第15話



遊園地に行く約束当日。夏樹たち四人が前日の夜にしていたグループ通話がまだ継続されており寝落ちしてしまっていたことが発覚した。


(みんなはまだ寝ているみたいだな……。)


夏樹は優しくみんなを起こして通話を切り猛ダッシュで準備を進めていた。夏樹はシャワーを浴びると軽く髪をドライヤーで髪を乾かし、化粧水、乳液を塗りパックをしてヘアアイロンを使って前髪を波打ちセンターパートにしていた。最近の夏樹のお気に入りの髪型である。普段学校に行く時は朝ギリギリまで寝ていたいこととそもそも校則的にアイロンを使えないので前髪はお下ろして行っている。


「もうあんなことを言われるのは嫌だから自分磨きは頑張らないと……。」


夏樹は誰もいない洗面台で1人呟き頬をペチペチと叩いて香水をつけ家を出た。





✳︎✳︎✳︎





待ち合わせの時間よりも早く到着した夏樹は4人分の飲み物を先に購入しておいた。他にもグミやチョコなど待ち時間に食べれるお菓子も完備している。ジェットコースター問題で怖がっていた夏樹だがなんだかんだでこの行事を誰よりも楽しみにしていたのだ。


しばらくベンチに座ってみんなを待っていた時だった。夏樹にいかにもギャルというような金髪にピアスの女子大学生らしき三人組が絡んできた。夏樹はその容姿から街で声をかけられることはよくあるため慣れてはいたがやはり嫌なものは嫌だ。


「お兄さんこんなところ1人でいても面白くないしうちらとあそぼーよ!」

「いや、僕友達を待っているのでごめんなさい。」

「え〜うっそぉ〜。そのお友達も来てないしさ! 来るまででもいいから!」

「いやもう来るので。ごめんなさい。」

そう言って夏樹は逃げた。


容姿だけなら完璧と言えるような女性だったが性格がよろしくない。それに夏樹にはすでに世界一愛しい氷緒という存在があるので万が一にもあんな容姿だけの女性に靡くことはないだろう。


それからすぐに海斗と柚華が到着し、次の電車で氷緒が到着した。全員揃ったところで夏樹は3人に飲み物を配って遊園地に入った。


「やっぱここって何回きてもこの雰囲気には圧倒されるしテンション上がるなぁ!」

いかにも陽キャラそうなことをいうのは海斗で海斗も楽しみにしていたのか髪型がいつもと違いセットされている。あまり目立たないナチュラル目のセットだが海斗の元の容姿をよく引き立てている。

ちなみに柚華は普段通り後ろでポニーテールにしておりよほど楽しいのかポニーテールがゆらゆらと揺れていた。

氷緒はというと髪は下ろしており服装も大人っぽいためかどこか妖艶さがあった。


(氷緒が可愛すぎる……。直視できない……。)

ヘタレっぷりを全開にしていた夏樹だが氷緒からの熱っぽい視線に耐えられずせめて海斗と柚華には聞かれないようにと氷緒の耳元で「服装と髪型すごい可愛い……と思う……。」と言った。本人はこれが余計に恥ずかしいことなど理解していないのだからある意味幸せ者なのかもしれない。





side氷緒





(うぎゃああああ!? なんで今日の夏樹はこんなにかっこいいの!? それより髪型似合いすぎでしょ!?

内心の発狂具合を悟られまいとなんとか無表情でいたのに……なのに! 耳元で可愛いなんて言われたら耐えられるわけないじゃんか!? 夏樹のばかああああああ!)




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