第49話 遺物回収(3)

「プリティガール。君を傷つけたくない。どうか武器を置いてくれないか?」


 『幻惑』のオリバーはそう灯里に話かけた。


「・・・ふーん。じゃあ、あたしが刀を置いたらどうするの?」

「勿論、君が何もしなければ、そのままもう一人のボーイの方を排除し、オーパーツを回収するだけさ。大丈夫!君を傷つけ無いようにシバには言っておくよ。安心するといい。」


 オリバーはそう言って灯里にウィンクをした。

 そして、そのまま、


「なんならうちの組織に来るかい?君のような可愛い子なら大歓迎さ!」


 そう言ってナンパを始めた。

 しかし、灯里は一切取り合わない。


「あっそう。話にならないわね。じゃあ、あたしはあんたを倒して、向こうに加勢するわ。あんたの組織?行くわけ無いでしょ。」

「・・・そうか。それは残念だ。なら、一思いに殺してあげるよ。痛い思いをさせないようにね!」


 オリバーがそう言って、ナイフを片手に突っ込んできた。


「(まぁまぁ早いけど、それだけね。速攻終わらせる!)」


 そう言って、間合いに入ったオリバーに横薙ぎを放つと、オリバーはしゃがんで躱してそ、のままナイフを突きつけてきた。


 灯里は後方に下がってナイフを躱す・・・が、


「!?」


 若干服を切られてしまった。


「(何今の!?ちゃんと躱した筈なのに!)」

「おっ?反応良いね!流石はサムライガールだ・・・ねっと!!」


 更に踏み込みナイフを横に降ってくる。


「(隙あり!)」

 

 灯里はナイフを持つ手に小手を撃つ。

 しかし、オリバーはそのまま腕を下げ、小手を躱しつつ、逆手にナイフを持ち替え、また切りつけてきた。

 当然そのまま動き、躱す灯里だが・・・


「(また切られた!?これはおかしい!)」

「うぉ!?これも躱すのか!凄いね!」


 灯里は堪らず距離を取る。

 そして、少し心を落ち着けた。


「(これは明らかにおかしい・・・あたしは間違いなくナイフの間合いの外まで離れた筈・・・とすると、これはあいつのなんらかの異能ね・・・幻惑・・・とか言ったわね。とすると・・・)」


 灯里は、目に集中して、天啓眼を発動させた。

 

「さて、どんどん行くとしよう。可愛い子を傷つける趣味はないんだけど・・・諦めてね。」


 そう言って突っ込んでくるオリバー。

 

「(また真っ直ぐ・・・いや!違う!!)」


 灯里の目には、真っ直ぐ突っ込んでくる薄く透けて見えるオリバーの姿と、若干回り込むように近づくオリバーの姿が見えた。


 灯里は、回り込むオリバーのナイフの動きに集中し、相手の動きに合わせて避けた。


 オリバーは空振ったナイフに驚き、距離を取る。


「・・・なんでわかったのかな?それとも偶然?」

「・・・さぁ?どっちかしらね?」

「・・・チッ!」


 オリバーは先程まで浮かべていたニヤついた顔から、睨みつける表情に変え、今度は複数体の幻影を作り出し、灯里に迫る。


「なるほど・・・『幻惑』・・・ね。」


 オリバーの幻影体は一斉に灯里に襲いかかるが、灯里はナイフが体に振られるのも構わず、微動だにしない。

 しかし、実体が振るうナイフにはきちんと反応して躱す。

 次第に、オリバーは焦りの表情を浮かべ始めた。


「何故だ!?何故当たらない!?」

「種が分かればしょうもない能力だったわね。にしても・・・相手が悪かったわね。私相手に幻影とは・・・ご愁傷さま。」

「くそっ!」

「メッキが剥がれて来たわよ?プレイボーイさん。そろそろ終わらせるわ。」


 灯里は、めちゃくちゃにナイフを振るって来るオリバーから一足飛びで距離を取り、そのまま終わらせるために気を練る。


「廻里流剣術 旋風!」


 複数の幻影体に構わず、一気に実体に近づく灯里。

 そのまま上段から振り下ろすナイフを躱し、横薙ぎを一閃した。


「ぐほっ!?」


 腹部に直撃したオリバーは、一撃で意識を刈り取られた。

 灯里は、そんなオリバーを見下ろし、


「本当に相手が悪かったわね。あたしの目には『幻惑』は通じないわ。・・・にしても、経験不足が如実に出たわね。これからは、最初から天啓眼を発動させておかないと・・・反省ね。」


 灯里は刀を納刀し、ため息をつく。

 すると、


「よっしゃぁぁぁ!!」 


 という叫び声が聞こえて来た。


「どうやら、健流も終わったみたいね。さて、車に戻って本部に行くとしましょうか。でも、体に大分異能が馴染んだみたいね。全体的に強化されてる感じ・・・これならあの子に勝てるかも。今度勝負ふっかけてみよっと。次に道場に行った時にしようかな。う〜!今から驚く顔が楽しみ!!」


 灯里はニコニコしながら健流の元に近づいた。

 ドライバーに確認すると、既にサポートチームには連絡済との事だったので、二人は車に乗り込み本部に出発した。


 二人は知らない。

 裏で何が起きていたのかを。


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