページなわけなんすけど――」
「あ、これ全員に点数付けられるようになってるんだ」
投票ページのスクリーンショットが並んでいた。
個人情報入力からカード決済システムで五百円課金に同意を示す。その次が投票ページだ。栞たち鼎ハウスの住人、それぞれの名前が並んでいる。名前の横に一〇〇点満点中一体何点を付けるか、といったバーが表示されており、その中に数字を入力するようだ。
各個人の名前の下にはコメント欄もあり、そこに応援コメントが書き込めるようになっている。
今まで勘違いしていた。
てっきり自分の好きな人物にだけ投票するものだと思っていた。それこそ轍の言った選挙みたいな。なるほど。点数を付けるのならこういう仕様になるか。
「未入力だとエラーで投票できないみたいっすね。全員に点数を付けないと先に進めないようにできてるんすよ」
「ふうん。これのなにがえぐいんですか?」
「これが投票結果発表の後にPOTのサイトで出された投票結果っす」
示されたのは、ただの点数結果では無い。
グラフだ。
左上に本庄栞の名前。下のバーに0から十、十一から二十、二十一から三十、三十一から四十、四十一から五十、五十一から六十、六十一から七十、七十一から八十、八十一から九十、九十一から百――と数字が振られている。
その数字の上に、山なりになった棒グラフが表示されている。左横のバーに書かれた数字は……人数だろうか?
「……ただの点数グラフに見えるけど。下のバーが点数で、横のバーは投票した人の数ですか? わたしは、やっぱり五十点代に入れてる人が多いんですね……でもそこから山になってて……八十、九十点代に入れてる人もいるみたい……嬉しい」
栞を評価してくれた人も少しはいるみたいだ。バンドのファンかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ただの手遊びで入れた可能性だってある。お目当ての人物への投票以外はどうでも良いとでもいうように適当に入れた数字という可能性だって。
轍は何も言わずに画面をスライドさせた。次はアリサのグラフだ。
十点代が山のようになっており、そこからはジェットコースター。最後に九十点代から百点がそこそこの数値を示し、グラフが盛り上がっている。如何にもアリサらしい。轍の言う信者は、あんなアリサにも一定数いたと見える。
「変じゃないっすか?」
「な、なにがですか?」
ぐっと顔を寄せられた。
睫毛が長い。綺麗な顔。よく見れば、非常に可愛らしい顔立ちをしている。正にアイドル顔といった風だ。
男っぽい喋り方で大分損をしていると思った。
「平均で割ってるならアリサさんはもうちょっと点数が高くても良かったはずっす。こんなに高得点に入れた人は多いんすから。栞さんも同様っすね。他のみんなも」
「まあ……」
それはそうだろう。
ファンほど高得点に入れるだろう。
だから平均で割ってるわけじゃないと言うのだろうか。
「この投票結果、最頻値で割り出してるっぽいんすよ」
「最頻値?」
平均とは違うのだろうか。中央値は聞いたことがあったが最頻値は知らない。
「最頻値はそのまんま、最も頻出する値っす。つまり、栞さんならこのグラフ通りにいくと、五十点代に入れてる人が一番多い。その中から一番投票数の多かった五十五点を結果として出しているんでしょう。最も、細かな数字の調整はしているんでしょうけど」
言って示したのは、投票した後に出てくる注意事項。
「やけに多いと思ったんっすよねー。九十点とか八十五点とか五十五点とか二十点とかってキリの良い数字が。全部じゃないっすけど。まあ、その辺は調整の結果なんでしょう……ようは視聴者が投票する際に、キリの良い数字を入力していることの証左っすよね、これ」
入力された個人情報はそれ以外の目的で使用しません、などといったよく見る文言と一緒に、『データの算出は最頻値を活用致します』『尚、データ算出は番組スタッフが独自に集計したものとなります。あらかじめご了承下さい』と書かれていた。
「他にも、一度の投票に付き五百円という結構な金額の投票代は、いたずら目的の投票を極力減らしたいといった向きもあるんでしょう。それだけ払うんだったら全員をきちんと評価したいという人間心理も付いてると思うっす」
もし自分がこの番組の熱心な視聴者だったら――これまでの生活態度や歌、ダンスに対する実力や姿勢など、全てを総合的に判断した上で点数を付けたいと思う――かもしれない。少なくとも、ただファンだからという理由だけで特定の個人に高得点を付け、他の全員には0点を付けるといった一種投げやりとも取れる投票はしない。
せっかく五百円も支払うんだから。
「……つまり、この投票制度は、轍さんの言う、最頻値で算出しているから、例え一部の人が高得点を付けても、低得点の割合の方が多い場合、高得点は切り捨てられるってことですか?」
「恐らくは」
それは――。
それはあんまりじゃないか。
いくら公平にする為とはいえ。
せっかく高いお金を支払い高得点を付けてくれた人がいても、この鼎ハウスの脱落を掛けた戦いにおいては全てが無駄に終わる可能性があるということだ。
「ま。無駄ってことはないっすけどね。こんなグラフデータが発表されている以上、次回の投票時の参考にはなるでしょうし。高得点を付けるにしても、次は少し高めくらいにしておくとか」
それをカメラの前で言うのは、今後の投票に支障が出るんじゃないか?
