第2話 幼馴染
「ヌル!これをアメシアちゃんとルイスちゃんの家に持って行って!」
「はーい」
母さんから軽いおつかいのようなものを頼まれた。
ちなみにアメシアとルイスとは同い年のご近所の女の子のことだ。そして2人の両親も俺の両親と同じパーティの冒険者だったそうだ。6人のパーティメンバーでそれぞれ結ばれてからは冒険者を引退して田舎の村に来て余生を過ごしているらしい。
俺は早速アメシアの家から向かった。とは言っても徒歩1分もない近所なのですぐに着いた。早速ドアをノックしようとした。
「やあ、ヌルヴィスいらっしゃい」
「うわっ!!」
そんなタイミングで真後ろから声をかけられた。驚いて声を上げてしまった。
「これくらい見つけられるようにならないと冒険者として生きていくのは難しいぞ」
「……シア父さんみたいに職業が盗賊になったらできるようになるから!盗賊じゃなかったら…そこはどうにか頑張るし!」
「盗賊になったら俺が教えてやるよ。まあ、盗賊じゃなくても物理職なら気配察知くらいは取得した方が便利だぞ?ほら、早く上がりなよ」
シアの父さんはそう言いながら頭を撫でてきた。いつもシア父さんは気配を消して後ろから急に声をかけてくる。何度も見破ろうとしてるのに未だできない。警戒して振り返っても居なかったのに前を向いたら後ろから声をかけてくるのだ。もう見つけようが無い。
ちなみに、シアというのはアメシアの愛称のことだ。
「ヌルヴィス君いらっしゃい。…あなた、また意地悪してないでしょうね?」
「あはは…」
「はぁ…ごめんね。後で締めとくから安心してね」
家の中にに入ると、弓士のシアの母さんが出迎えてくれた。シア母さんは何とエルフなのだ。もちろん耳がピンととんがっている。容姿もとても整っていてスレンダーだ。酒に酔った時にシア父さんがシア母さんを落とした事を自慢していた。
「いらっしゃいヌル。何しに来たの?」
家の奥からシアが現れた。シアは母親に似て、綺麗系な顔立ちをしている。髪は金髪で目は緑色だ。そしてシア母さんほどでは無いが耳がとんがっている。シアはハーフエルフなのだ。
「これを届けに来たんだよ」
「あ!これ私の好きなやつ!ヌル母さんにありがとうって言っておいて!」
届けに来たのは昨日のボアを使って作ったミートパイだ。シアはボアのミートパイが大好物だ。
「じゃあ俺はルイのところにも届けに行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
「またね!」
ミートパイを食べるのに夢中なシアに別れを告げて俺はルイスのところに向かった。
ちなみに、ルイというのもルイスの愛称だ。
「ルイ、ルイ母さんいる?」
「……いる。待ってて」
ルイの家に着くと、ルイが本を読みながら店番をしていた。店番をしているのに少し悪いが、ルイ母さんを呼んでもらった。
「わぁー…かっこいいな……」
俺はその間に店の商品を見ていた。ルイ父さんの職業は物理職の鍛冶師なのだ。冒険者を引退した今は狩猟用の武器を作ったり、工具、調理器具などを作ったりしている。ここではそれが売っている。その出来栄えは馬車に乗ってこの村の外からわざわざ買いに来る人がいるくらいだ。もちろん勝手に触ったら怒られるので触らない。
ちなみに、ルイ父さんはドワーフなのだ。背が150cm程だ。それなのに、全身の筋肉はとてもがっちりとしている。その筋肉を活かして冒険者の頃はかなり大きなハンマーを使っていたそうだ。
「ヌルヴィス君いらっしゃい。どうしたの?」
「これ、母さんから渡せって」
「あら、ありがとうね」
店の奥からルイ母さんがルイと共に現れた。ちなみにルイ母さんは回復魔法使いだ。
「ありがと」
「ああ」
ルイは人族である母親とドワーフの父親との子供なので、ハーフドワーフだ。だからか同い年の俺やシアよりも少し小柄だ。そんなルイは綺麗系な顔のシアとは違い、可愛い系顔をしている。髪は濃い青色で、目は水色だ。そしてルイは無口で、よく本を読んでいる。
こうしておつかいを終えた俺は家に帰った。そして、母さんが作ったミートパイを俺も食べた。冒険者時代の仲間だったのでこの3家族はとても仲が良い。かなりの頻度で一緒にご飯を食べたりもしている。だからもちろんシア、ルイ、俺の3人の仲も良い。だけど、女の子2人に男の子1人ということもあって俺達3人だとシアとルイの仲が一番いいと思う。
「父さん!特訓!」
「はいよ」
昨日狩猟に行った父さんは今日は休みだ。だからお昼を食べてすぐに特訓をした。俺の赤紫色の髪は昨日と同様に泥だらけになった。そして疲れきってしまい、青紫色の目を閉じて庭で昼寝をした。
こんな日々が過ぎていって、とうとう職業を授かる日になった。この教会もない小さな村では、同じ年の子供がみんな10歳になった翌年、つまり11歳の誕生日を迎える年の新年度に王都から神官を呼んで一斉に職業を授かることになっている。
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