第79話 早朝の裏 side光(2)

「どうしたのかしら?そんなに泣いちゃって。可愛い顔が台無しよ?」


 お姉さんが話しかけてくる。

 でも、私は誰とも話したく無かった。

 

 そんな私に気遣うこと無く、お姉さんは構わず話して来る。


「良かったら相談に乗りましょうか?それに、もし、お友達と喧嘩したのなら、車で送って上げるわよ?うん、そうね。『その方が良い』わ。」


 ・・・そうしよう。

 健流達にはメールを送っておこう。

 ・・・頭がぼーっとする・・・


 私はすぐに荷物を取りに戻る。

 幸い、灯里はまだ寝ているし、昨日の内に荷造りはしてあったから、パッと着替えて、荷物を掴んで部屋を飛び出た。


「それじゃあ行きましょう。」


 表に出ると、黒く高級そうな車が駐車してあった。

 運転手は外国の男の人だった。

 このお姉さん、お金持ちなのかな・・・

 あれ?でも宿は貸し切りだったような・・・


「それで、何があったのかしら?『私に聞かせてくれる?』」


 車に乗り込むと、お姉さんが聞いてきた。

 ああ、まただ。

 またぼーっとして来た・・・

 

「・・・好きな人がいるんです。ずっと好きだった人が。今回も好きな人と友達と来たんです。友達二人も、その人の事が好きなんです・・・でも、二人と違って、私はまだ気持ちを伝えていないんです・・・でも・・・でも・・・友達が・・・好きな人と抱き合って・・・キスして・・・それに私にだけ隠し事をしてて・・・」


 ポロポロと涙が溢れてくる。

 胸がズキズキと痛む。

 それに・・・頭痛がする。

 

 お姉さんは黙って聞いてくれていた。

 そして、全てを聞いた後、お姉さんは私を見た。


「そう。それは辛かったわね。でも、酷い話ね。」

「酷い?」

「そうよ。だって、あなたと三人が一人の男の子を好き、でもその3人は『あなたに隠し事をして』仲を進めているのでしょう?『フェアじゃない』わ。」


 そう・・・なのかな・・・


「あなたの想い人は悪くないわ。『フェアじゃないのは友達二人』。」


 ・・・


「まあ、あなたのお友達の事を悪く言いたくないから、これ以上は言わないわ。それで、秘密の見当はついているのかしら?」

「・・・なんかエデンで危ない事をしてるって・・・でも、エデンが何かわからなくて・・・」


 そう私が言うと、お姉さんは真剣な表情になった。

 なんだろう?

 何か知ってるのかな?


「エデン・・・か。そうね。私は知っているわ。教えてあげても言い。でも、それを知るのは覚悟が必要よ?光ちゃんにその覚悟があるのかしら?」


 覚悟・・・ある。

 私は知りたい。

 健流達が何をやっているのかを。


「あります!教えて下さい!」

「そうね・・・でも、多分口で説明されても理解できないわ。実際に見てみないことにはね。」


 そうなんだ・・・


「だから、連絡先を交換しましょう?私が、見せてあげる。何をしているのかを。」


 お姉さんがそう言った。

 なんで・・・


「なんでそこまでしてくれるんですか?」


 私がそう尋ねると、お姉さんは微笑んで、


「だって可哀想じゃない。私は時間もあるし、あなたを助けてあげたいわ。」


 そう言って抱きしめたくれた。

 私はその優しさに涙が止まらなかった。


「ありがとう・・・ございます・・・」

「良いのよ。」


 こうして、私達はその後は楽しく話しながら自宅まで移動した。

 

 お姉さんから言われた事。

 それは、3人に気づかれないように、表面上は普通通りに接すること。

 それと、お姉さんから連絡を受けたら、最優先で対応すること。

 お姉さんと会った事は誰にも言わないこと。

 の3つだった。

 

 これが守れるかどうかで覚悟を見るって言ってた。

 だから、私は約束を守る。

 どれだけ、健流たちの仲を見るのが嫌でも絶対に。



side???


 うふふ・・・

 面白い事になって来たわね。

 

 これで滅びの獣を手に入れる布石は打ったわ。

 後は、この子猫ちゃんを・・・


 嗚呼!嗚呼!この子はどんな風になるのかしら!?

 あの子はどんな顔をするのかしら!?


 今から楽しみで仕方がない!!


 あはははははは!

 これで当面は退屈せずに済みそうね!

 

 それにもう一つ面白い事がわかったわ。

『あの方』に調べて貰ってた強大な力を持つ存在。


 その存在と、この子猫ちゃんにこんな因縁があるなんて! 

 上手く転べばそちらも排除できるかもしれないわね!

 

 あー楽しい!!

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