優しい死神は海が好き。
@isonomanami
第1話 あだ名は死神。
“お前なんかいなくなればいい”
産まれてから17年間、俺はこの言葉を聞かされ続けた。
父親に、兄貴に、クラスメイトに。
俺はいわゆるいらない子だ。
味方は誰もいない。
庇ってくれる奴も、手を差し伸べてくれる奴も。
母親は俺の命を産むと同時に命を落した。
母親と駆け落ちして結婚した父親もマザコンの兄貴も俺の誕生より母親の死を嘆いた。
そして俺は恨まれ憎まれる対象になった。
物心ついた頃には名前ではなく“死神”と呼ばれた。
小学校に入ってからも特に変わらず
さらに疎まれる人数が増えた。
唯一の救いが俺は幼かったことだ。
幼くて死の怖さを知らない。
死神の意味も、後ろから指差されて笑われる不愉快さも知らなかった。
それらに恐怖を覚えたのは中学頃だ。
今思えば遅いなと思う。
しかし感情、感覚が狂ってる俺にすれば妥当だとも思う。
さらにそれらが不愉快になったのは高校。
高校ともなれば虐待も虐めも昔の可愛げはなくなり、行為はエスカレートするばかりだ。
暴言暴行。
かつあげ。
食に関するものだって。
上げ出せばきりがない。
人間、怖さを通り越せばもう不愉快になるらしい。
すべての行為に気持ち悪さを感じる。
もう助けを乞うこともなく、ただその行為が早く終われと他人事のように待つだけの毎日だった。
“金出せよ。”
学校を代表するヤンキー集団は今日も俺から金を貪り取る。
俺は大人しく財布に入っていた3000円を差し出した。
“おいおい。これっぽっちかよ。”
“足んねーよ。”
ヤンキー集団は俺の泣け無しの3000円を紙切れのようにひらひらと遊ぶ。
俺は殴られ蹴られながら3000円を見つめた。
1番強い、頭のヤンキーが転がった俺に近づく。
右手には紙切れ3枚、左手にはバット。
漫画で見るようなヤンキーだなと薄い意識の中思う。
どんなに機嫌を逆撫でしないようにしようと神経をすり減らしても、こいつらは殴ることをやめない。
こいつらにとって殴る理由はムカつくからじゃない。面白いから。
そんな理不尽な理由もこの世界では通用することを知った。
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