第三章 新たな仲間

第30話 学校での一幕

 初任務の週末を終え、健流は学校に通学する。

 疲れも残っているのか、欠伸あくびが止まらない。


 教室に付き、席に着くと、既に、黒瀬と瀬川は、健流の席の側にいた。


「おはよう、二人共。」

「おはよう!大和!」

「オッス大和!なんだ?今日はやけに眠そうだな。」

「ああ、ちょっとバイトでな。」


 健流はそう言って席に着く。

 すると、黒瀬が身を乗り出して来た。


「ねぇねぇ!大和ってどんなバイトやってるの?どこでやってるの?」

「そういや教えて貰ってないな。」


 黒瀬と瀬川は興味津々なようだ。

 一方、健流は困っていた。


「(言えねぇよなぁ・・・異能組織で戦ってる、なんて・・・どうすっかな・・・

)」


 健流が黙っていると、黒瀬が更に身を乗り出して来た。


「ねぇ!なんで黙ってるのよ!隠してないで教えてよ!」

「あ〜その・・・警備員みたいな仕事、だな。」


 少なくとも、守る仕事なのは間違いない。

 そう思って答えると、瀬川が、


「・・・高校生のバイトじゃないな。危ないんじゃないのか?」


とちょっと心配して聞いてきた。


「まぁ・・・危険が無いとは言わないけど、ちょっと伝手でやってるバイトだからな。金も良いし、体も鍛えられるいいバイトだと思うぞ。」

「なるほどな・・・」

「なんだ〜。それじゃ、遊びに行けないじゃん!」

「(危ねぇ・・・下手な所を適当に言ってたら、確認される所だったな、こりゃ。)」


 黒瀬の言葉に、健流が内心ホッとしていると、教室にざわめきが走った。

 姫乃が来たのだ。


「如月さん!おはよう!」

「如月さん!おはようございます!今日もきれいですね。」

「おはよう!如月さん!」

「皆さんおはようございます。今日もいい天気ですね。」

 

 みんな姫乃の周りに集まって、それぞれ挨拶している。

 

「(お〜お〜よくやるな〜・・・)」


 健流が、そんなクラスメイトを冷めた目で見ていると、姫乃はそれぞれの挨拶を一言二言で終わらせ、健流の席の前まで来た。


「大和くんおはようございます。」

「・・・ああ、おはよう如月。」

「今日は随分と眠そうですね。駄目ですよ?きちんと睡眠は取らないと。生活に支障をきたしますから。」

「・・・ご忠告ありがとう。(こいつ・・・誰のせいでこんな疲れてると思ってんだ!散々からがいやがった癖に!)」

「おや?いけませんよ?笑顔は大事です。ムスッとしていては、幸せが減りますよ?」

「(こんにゃろう!!)・・・ああ、笑顔が少ないのと、目つきの悪さは生まれつきでな。直したくても直せないんだ。」

「うふふ・・・そうなのですね。」


 そんな風に姫乃と健流が話していると、周りは唖然としていた。

 それもそうだろう。

 何故なら、姫乃は基本、話をしている中にいたり、聞いていることはあっても、ここまで他人と積極的に話さないのだ。


 ポカンと見ていた黒瀬はすぐに我に返り、


「ちょ、ちょっと!?」


 と、健流を止める。


「ん?どうした?」

「どうした?じゃないわよ!なんで、そんなに如月さんと仲良くなってるの!?」

「え?・・・普通じゃないか?」

「普通じゃない!」

「そうか?・・・まあ、隣の席だからな。話すこともある。なぁ?」


 そう言って、姫乃に話をふる健流。


「ええ。そうですね。いつも大和くんは面白い話をして下さるので、笑いを堪えるのが大変で・・・」

「(こいつ!また無茶苦茶言いやがって!)いや、お嬢様であらせられる如月は、俺みたいな普通の常識ある一般人の話が面白いだけじゃないのか?」


 健流が嫌味を込めてそう言うと、眉毛をピクリとさせた姫乃が、暴挙に出ようとした。


「・・・そうかも、ですね。常識知らずかもしれませんね私。そう言えば大和くんと一緒にホテ・・・」

「ああ!よく笑わせる話もしてるもんな!いや〜悪い悪い!これからは控えるよ!(何言い出しやがった!?こいつ今バラそうとしただろ!)」


 とんでもないことを口走ろうとした姫乃に、被せるように大声で発言を封殺した健流は戦慄した。

 生殺与奪権は姫乃にあるのだ。

 下手な事を言えば、即バラされる、そんな強い意思を感じる。


 「(黒瀬と瀬川に見えないように、こっそりウィンクして来やがった。間違いねぇ。)」


 ギリッと歯ぎしりして耐える健流に、姫乃は流し目をしながら、


「あら?大和くんどうしました?お顔が怖いですよ?スマイルスマイル♪」

「(こいつ・・・どの口でそんなこと言いやがる!)・・・ああ、そうだな。努力するよ。」

  

 そんな事を言う姫乃に、無理やりぎこちない笑顔を浮かべ答える健流。

 クラスメイトのほぼ全員はそんな二人に驚いていた。

 当然我慢出来ない者もいる。


「大和!やっぱり如月さんと仲良いじゃん!いつの間にそんなに仲良くなったの!?」


 黒瀬だ。

 そして、黒瀬の発言に、みんな頷いている。

 中には、嫉妬まみれの視線もある。


「だから普通だって。なぁ?」

「そうですね。気にしすぎですよ。」

「う〜〜〜!!なんか納得できない!」


 憤慨する黒瀬をなだめる健流。

 

 落ちるかせるのに時間がかかってしまうのだった。


 しかし、本当の脅威は昼に訪れた。

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