唇紋に燃え殻
星雫々
ᴸᴵᴾ ᵀᴬᵀᴼᴼ ¹
Ⅰ ( prologue )
唇紋は、小さな針を巡らせるようにして夏を狂わせた。
規則的にまわりゆく秒針に時が溶けるよりも、
不規則な雨の落下音に耳を傾けたほうが
面白いとさえ思えるのは人間の愚かさであり、
俯瞰を夢見た主観である。
崩れる予感だけが迫り来る午後、遂に降り出した時には雲が開けていた。
涙を落としていない時には暗雲で、やがて溢れ切った水分を追い出して裂ける。
通り雨ほど明確な輪郭を帯びた世界があるだろうか。スクランブルスクエアに向かうコンクリートを埋める雨粒のはからいにより、間伐入れず白昼の闇へと化していく。
ごった返すコンビニから、滴る勇者たちが武器を手にして押し出されてきた頃、彼らは白日に照らされていた。
氷が滑りゆく不完全なスピードよりも、もっともっとメロウな夢を見るみたいに、その視線だけを結合できたらそれでいい。
欠乏感を拭えるのはたった一つの方法であり、妥協点なのだ。
その広げた羽を溶かすことが出来るのはおそらく、燃え殻みたいなその紫陽花だけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます