第84話 衝撃の事実 side光

「何・・・これ・・・」

「これが、三人の隠していた事実よ。」


 モニターを見ながらそう呟くお姉さん。

 私は、震えながらその映像を見ている。


 まるで世界が変わった様だった。

 さっきまでは普通だったのに・・・


 先程まで、私はお姉さんと二人で食事をしていた。

 銀時計の前で待ち合わせをした後、お姉さんに連れられて、高級そうな和食の店で食事を取った。

 

 申し訳無い思いもあったけれど、お姉さんに押し切られてしまったんだ。

 それで、食事を終えた後、お姉さんの部下?の車で、飲み屋なんかが沢山ある場所に連れて行って貰った。


 そして、あるビルの個室に入った。

 部屋はあまり広くないし、物も殆ど無い。

 特徴にするべきは、部屋の壁にある、100インチ位あるテレビモニターだった。


「大っきい・・・あの・・・これで何を見るんです?」


 私は、お姉さんに座るように言われ、部屋の中央に置かれている椅子に、お姉さんと隣合わせで座る。


「そうねぇ・・・あなたのお友達の秘密・・・なんてどうかしら?」

「!?それって・・・」


 嘘!?お姉さんがなんで!?

 私が驚愕していると、お姉さんは時計をちらりと見た。


「あら、もうすぐ始まるわね。イッツ、ショウタイム!!」


 そう言って、お姉さんはモニターを手で示す。

 電源が入る。

 そこには、ビルが映っていた。


 出入口に、怖そうな男の人が二人立っていた。

 そこに・・・あれって!?健流!?それに姫乃と灯里もいる!?


 黒いスーツを着込んだカッコイイ健流と、赤いドレスと水色のドレスを着た姫乃と灯里が映っていた。


 ビルに入ろうとした三人を怖そうな男の人が止めようとする。

 えっ!?

 健流が男の人を殴りつけて、そのままもう一人の顔を掴み、ビルに入っていった。


 そのまま画面が切り替わる。

 健流達三人は、凶器を持って襲ってくる人たちを、どんどん倒しながら奥に進んでいく。


 ・・・三人ともこんなに強かったんだ・・・

 というか、これが仕事なの?

 エデンって所の?

 ・・・こんな危ないことしてるの?


「・・・エデンというのはね?」


 お姉さんが話しかけてきた。 

 私は映像を見ながら、お姉さんの声に耳を傾ける。


「異能と呼ばれる、超能力や超常の力を持つ人間の集まる組織なの。そしてあの三人はそこに所属しているわ。」

「超能力・・・」

「それで、ああやって、他の組織を潰して勢力を拡大しているの。」

「・・・」

「・・・ん?あらあら、ちょっと待っててね光ちゃん。」


 お姉さんはそう言って立ち上がり、部屋の外に出た。

 でも、すぐに帰ってくる。

 なんだったんだろう?


「何かあったんですか?」

「いえ・・・ちょっとね。それよりも・・・ほら。」


 画面が切り替わる。

 5人の人と対峙する健流達が映っていた。


『てめぇらが『牙』の元構成員か・・・さっさと投降しやがれ。』


 !!

 健流の声だ!!


「ここはマイクで音声を拾っているわ。」


 お姉さんの言葉で更に意識をモニターに集中する。


『来るわよ!!』


 灯里の声と共に、相手の人たちが動き始めた。

 三人はどうも偽名を使っているみたい。

 そりゃこんな仕事なら、本名で出来ないよね・・・


 って銃!?

 嘘!?健流!!

 

 ・・・え?今当たってるよね?

 本当に・・・超能力とか・・・なの?


 健流達を含めて、凄く早く動いている。

 腕を振ると何かを切り裂いている。

 石が突然宙に現れて相手に飛んでいく。

 氷も同じ。

 なんか口から大きな声と衝撃が飛んでる?

 姫乃が・・・よくわからない力でそれを防いでいる。


 ・・・そっか・・・これなんだ・・・これが三人の絆・・・そんなの・・・そんなの、なんの力も持ってない私じゃ勝てないじゃない!!


 なんで!?なんでよ!?これじゃあ・・・健流を・・・取られちゃう・・・


 気づいたら、目から涙が流れていた。

 多分、心が全てを諦めたんだ。

 どうしようも無い理不尽に、心が押しつぶされてしまったのかもしれない。


 ふわっとした何かが私を包んだ。

 お姉さんに抱きしめられた事に気がついた。


「あらあら、可哀想な光ちゃん。心が折れちゃったのね・・・」

「おねぇ・・・さん・・・」

「好きな人を能力者に奪われ、お兄さんを異世界で殺され、あなたには何も残らない。」

「いせ・・・かい?」


 お姉さんが何を言っているのかわからない。

 異世界って・・・


「わたくしなら、あなたを救ってあげられるかも、ね?」

「どう・・・いう・・・」


 すると、お姉さんは私からスッと身を離した。

 そして次の瞬間、周囲の闇がお姉さんを包んだ。


 私はそれを呆然と見ている。

 闇が晴れるとそこには、黒いロングドレスの様な服に身を包んだお姉さんが立っていた。


「わたくしは魔女。永くを生きる魔女。全てを与え、全てを壊す存在。あなたが望むのならば、弟子にしてあげても良いわよ?」

「弟子・・・」

「そうすれば、あなたも超常の力を得る事が出来る。そうすれば、愛しいあの子の心を得ることが出来る!そうすれば・・・あなたが幸せになるのを邪魔するメス共を排除する事も出来る・・・あなたのお兄さんの仇を殺すことも・・・出来るわよ?」


 お姉さんはぞっとする様な妖艶な表情をした。

 そして、私に手を伸ばす。


「さぁ・・・光ちゃん・・・黒瀬光ちゃん?わたくしの手を取りなさい?そうすれば、あなたの願いは叶う。」


 私は・・・その手を・・・ 

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