第四話「小学生の癖に……」

なんて、綺麗な海なんだ。そう、思いながら海を見ていると

「あっちの洞窟もキレイだよ!」

そう、宝石(ジュエリー)ちゃんは、洞窟の方を指差した。

「へぇ!面白そうだね!行ってみようか!」 

「うん!こっちこっち!」

はぁ、可愛い……あ、これは決して変な意味じゃないぞ。これは、動物を可愛いって言うのと同じ意味だ。そう、自分に言い聞かせながら洞窟へと入っていった。

洞窟は先へ行けば行くほど暗く、狭くなっていった。少し足を滑らせたら怪我をしてしまうだろう。既に俺は何度も落ちかけた。

よく、こんなところで宝石ちゃんは遊んでいるなーって思っていると

「この先がすっごいんだよ!」

と、宝石ちゃんは俺に相当見てもらいたいらしくてはしゃいでいた。すると

「きゃあ!」

「危ね!」

俺は宝石ちゃんの悲鳴と同時に小さな手を掴んだ。宝石ちゃんは足を滑らしたらしい。なんとか、宝石ちゃんを怪我させずに済んだ。それにしても、その小さな手は柔らかくて、温かかった。

「お兄ちゃん!!」

宝石ちゃんはそう言って、俺に泣きながら抱きついてきた。正直心臓が止まりかけた。なんせ、俺に抱きつく人は、人生で一度もいなかったのだ。これは本格的に惚れてしまいそうだ。

「お兄ちゃん……」

「何?」

「私、お兄ちゃんに見てもらいたくて……」

きっと、普段は気をつけて歩いているのに、今回は見てもらいたいがために、注意が散漫になって、足を滑らせてしまったのだろう。

そんな、ドジなところもタイプかもしれない。俺はこんな小さな女の子に魅了されている。なんて、悲しい現実なのだろう。

「そうなんだ……あ…ありがとうね。」

途端にため口で話すのが難しくなってくる。思わず敬語で話してしまいそうだ。

「じゃ、ゆっくり行きま……行こうか…」

「うん。きおつける……」

「……」

あ、気まずいやつだ。なんで、こんな小さな子供と気まずい空気になってるんだ……

結局どうしたら良いのかわからないまま先に向かうことにした。


先程までの暗くて狭かった洞窟が一変、広くて明るい場所に出た。

「うわぁ……きれい……」

「でしょでしょ!!」

なんと、天井が宇宙に浮かぶ星のように光っているのだ。

「どうして、光っているのだろう。」

「このしまにしかないって、おばあちゃんが言ってた。」

「へぇ……」

まるで俺と宝石ちゃんが、一つになっているようだった。

しばらく、見とれていると

「お兄ちゃんは、私のこと大事にしてくれる?」

と、宝石ちゃんは言った。

急に言われたもんで

「え!?」

と、驚いてしまった。しかし、ここで大事にしませんなんてことは口が裂けても、言えるはずもないので

「大事にするよ」

そう言った。

すると、宝石ちゃんは笑顔で

「ありがとう」

そう言って先に進んでいった。

まったく、小学生の癖に……

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