東の鉱山でオリハルコンを採掘する

「はぁ……はぁ……やっと着いたね。お兄ちゃん」


「ああ……やっと着いたな」


 俺達は東の鉱山に着いた。見たところ、まだ誰も手をつけていないようだ。


 高所にある鉱山に登るのは、なかなかに疲れる。だけど、その労力に見合うだけの成果を確実に得られるはずだ。いや、それ以上の成果を。


「それで、これからどうするの?」


「この鉱山を採掘する」


「どうやって? 二人で掘るの?」


 とはいえ、二人がかりだったとしても鉱山を掘るのは大変な労力だ。


「掘るには掘るが、いきなり手で掘り進めるのは効率が悪すぎる。何日もかかってしまう」


 そんなに持つ程の食料を俺は持ち合わせていなかった。物資の余裕などない。カレンも同様であろう。お互い、着の身着のままで実家を追われたのだ。


 無駄な労力は極力省かなければならない。


「お兄ちゃん、何なのそれは?」


 俺は魔道具(アーティファクト)であるマジックボムを取り出した。ボールみたいな、丸っこい魔道具(アーティファクト)だ。


「マジックボムだ。この魔道具(アーティファクト)には魔法が込められている。俺達みたいな魔法が使えない戦闘職でも疑似的に魔法が使えるんだ」


「へー……便利なのね」


 とはいえ、デメリットがいくつもあった。①まず金がかかる②魔法師のように、どんな種類の魔法でも使えるわけではない。使える魔法は限定的だ。③消耗品である事。MPに依存しない分、使ったら終わり。

 こういったデメリットはあるが、それでも使いこなせれば便利である事に間違いはない。


「よし……」


 俺はマジックボムを起動させる。そして、投げた。慌てて耳を塞いで、目を閉じる。


「耳を塞いで、目を閉じろっ!」


 俺はカレンに命じる。


「う、うんっ! わ、わかったっ! お兄ちゃん」


 次の瞬間。


 ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


 という爆発音と、強烈な爆風が発生した。


「きゃっ!」


 カレンが短い悲鳴をあげる。


 恐る恐る、俺達は目を開いた。すると、そこに人が入れる程の大穴が空いていたではないか。


「凄い、お兄ちゃん!」


「凄いのはこの魔道具(アーティファクト)だ。別に俺は何もしていない」


 俺は残るマジックボム×4を使用し、鉱山を爆破。さらに穴を深く掘り進めていく。


【所持アイテム】


 マジックボム×5→×0へ


そして、運搬用トロッコを利用し、排出された瓦礫を外に出す。俺とカレンの二人で作業をした。作業を終えた後に出来たのは立派なトンネルだった。


 予想以上に順調だった。


「よし……後は手作業で掘り進めるぞ」


「うん! お兄ちゃん!」


 俺達はトンネルを掘り進めた。


 ◇


 俺達はツルハシでトンネルを掘り進める。


「ん? ……」


 キィン! 今までとは手応えが違った。石や岩ではない。何か、もっと硬い金属のようなものにぶち当たった手応えだ。


 俺は掘り起こす。するとそこには、輝かしく光る金属が見つかった。


「お兄ちゃん、何その、すっごく綺麗な金属」


 見るからに普通の金属ではない。俺は古代書物の知識を参照する。


「間違いない……これはオリハルコンだ」


「オリハルコン?」


「鋼鉄や魔法金属(ミスリル)よりも硬い希少金属だ」


【オリハルコン】


 希少金属。その硬度は鋼鉄や魔法金属(ミスリル)よりも硬く、高質な武器や防具の原材料として知られる。通常手に入る金属の中では、最も硬質で高級なものである。希少な為、市場では高値で取引されている。


 武器や防具として重宝されているオリハルコンではあるが、今の俺達にとって重要なのは高値で取引されているという事だ。


 今の俺達には資金がない。その為に売却するのがベストだ。


「こっちにもあったよ、お兄ちゃん!」


 カレンがオリハルコンを掘り起こす。オリハルコンの塊で、トロッコは一杯になった。


「よし……これくらいだろう」


 俺達は持てるだけのオリハルコンの塊を持ち、下山する事にした。


「一杯掘れたね。お兄ちゃん」


「ああ……掘れたな」


「この金属——オリハルコンだっけ? 売るんでしょ?」


「そうだな。その予定だ」


「いくらになるんだろうね?」


「いくらになろうんだろうな。楽しみだな」


「うん!」


 カレンは子供のように無邪気な笑みを浮かべる。


 ◇


【所持アイテム】※カレンの所持分を含む。


オリハルコンの塊×10


 ◇


 オリハルコンの塊を仕入れた俺達は意気揚々と、ギネヴィアの換金所まで戻っていくのであった。



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