村長から古びた防具を貰う

「……ここか」


 俺は王国ギネヴィアの辺境にあるエルモという村だった。俺は馬車から降り立つ。


 その村には多くの村人達が生活をしていた。


 よぼよぼのお爺さんが姿を現す。


「ようこそいらっしゃいました。エルモの村へ。わしが村長であります」


 出迎えてくれたお爺さん、彼が村の村長のようだ。


「あなた様が冒険者ギルドから派遣されてきた冒険者の方ですかな?」


「はい。冒険者のアトラスと言います……」


 とはいえ、新米のFランクの冒険者にはなるが。村人たちからすれば、心もとない事であろう。


「お越し頂き、ありがとうございます。どうですかな? 立ち話もなんですし。よろしければわしの家まで来て頂ければ」


「ええ、構いません」

 

 こうして俺は村長に家まで案内される事になる。そこで今回の依頼内容を詳しく聞く事になったのだ。


 ◇


 他の家に比べれば幾分大きくて立派な家。そこでこの村の村長の家だった。


「おじいちゃん……」


 そこには一人の可憐な少女がいた。村長の孫娘であろう。俺と同じ位の年だ。俺は彼女に義妹であるカレンの事を重ねていた。カレン、あいつは元気でやっているだろうか。あの〈職業選定の儀〉以降、当然のように俺はあいつに合っていない。だからあいつが今、どうなっているのか知る由もなかった。


「この娘は孫娘のシャーロットと申します……幼き頃に両親を亡くされて、妻にも先立たれてしもうてそれで私が一人で育てています」


「男の方……冒険者の方ですか?」


 村長の孫娘――シャーロットが聞いてくる。


「そうじゃ。シャーロットや。お茶でも用意してやってくれ。今日はお客人はここに泊まっていってもらう」


 どうやら、村長の家で寝泊まりさせてもらう事になったようだ。これは嬉しい事であった。無一文の俺には泊まれる宿などそうはない。その上に、この分なら食事の方も期待できそうだ。


「そういえば、お客人、名をなんというのですか?」


「アトラスと言います……」


 名乗る時、ファミリーネームを名乗る事を避けた。アルカディア家は隣国である王国イスカンダルに仕える名家だ。隠す程の事ではないかもしれないが、いちいちつつかれるのも気持ちの良いものではない。


「それではアトラス殿。椅子に座って茶でも飲んでくだされ」


 こうして俺は村長とお茶を飲む事になった。無論、本題はそこではない。俺はゴブリンの話を聞きたかったのだ。


 ◇


 俺達は出されたお茶に口をつけつつ、ゴブリン退治の話をする事になった。冒険者ギルドからの情報だけでは詳細なところは把握できない。敵がどれくらいいるのか、どの方角から襲ってくるのか、わかる事は出来るだけ聞いておいた方がいい。


 なにせ俺は竜のいない竜騎士な上にレベルも低い。その上に装備も貧弱だ。ゴブリンは個体としては弱いとはいえ、数が揃うと厄介な相手だ。用心するに越した事はなかった。


「改めて我がエルモ村にお越し頂きありがとうございます。冒険者のアトラス殿。それで肝心のゴブリン退治の件ですが」


「ええ……わかる範囲で良いので教えて頂ければ幸いです」


「ゴブリンは基本的に夜、村人が寝静まった時に、家畜や畑を荒らして回っているんです。気づいたら被害に合っていて。奴らは足跡を残していきました。子供の足跡のような、小さな足跡です。その足跡を辿っていくと、どうやら北の方角に根城があるようなんです。どうか、アトラス殿、そのゴブリン達を追い払っては頂けないでしょうか?」


「勿論、そうするつもりです。俺はその為に冒険者ギルドから派遣されてきたんですから」


 村長の話を要約するに、重要な情報が二つあった。①ゴブリンは夜に襲ってくる事②北に根城を構えている事。

 この二つがわかった。ゴブリンと対峙する機会があるとすれば夜だろう。せっかく寝床を与えてくれるようだが、おちおち寝ている事もできそうにない。


「おお、それは実に頼もしい。ところでアトラス殿。見たところ防具を着ていないのではありませんか?」


 俺は<銅の剣>を装備しているだけだ。着の身着のままで逃げてきたのだ。まともな装備を購入するだけの余裕はなかった。


「ええ……そうですが」


「安物の防具ですが、わしが若い頃使っていた防具があります。いくらゴブリンが相手とはいえ、防具がなくては心もとないでしょう」


 そういって、村長は倉庫から防具を言っていた。お世辞にも上質な防具とは言い難い。ボロボロの防具だったが、それでも何も装備しないよりはずっと良かった。


「ありがとうございます。ありがたく頂戴します」


「ええ……是非着てみてください。サイズが合うと良いのですが」


 俺は頂いた防具を身に着けた。


 ◇


身に着けた防具のサイズは思ってた以上にピッタリだった。


「おお……よく似合いますぞ。サイズが合っていて良かったです」


 村長は喜んでいた。こうして俺は防具を手に入れたのだ。


「それでは今日はもう遅い。食事を取った後、ゆっくりと休んでいってください」


「こちらにどうぞ」

 

 シャーロットに部屋に案内される。そしてその日の夜、早速、件のゴブリンが村に襲い掛かってくるのであった。


 ◇

【アトラス・アルカディア】


天職:竜騎士


Lv :1


HP :5/10


MP :5/5


攻撃力:6


防御力:6


魔法力:1


素早さ:1


【装備】


〈銅の剣〉※攻撃力+5


〈古びた鎧〉※防御力+5


【職業固有スキル】


〈騎竜〉

〈全竜強化〉


【通常スキル】


【所持金】


 0G





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