閑話 姫乃流のわからせ
健流と姫乃は、灯里たっての希望で、昼食のラーメンを食べに行った後、灯里と別れ、お互いの部屋に帰宅する。
何故ラーメンだったのかというと、いつも訓練後に健流と姫乃が二人でラーメンを食べに行っているのを、羨ましく思っていたからだ。
旅行の荷物を置いて、すぐさま健流の部屋に入ってくる姫乃。
「・・・ん?どした?」
「いえ、別に。」
そう言って、床に座ってテレビを見ていた健流の横に座る姫乃。
「お、おい・・・なんか近くねぇ?」
「別に。普通よ。」
そういう姫乃だが、その距離は近い・・・というかゼロ距離だった。
健流は狼狽する。
「な、なぁ、あんまり付き合ってもいねぇ男女がくっつくもんじゃないと思うんだが・・・」
「別に。普通よ。」
取り付く島もない回答をする姫乃。
ここに至って、ようやく健流は、何か姫乃を怒らせた事に気がついた。
「・・・何怒ってるんだよ。」
「・・・怒ってない。」
「いや・・・怒ってんだろ?」
「怒ってないもん!」
「絶対怒ってんだろ!?俺なんかしたか!?」
姫乃が怒っている事に確信を深めた健流。
自分の何が怒らせる原因となったのか考えるも、答えは出ない。
「・・・なぁ、謝るから、俺が何したか教えてくれよ。」
「・・・」
「頼むよ。この空気、俺が耐えらんねぇ。」
すると、姫乃が拗ねた様に、
「・・・レーアさんが美人って言った。」
と呟く。
「・・・いや、美人だろ?えっ!?そんだけ!?」
健流は狼狽する。
まさかそんな事が原因だとは、夢にも思っていなかったのだ。
「だって!私や灯里気持ちを知っていながら、他の女の人をそんな風に言うのは嫌だもん!」
姫乃は頬を膨らませてそう言う。
健流は思った。
「(面倒くせぇ・・・)」
これは、世の男の大半が思うことだろう。
もっとも、実際には男女逆でも、そう思うことはうけ合いではあるのだが。
それでも、そこは姫乃に甘い健流。
なんとか懐柔を試みる。
・・・それが姫乃の奸計だと気づかずに。
「・・・まぁ悪かったよ。お前らにしてみれば良い気分じゃねぇよな・・・すまん。」
その健流の謝罪に、顔を伏せる姫乃。
「わ、悪かったよ。だから機嫌直せって!な!?」
健流は必死に姫乃に話しかける。
健流の中では、姫乃が泣くのでは無いかと焦っていた。
しかし、実際には・・・
「(かかった!)」
健流に見えない様にニヤリと笑う姫乃。
見事な演技だった。
凄まじいゲームメイク!
猫かぶりは、伊達じゃない。!
「・・・だったら、お願い聞いてくれる?」
「お、おう!もちろんだぜ!任せろ!!」
「・・・嘘じゃない?」
「当たり前だ!男に二言はない!」
「(チョロい!)それじゃあ・・・今日も一緒にお風呂入るわよ。あ、あと寝るのも一緒ね。」
「・・・は?」
健流は
姫乃の申し出は、健流の予想を遥かに越えていたのだ。
当たり前だろう。
どこの世界に、女性の方からそんな事を提案する奴がいるのかと!
注※ラブコメ界隈には結構います。
しかし、そんな健流を尻目に話は進む。
「だって・・・レーアさんの方が、私より美人だと思われたら嫌だもん・・・」
「そ、そんな事思ってねーよ!あれは一般的な意見としてだな!?」
「じゃあ・・・私って・・・可愛いかな?」
「おう!勿論だ!」
「私って・・・綺麗?」
「勿論!」
「お願い聞いてくれる?」
「おう!・・・って、は!?」
そこで姫乃は顔を上げた。
その表情はニヤニヤしていた。
「(やられた!!)」
そこで、健流は
「・・・そう。なら、お願い守ってくれるわね?勿論、男の中の男である健流が、一度決めた約束を破るとは思わないけど、大丈夫よね?」
「ぐっ・・・!!」
「大丈夫だと思うけど・・・もし、約束破ったら、悲しくて悲しくて・・・旅行であった事を、誰かクラスの子とエデンの職員に言っちゃうかも・・・」
「!?き、汚ねぇぞ!脅迫、良くない!!」
健流は焦る。
それは、まさに健流が危惧していた事なのだ。
「あら・・・大丈夫でしょ?男に二言は無い、のよね?」
「うっ・・・」
完全にチェックメイトだった。
健流は四つん這いになり項垂れた。
その逆に姫乃は輝かんばかりの笑顔を見せていたが。
こうして、健流の生活は、深夜から朝にかけての時間まで、姫乃に侵食される事になり、晴れて一日中共に過ごす事になるのであった。
一緒の入浴や、就寝は、毎日は勘弁して下さい!と。
姫乃からの妥協案は、任務の後や。週末を除く場合は認める。
但し、姫乃が希望した場合はその限りでは無い、とのものだった。
実質、一ヶ月の9割は姫乃の要望通り過ごす事になる。
毎日が理性と性欲のせめぎ合いであった。
健流の悶々とした日々は終わらない。
そして、姫乃のとどめの一言。
「あっ、手を出しても良いけど、責任は取ってね?」
合掌。
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