投票者同士が牽制し合うような動きになってしまうのでは。どうせ切り捨てにあうなら、グラフを見、次はこのくらいの点数に入れよう、と。番組側とすればどうなのだろう? ノートパソコンはここからじゃ見えなかった。カメラを他の部屋に切り替えているかと思って、確認したかったのだが。
しかし、こうして個人のホームページでネタとして上がっている以上、他の場所でもこれくらいは議題に上がっているか。
――わからないのは、どうしてわたしに、こんな話をするのかってこと。
下位グループの轍にしてみれば己の胸の内に控えていた方が、ゲームを有利に進められるんじゃないか。具体的な方法は分からないけれど。わざわざ言う必要はなかろう。
轍は再びアリサのグラフデータを表示する。
「アリサさんが最下位で脱落してしまった理由もこのデータを見てれば何となくわかるっす。
特定のファンだけに向けた、サービスとも取れる行動は逆効果だったみたいっすね。それ以外の、一般の視聴者層をないがしろにするような行為は、当然っすけど反感買うっすよ。現に私たちも見てて気持ちのいいもんでもなかったっすもん」
「じゃあ今後、わたしたちは無難な行動を心がけていれば――」
「それもそれで問題っすね。順位の変動が起こりにくくなれば、自ずと脱落するのは一番下の人っす」
現状の一番下。
アリサがいなくなった今、それは轍のことだ。
「一週間って期間もなかなかムツカシーっすねえ。一週間頑張ったからってそれで順位が上がるかっつーとそうでもないんすよね。みんながみんな頑張ってる。これが得票制なら、今週はこの人が他の人より頑張ってたからこの人に投票しようってなるかもしんないっすけど。このシステムだと……。五百円って数字もなかなか厳しいっすね……。複アカ作ってたくさん投票しようとはなかなか思えない金額っす」
「……全員に点数を付けられてしまう」
「そうっす。零点十点に入れて他人の評価を下げようとしても反映されなければ意味がない。公平だけどある意味残酷なシステムっすね」
轍はそう言ってスマホを仕舞った。
膝を抱えて首を傾げてみせる。
「たぶん、このシステムを知ってて黙ってた人もいるんじゃないかなって思ってるんすよね」
轍は声を潜めるようにして言った。
そんな真似をしても、設置されたマイクが高性能過ぎて、このくらいの声は拾ってしまうのだが。知らないわけじゃなかろうに。
――知ってて?
思い当たる人がいない。
「新垣アナのことっすよ。ほら、夕食の支度では愛さんを率先して手伝って、甲斐甲斐しくアリサさんの世話を焼いて、誰よりも早く起きてトレーニングをする。アピールとしては十分っすよ。本人がそれだけ努力家で良い人な可能性だってあるっすけど。そーじゃない可能性だってある。もしこの制度を教えていたらアリサさんだってもうちょっと無難な行動をしていたかもしれない。そしたら最下位は免れたはずっす。その愛さんも怪しいっすね。新垣アナが料理できるならずっと自分やってないで交代にしてもらえばいいのに。いっつも二人でやってるじゃないっすか。絶対交代でした方が楽なのに」
「……そんなこと」
そんなことはない。
当てずっぽうもいいとこだ。全て可能性の域。そんなことを言い出したらどんな行動だってそういう風に結び付けられてしまう。だいたい、自分だって、それに気づいたんなら栞にだけ打ち明けず、全員に明かせばいい。
かもしれないの域。どころかその域まで達していない。
普通に考えれば新垣は純粋な努力家だ。全国放送局のアナウンサーという、非常に狭き門を潜ってきた人間なのだから。
料理に関しても同様だ。八人分――アリサを抜かしても七人分の料理。献立を考えるのだって一苦労なはず。二人で分担した方が楽だから二人ともそうしているのだろう。
――この人……。
投票システムを視聴者に分かりやすく説くことで、トリックスター的な役割を自ら演じようとしている? 番組視聴者の全員が全員、今言った投票制度を理解していたわけではないだろう。現に、個人サイトを巡回していた栞が知らなかったのだ。より番組に熱中しやすい空気を作ったんじゃないのか。
そしてその上で、視聴者への露骨な新垣下げのアピールを仕掛けてきた。
得票制と違い、このシステムだと自身がどう行動しても、そう簡単に点数は上がらない。ならば、他人の足を引っ張って全体の得点を下げよう考えたのでは――一人が低得点を付けても意味がないというのなら、もっと大勢が付ければいい、全体にそんな空気を伝染させればいい。
終始、自分勝手な行動をし、視聴者全体の評価を下げたアリサのように。
アリサが薫子に酒を勧めていたことを思い出す。あの行動も、アリサの評価を下げた一端ではあるが、栞が、あの時もし止めていなければ、薫子の点数はアリサ以上に急降下を見せたはずだ。
――下がっていた、じゃ済まないけれど。
自分の手をなるべく汚さずに、他人の評価を下げるにはどうすればいいか。
そう考えての行動、だとしたら。
作家だ。
頭の回転はこの中の誰より早いだろう。まして彼女は調べてみたところミステリー作家だという。
瞳に警戒心が宿ったのが伝わったのか、轍は相好を崩した。
「ま、お互いギリギリっす。頑張っていきましょー、ってことっすよ。ほら。せっかくの轍ちゃん特製のロイヤルほうじ抹茶ミルクラテが冷めちゃうっす」
轍はぐっと伸びをして、ソファから立ち上がると部屋を出て行った。
ただでさえ微妙な味なのに、冷めたロイヤルほうじ抹茶ミルクラテはさらに味が落ちた。
栞がカップを片付けがてら、テーブルの上のノートパソコンに目をやると、やはり画面は大部屋を映していた。
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