第1話



side氷緒ひお


プルルルル———

放課後、部活のある友人を待つために自習の用意をしていた氷緒のスマホに着信が入る。


「もしもし? どうしたの?」

相手は一緒に下校しているグループの1人、鈴野海斗だった。


電話の内容はどうやらもう1人の友達———もっと言えば氷緒が想いを寄せている男の子の篠宮夏樹が一緒に先に帰ろうと誘ってくれた。

氷緒は嬉しさのあまり食い気味に返事をしてしまった。


「どしたの氷緒ちゃん……。そんなニヤニヤして……。」

そう声をかけて来たのは氷緒と同じ7組の柚華だ。


「なっ! してないもんっ!」


氷緒は羞恥のあまり顔を真っ赤にしながら否定した。


「まぁいいけど……。どうせなつくんと帰れるとかでしょ?」

「ふにゃっ!?」


図星を指された氷緒は意味不明の声をあげて机に突っ伏した。





数分後。


「お疲れ様夏樹。寒いね。」

氷緒はなんとか回復し、嬉しさで顔がにやけないか心配しながら夏樹と会っていた。


「お疲れ氷緒さん。そうだねもうすぐクリスマスだしね。」

「もぉ。さんはいらないっていってるのに……。」

「ごめん……。でも、ちょっと癖でさ、頑張って治すから。」


氷緒は8ヶ月も一緒にいるのにいまだに呼び捨てにしてくれない夏樹に不満を覚えながらもそこがまた可愛いな……。などと考えていた。


「じゃあ帰ろっか!」

「うん!」


そうして2人は歩き始めた。



「あ、そういえば前の模試どうだった?」

「そう! 私史上最高だよ!」

よくぞ聞いてくれました! と言わんばかりに胸を張る氷緒。


「じゃあ勝負する?」

「勝てっこないじゃん……。」


この学校は学力によってクラス分けされており全10クラスのうち10組はスポーツ推薦、1〜9は一般入試で入学した生徒だ。ちなみに1組が最も学力が高く夏樹と海斗は1組、柚華と氷緒は7組だ。


「あはは……。でも僕今回国語ひどいよ?」

「え、何点……?」

「120」

「負けた……。」


おそらく模試の難易度を考えても200点満点中の120は6割なのでそこまで悪くもないと思うが夏樹にとっては悪いのだろう。

医学部志望の夏樹にとって国語は重要だ。2次試験で国語がない分共通テストでのウエイトが重くなる。


「氷緒は何が良かったの?」

「英語だけど負けてるよ。夏樹英語満点なんでしょ? 先生が言ってた……。」


氷緒の担任はコミュニケーション英語の担当のため夏樹の無双振りを知っているらしい。



そんな進学校らしい会話をしながら2人は電車に揺られていた。

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