蛇足その三 戦闘機
「空母五隻を基幹とするものが一群、他に空母四隻のグループが三群か。
わずかな期間でこれだけの戦力を揃えてくるのだから、まさに化け物じみた回復力だな」
索敵機からの報告を受けた古賀連合艦隊司令長官は改めて米国の恐ろしさを思い知る。
マーシャル沖海戦で当時の太平洋艦隊が壊滅してからまだ三年と経っていない。
それなのにもかかわらず、米軍は一七隻もの空母を擁する機動艦隊を投入してきたのだ。
それでいて、大西洋にも空母「ワスプ」や「レンジャー」、それに戦艦「ワシントン」や「ノースカロライナ」をはじめたとした有力艦を多数配備しているのだからあきれるほかない。
それでも、古賀長官は負ける気はしない。
空母の数こそ一八対一七と拮抗しているが、こちらがすべて正規空母なのに対して米艦隊はその半数以上が戦力の小さな軽空母だ。
艦上機の数は最低でも三割、場合によっては五割近くこちらが優越しているはずだ。
「ただちに第一次攻撃隊を発進させよ。同攻撃隊が発進後は速やかに第二次攻撃隊を用意、準備が出来次第こちらもすぐに出せ」
古賀長官の命令一下、三隻の「大鳳」型空母からそれぞれ四八機、六隻の「翔鶴」型空母からそれぞれ二四機、それに「赤城」と「加賀」からそれぞれ一二機の合わせて三一二機の烈風が飛行甲板を蹴って東の空へと飛び立っていく。
目的はもちろん戦闘機掃討、米軍で言うところのファイタースイープだ。
「敵編隊探知、距離一〇〇マイル。機数三〇〇! 大編隊です!」
レーダーオペレーターの半ば叫び声のような報告にも第五艦隊司令長官のミッチャー提督は慌てなかった。
一七隻の空母のうち、八隻の「エッセクス」級にはそれぞれ二四機、九隻の「インデペンデンス」級にはそれぞれ一二機のF6Fヘルキャット戦闘機がスタンバイしていたからだ。
三〇〇機ものF6Fで迎撃すれば、同数程度の敵攻撃隊を撃滅するのはさほど困難ではない。
二〇〇〇馬力級発動機を搭載するF6Fは、これまでのF4Fワイルドキャット戦闘機とは機動力も防御力も次元が違うのだ。
そして、敵の第一次攻撃隊はおそらくは零戦の新型で固めたファイタースイープ部隊だろう。
その零戦についてはタイプ64という新型が配備されたという情報が入っているが、それでもしょせんは零戦だ。
同数程度の零戦であればF6Fの敵ではない。
そのF6Fが第一次攻撃隊の零戦を蹴散らし、そして敵の本命である第二次攻撃隊の一式艦攻を墜としまくってくれるはずだ。
ミッチャー提督をはじめ誰もがそう確信していた。
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