第二章 変わる日常

第11話 衝撃の引っ越し

 本日は月曜日。

 大和は現在、学校を休み、退院の為の準備中である。


「・・・まだ、少し痛みがあるな・・・」


 身体のいたる所に痛みがあるが、動けないほどではない。

 これくらいなら、引っ越しはリハビリに丁度良い。

 大和はそう考え、長であるアンジェリカの所に挨拶に行く。


「失礼します。」


 大和はそう言って、アンジェリカの部屋を訪れた。

 中には、秘書的な立場であるクリミアと、アンジェリカがいた。


「やあ、大和くん。これから帰宅かい?」

「ああ・・・じゃなくてはい、そうです。」

「ん?話し方は今まで通りで良いよ?確かに雇う側ではあるけれど、君にはそのままの話し方を許そう。わたしも、そちらの方が良いし。」

「・・・わかった。世話になったな。」

「気にしなくていいよ。それよりも、クリミア。大和くんの引っ越しはどうなっている?」

「はい、既に、実家の方からは、荷物を引き上げており、ダンボールに梱包した状態で、新しいマンションに届けてあります。」


 それを聞いて健流は驚いた。


「やってくれてたんですか?」

「ああ、君の荷物は少なかったのだな。父親に立会して貰い、全て回収させてもらった。足りないものは経費で落ちるので、遠慮なく言うと良い。支度金として、ここに20万円あるので自由に使ってくれ。」

「えっ?いいんすか?」

「勿論だ。ちなみに、間取りは2DKだ。それと、家具については、テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、掃除機、洗濯機、コンロ、エアコンは既に設置済みだ。勿論、トイレと風呂もある。それぞれ独立しているタイプだ。」

「・・・なんだか、実家よりいい暮らしができそうだなぁ。」

「申し訳無いが、携帯電話は機密情報を取り扱う事もあるので、今までの物は破棄して欲しい。エデンからスマートフォンが支給する。これを使用してくれるか?番号は、組織の人以外でも教えて貰って構わないが、組織の誰かに電話をする時は、この特殊なボタンを押してからにして欲しい。独自回線に切り替わる。かかってきた場合は、そのまま出てもらえば良い。」

「わかった。」

「それでは、マンションまで案内しよう。アンジェリカ様、少し離れます。」

「うん。お願いするよ。それじゃ、大和くん、また今度ね。」


 健流は、クリミアと共に、ビルを出た。

 移動中、クリミアが話しかけた。


「大和くん。私は、作戦を指揮する立場になると思う。これからよろしく頼む。」

「はい。よろしくっす。」

「それと、父親の親権についてはどうする?剥奪することも出来るが・・・一応、学生の間は、そのままにも出来る。」

「・・・とりあえず、そのままで良いっす。どうせ、もう会わなくても良いんすよね?」

「うむ。」

「なら、そのままで。」

「わかった。何かあれば言えばいい。こちらの法務部になんとかさせる。」

「ありがとうございます。」


 そして、マンションに着き、オートロックのエントランスからエレベーターで上に上がる。

 最上階である7階は2部屋あり、健流の部屋は702号だった。


「このマンションは、組織の運営になっており、7階を除く階はそれぞれワンルームの4部屋の作りだが、7階は2部屋しかなく、広い作りになっている。701号室には組織の人員が住んでいる。ちなみに7階に上がるには、7階の部屋のカードキーを、エレベーターのここに差し込まなければ上がれない作りになっている。」

「へ〜っ!」


 大和のテンションは上がっていた。

 男の子的に、こういうのは大好物だ。


「そうだ、住人に挨拶とかした方がいいんすかね?」

「そうだね。隣ぐらいはしておいた方が良いだろう。」

「わかりました。何から何までありがとうございました。」

「気にするな。これからは仲間だからな。そうそう、隣の部屋の住人は、3時間後位に帰宅する筈だ。挨拶はそれ以降にすると良い。」

「ありがと・・・なんで知ってるんすか?」

「何を隠そう、ここに以前住んでいたのは私だからだ。今回の君の引っ越しを受け、私は別の場所に転居したんだ。」

「マジすか!?なんかすみません!」

「気にするな。私も、幹部として、本部ビル居住になったのだ。出勤は楽になるし、アンジェリカ様のお近くで待機できるので、むしろ有り難い。」

「・・・そうすか。」


 どうやら、クリミアは、アンジェリカの側に住めるのが嬉しいようで、大和はクリミアに会って初めて、クリミアの笑顔を目撃したのだった。


 鍵はカードキーだった。

 中に入ると、かなり広く感じた。


「おおお・・・一人暮らしか!く〜っ!!テンション上がるわ!!」


 大和は浮かれたいた。

 人生初の一人暮らしというものに。


 色々な設備を確認し、取り合えすダンボール三箱の開放をして、備え付けの衣装棚やクローゼット、食器棚等に片付ける。

 掃除もしていると、あっという間に3時間が経過していた。


「ん?そろそろ時間か?・・・そうだ!挨拶用のお菓子がねぇ!急いで買いに行かねぇと!!」


 健流は出かける準備をし、玄関から表に出る。

 そして、エレベーターに乗ろうとして、待っていると、エレベーターが上に着き、ドアが開く。

 乗り込もうと前に歩きはじめ・・・


「・・・えっ!?健流!?」


 エレベーターの中には、学校帰りの姫乃がいた。


「・・・はっ!?姫乃!?おま・・・なんで・・・」

「だって私が住んでるのは701号よ!・・・まさか!?」

「・・・俺は、702号だ・・・今日から・・・」

「・・・嘘・・・」


 こうして、二人の関係は、学校では隣同士、職場も同じ、自宅も隣同士となったのだった。

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