連続夢
皆さんも、人生で何度か"夢"を見ることがあると思います。
夢とはその人の深層心理を映しているのだ、と聞いたことがあります。
例えば僕の場合、心理的に不安な時は「誰かに追いかけられる夢」などを見ます。
誰かに恋をしていたりすると、「その人に会う楽しい夢」を見たりもします。
一方で、寝る前に見聞きしていたものがそのまま夢に反映されたりもしますよね。
横になりながら映画を見ていたけど寝てしまい、夢の中ではその映画の中に居たり……、寝る前に強烈に残った記憶がそのまま夢に出てきたり。
僕の場合、「五ドル札」というワードが頭に残ったまま夢を見た時は、五ドル札が雨のように降ってくる夢を見たりしました。
さて、そんな面白い夢のお話……僕が十代の頃のお話です。
ある日に、とある夢を見ました。舞台は廃工場のような場所。
全体的に夕焼けのような色合い、錆びた金属と埃の臭いが印象的でした。
荒廃したイメージで、大きな機械たちが長い列を成しています。
頭上には金属製の点検用通路のようなものと、太い通気パイプが通っています。目に入ってくるそのどれもが錆びまくっており、どこもかしこも埃まみれ。
一筋差し込む夕日のような光には埃が反射し、一直線上だけ切り取られた渦のよう。夕方の肝試しのような情景でした。
あまり穏やかとは言えないそんな状況の中、僕は楽しそうに廃工場を歩いています。
そして、隣には"顔が認識できない友達"が居ました。
髪や背格好から、どうやら女性だということしか分かりませんが、どうも仲のいい友達らしく、場には不釣り合いなほど談笑しながら廃工場の中を歩き回るのです。
しばらく探検した後、二人で点検用通路に向かう階段を登ります。
錆びた古い金属が嫌な音を立てて軋みますが、二人してそんなことはお構いなしに進みます。
いつ足場が崩れるか分からないほどボロボロの通路を進み、一番奥まで進むと、目の前にドアがあります。
周囲の壁はひびの入った古いコンクリートで、ドアノブのついたボロいドアでした。
僕とその女性は扉の前で歩みを止め、そのドアを見つめます。
夢はここで唐突に終わりました。
さっぱり意味がわかりませんが、特に怖がりもせず、気味悪い夢を見たなぁと思ったきりでした。
おかしいと感じたのは次の日からでした。
その日見た夢は、昨日見た夢と全く同じでした。汚い廃工場、夕日の色、錆びた金属と埃の臭い。楽しそうな僕、隣りにいる顔の認識出来ない友人。
談笑しながら廃工場を探検し、点検用通路を進み、ドアの前まで歩いていく。ルートも全く同じでした。
ただ、2つだけ昨日と違う部分がありました。
1つ目は隣の友人が女性では無く、どうも男性だということ。髪の毛が短く、僕よりも背が高い、同年代ほどの印象の男性でした。
そして2つ目、昨日の夢の終わりは「ドアを見つめたまま」でしたが、その日の夢の終わりは「ドアノブに手を伸ばす」ところまでありました。
そこからしばらく同じ夢を見続けました。
汚い廃工場、夕日の色、錆びた金属と埃の臭い。楽しそうな僕、隣りにいる顔の認識出来ない友人。
談笑しながら廃工場を探検し、点検用通路を進み、ドアの前まで歩いていく。
ただ、隣りにいる友人らしき人物は毎回違う人物に変わっていきました。
夢の終わりも、「ドアノブに手をかける」「ドアノブをひねる」「ドアノブをひねり、二人で顔を見合わす」と、夢を追うごとに最後の展開が進んでいきました。
そしてついに、その最後のドアを開けるところまで夢を見ました。
その時の友人のような者は、髪の長い女性でした。
いつものように僕が手をかけ、ドアを開けるのですが、何か強い光に邪魔され、先に何があるのかわからず……というところで目が覚めました。
結局これが何を示していたのか、何故連続で見ていたのか、今でも何がなんだか分かりません。
この夢を見なくなってからも、特に何かあったかと聞かれても思い当たることはありません。
オチも無く、ただ僕が偶然にも連続で共通したような夢を見ただけのお話です。
ただ、夢を見ている時にずっと隣りにいた、顔が認識出来ない友人らしき人物。
顔が認識出来ないので感覚だけの話になりますが、夢の中では「友人」という設定なので、夢の中の僕も自然とそれを受け入れていましたが、起きて現実に戻ると、全く知らない人だと感じるのです。
ただの偶然だよ、と言われればそれまでなのですが、僕の中では不思議と気味悪さが今も残っております。
本当に、なんだったんでしょう。
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