第104話 尾行者の正体

「さて…これからどうするか」


わざわざ二重尾行をしているとは思えないので、尾行はもう居ないだろう。尾行を早く片付けられたから狩りをする時間は普通にある。


「いや、そもそもこいつらはどの組織で真意は何だったんだ?あっ…1人くらい生かしておけばよかったかも」


こいつらが話しているのは分かったが、話の内容までは詳しく聞こえなかった。そのため、結局こいつらが所属しているのは暗殺ギルドなのか、冒険者ギルドなのか分かっていない。

そして、そのどちらにしても報復をするような仲間がいるかも分からない。


「それもこれも生き残りが居れば分かったんにな」


尾行されたのは初めてでつい焦って全員を即座に殺してしまった。特に雷魔法で瀕死で痺れていたヤツらに関しては急いでとどめを刺す必要はなかった。



「……分からないことは分かってそうな人に聞くしかないか」


王都の情勢に詳しくない俺がいくら考えても意味は無い。ここは冒険者の先輩であり、この街に住んで長い人の元へ行こう。

そのため、今日の狩りは中止だ。依頼を受けている訳じゃないからサボっても問題は無いしな。




「お前のは名前は?」


「ヌルヴィス」


俺が目的の人の住む屋敷の前に来ると、門番に名前を確認された。


「ヌルヴィス様だな。中へどうぞ」


この家の門番は名前を聞いただけで俺を中に通してくれた。


「旦那様の所在は中のメイドに聞いてください」


「あ、ああ」


最初から丁寧なその対応に疑問を覚えながらも、俺は屋敷の中へ入り、近くのメイドに案内してもらった。



「おっ!ヌルか!急にどうした?」


案内された部屋の中に入ると、そこには1人で本を読んでいるシア父さんが居た。


「暗殺ギルドについて聞きたくて来た」


「…何でそれを聞きたくなったかをまず聞こう」


俺の言葉でシア父さんは本を置き、俺を椅子に座らせて話をさせた。

俺は座って今日会った出来事やそれに伴う心配事まで全て話す。



「特徴を聞く限り、ヌルを襲った相手は間違いなく暗殺ギルドのメンバーだろう」


「やっぱりか」


シア父さん曰く、あの黒ずくめの集団は暗殺ギルドで合っていたそうだ。


「そして恐らく、ヌルが若くて1人だから差し向けられた暗殺ギルドの奴らは比較的まだ入りたての弱い奴らだったのだろう」


新人でもないとゴブリン程度と戦うのにわざわざ音を出さないそうだ。リーダー以外の奴らはほぼ何もせずに終わったから気が付かなかった。


「また、暗殺ギルドの連中に仲間意識なんてものは無い。だからヌルが心配するような仲間を殺された報復とかはしないだろう」


「それならよかった」


これからも街の外に出たら暗殺ギルドの連中の尾行を警戒しないといけないかと考えたら少し心配だったからそれは良かった。


「ただ、暗殺ギルドが動いたということはどこからヌルを殺るよう依頼が入ったことだ。

暗殺ギルドは顧客からの信頼を大事にする。つまり、依頼達成率は100%近くにしたいはずだ。だから依頼は失敗しないように今度は熟練の奴がヌルを狙ってくるかもしれない。」


「っ!?」


シア父さんがさっきと手のひらを返すようなことを言い出すのでびっくりした。


「まあ、ヌルの身ぐるみ欲しさでヌルを襲うよう依頼するようなヤツらがそこまで金を注ぎ込んだわけでも、権力があるとは思えないから1週間見つからなかったらもう諦めるだろうし、大丈夫だろう。依頼を無しにした後にわざわざ殺すこともないだろうしな。」


「1週間もか…」


まだこの街に来たばかりの俺が私怨で襲われる理由は無いから、十中八九俺を狙う理由はマジックポーチと装備だそうだ。

ちなみに、今日はまっすぐここに来たから暗殺ギルドや依頼者に見つかったとは思えないから大丈夫だろうとのことだ。

だが、これから1週間も隠れて過ごさないといけないのか。


「そこで、その1週間を俺にくれないか?」


「え?」


改めてシア父さんを見ると、先程の真面目な雰囲気はどっか行っており、今はニヤニヤと面白そうな顔をしている。


「ヌルは気配を察知するスキルや隠れている奴を見つけるスキルが欲しくないか?」


「欲しい!」


それがあったら俺は今日のような急な対応に追われる必要はなかったのだ。


「なら、1週間俺と一緒に特訓ってことでいいよな?」


「ああ!」


身を隠さなければならない1週間を有意義に使えるのは嬉しい。そして、それらのスキルは俺が頼んで教えてもらいたいくらい欲しかったものだしな。



「なら、今日からこの家で寝泊まりな。昼夜問わず特訓してくからな。あ、拒否権は無しな」


「あ、え…わ、わかった」


不気味に笑うシア父さんを見ると、簡単に提案を受けたのは間違いだったのか不安になってしまう。


こうして、俺は1週間身を隠すついでにシア父さんから特訓を受けることになった。

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