第11話
時間は経ち日曜日。氷緒と夏樹の初お買い物デート当日である。
事前に行っていた打ち合わせでは10時に駅前の噴水に集合だったのだが……
「はやくつき過ぎた……」
楽しみすぎて仕方なかった夏樹は集合時間の40分も前に到着してしまった。そのため夏樹は近くにあったベンチに腰掛け本を読むことにした。
そしてその15分後。
「あ、夏樹……寝てる……?」
こちらも早くついた様子の氷緒だが近くのベンチをみわたし夏樹がいることに気づいたようだ。
だが肝心の夏樹はすやすやと寝ており氷緒は横に腰掛けると起こさないように静かに自分の膝に寝かせた。
「ふふふ……夏樹の寝顔かわいい……」
「それに髪の毛もサラサラしてていい匂いする……」
氷緒は夏樹の頭をよしよしとなで、20分程過ごしてから夏樹を起こした。
「んあ……あれ? ひ、氷緒!?」
「わっ……いきなり飛び起きたら危ないじゃん」
「僕寝てた……?」
「うん! 私の膝の上でそれはそれは気持ち良さそうにぐっすりとね。」
「っ〜〜〜〜!」
恥ずかしいのか夏樹は顔を隠して俯いているが耳まで真っ赤なのであまり効果はなかった。
それを見た氷緒は余計にいじりたくなったのか夏樹の頭を抱き抱えると自分の胸の方へと引き寄せた。
「うわっ! ちょっ! 氷緒!? 流石に恥ずかしいから離して!」
「え〜仕方ないなぁ……じゃあそのかわり今日はずっと手を繋いでいてね!」
「わかったから!」
「よし! 言質取りましたから!」
そういって嬉しそうに夏樹の手を握る氷緒。未だ恥ずかしさが抜けないのか顔を真っ赤にしながらも幸せそうな顔をした夏樹。そんな2人のデートはようやく始まったのだ。
✳︎✳︎✳︎
「ねね! この服なんてどう?」
「お〜! めっちゃ似合ってる! あ、でもパンツはこっちの色の方が好きかな」
「ありがと! 夏樹! 私これ買ってくるね!」
2人はお買い物デートらしくまずは服屋さんにきていた。
「やっぱり夏樹はお洒落さんだね! この組み合わせ多分私1人じゃ思いつかないや」
「そんなことないよ。でも服を見るのは好きだな」
「じゃあ次は夏樹の服を見に行こうよ!」
「そうしましょうか! じゃあ氷緒が選んでくれる?」
「いいよ!」
こうして2人は夏樹御用達の服屋さんに行くことになった。
「ちょっとその前に飲み物買ってくるよ。氷緒は何がいい?」
「私ココアがいいかな」
「了解」
そして夏樹は自販機から帰ってきたのだが……
「やっぱこうなるよな……。」
そう。目の前では氷緒がナンパされていた。
「やめてください! 連れときてるんです!」
「いないじゃん! いいからこっちおいでよ」
(今回は僕が悪いよな……。)
「氷緒ごめん! これココア。あれ? お兄さんたちは氷緒の知り合いですか?」
「え? いや、彼氏いたの? それはごめんね。んじゃ」
意外にもあっさりと去ってくれたお兄さんたちに安堵して氷緒を見るとナンパされたのにも関わらず幸せそうな表情をしていた。
「なんで嬉しそうなの?」
「だって夏樹がかっこよかったから……」
「っ! それはどうも……」
この日この2人によって口から砂糖を吐いた人数は数え切れないほど多かった。
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