4-【信じる力】
「転校させます。」
私は、校長室でそう啖呵を切っていた。
娘は小学校5年生から中学校3年まで、ほぼ不登校。
その間、教育関係者の方に勧められて思春期外来にも復学訓練にも通わせてみた。
だが、一向に改善は見られない。
そこで、前出の転校させますという事態になったのである。
母子家庭で仕事を掛け持ちしている私にとって遠方への送り迎えは少々大変なことだったが、普段は行かれないようなレストランに立ち寄って食事をしたり、道中車の中で話をするのが楽しかった。
なぜなら、私と遠出をする時は、娘がいつもよりもたくさん素直な気持ちを明かしてくれたからだ。
それゆえ
しかし、それ以上傍観していられる時期ではなかったのだ。
ここで決断しないと、娘は高校生活という人生で最も輝かしい時期を友人と過ごす機会を失うかもしれないのである。
私は、思い切って環境を変えることを試みることにしたのだ。
学校関係者の答えは満場一致の「ノー」
全力で転校を阻止しようと説得された。
それでも、私は引き下がらなかったのである。
世間的には、ほんの少しばかり要注意で門外不出の子どもだったかもしれない。
だが、私にとって世界一の娘である。
誰が何と言おうとも。
そう、たとえ誰が何と言おうともだ。
娘のことを見守り、彼女の気持ちを最大限に考え信じた結果だ。
『一度しかない青春時代を思い出深いものにするために高校生活を全面サポートする』
その為には転校し環境を変え、私が娘の手となり足となることが必須である。
私の決心は固かった。
私は、娘の治療に専念するため仕事を辞める決断をし、夫と離婚をした上で再び生活を共にする覚悟を決めたのだった。
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