20.ホーリークロスの願い

それに、あの腕輪って……ホーリークロスは何かを知っているのだろうか? 詳しく聞きたいがジャンヌは腕輪の事は内緒にしておいて欲しいと言っていた。特にデスリッチには知られたくないだろう。

 俺が質問できないでいるとデスリッチが先に口を開く。



『あの女を魔王城に置いておけとはどういうことだ? 貴様ら人間にとって重要な聖女なのだろう? 我ら魔物は人間と争う気はないのだ。無駄に喧嘩を売る気はないぞ』

「ああ、そうだね、彼女は栄えある勇者パーティーの一員であり、教会にとっての最高の癒し手だよ。そして……私の可愛い従妹でもある」

「そういやジャンヌも勇者の家系だもんな」

『ふん、忌まわしきカーマインと男を見る目の無いカレンの子孫だな……そして、貴様もまた勇者の血を引く直系か!!』

「そう、ホーリークロスとは仮の名である!! 我が本名はジョニー=カルディック!! 君たちの言う通り勇者と聖女の血を引くものであり、王国で二番目に強い人間だ」



 そう言うと同時に人差し指を天に向けて、突き出すと、やたらと派手な魔術の煙と花弁が舞う。

 無駄に派手だな。おい!! そして、同時に魔術を使いこなす器用さ、ダークエルフを圧倒していた剣技からして、王国で二番目というのは嘘ではないだろう。俺が鑑定スキルをつかおうとすると、すぐに視界から外れる素早さもある。



『それで……勇者の子孫が魔王城に何の用だ? ジャンヌがここにいたのを知っていたわけではあるまい? 観光できたなどか言っても通らんぞ』

「確かに信頼を得るためにも、そちらを話すべきかな……私の目的は二つある。一つは勇者アリシアと魔術師モナ、そして、我が血族のブラッディクロスが魔物達は人間と戦う意思がないと王に訴えてきたのでね。その言葉が真実か調査に来たのだ。それと……もう一つは懸念材料があるんだ……」



 アリシアたちは王都に久々に行くと言ってたが、王様に訴えに行ってくれていたのか……「ありがとう」と俺は心の中でお礼を言う。

 アリシア達が帰ってきたらお礼に飯でもおごろう。そう思っていると、ホーリークロスさんが少し険しい顔をして言葉を続ける。



「教会の純潔派が魔王城の付近で何かを企んでいるらしくてね、その調査にも来たのさ」

「純潔派……?」

『教会の一部の過激派どもだ。この世は人間達が治めるものと主張する連中だな。確かにやつらからすれば、魔物と人が共存している魔王城は例えるならば村の近くのゴブリンの巣だろうよ。自分達の教えを真っ向から否定するのだからな……ああ、そういう事か……ジャンヌは純潔派なのだな」



 デスリッチの言葉にホーリークロスが感心したように頷いた。デスリッチも貴族出身だからか、こういう事には詳しいのだろう。

 俺からしたら教会は傷ついた時に癒してもらう場所か、子供の頃にパンとスープをくれる場所という印象しかない。



「さすが魔王軍一の知将だ。理解が早くて助かるよ。彼女は愛読書である魔物と仲良くする物語や私達と冒険をした事もあってか、別に純潔派の思考に染まっているわけではないんだけどね……その強力な力を腕輪で制御していてね……その腕輪を管理しているのが、純潔派なのさ。そして、腕輪によって命を救われたという恩もある。それもあり、彼女は純潔派に強くは出れないだろう。だからその腕輪を壊して、彼女を純潔派から解放してほしいんだ」

「彼女の自由のために、魔王軍で保護して、俺達に腕輪を壊してほしいっていう事か……」


 

 初めてあった聖女としてのジャンヌと俺達と魔王城で騒いでいた時の彼女の顔が思い出される。どっちが幸せそうかなんて俺でもわかる。

 親族であるホーリークロスなら俺よりも彼女の本心を理解しているという事だろう。



「ああ、君達魔物の方がそういう道具には詳しいだろう? きっと現物を見れば代わりの物も作れるんじゃないかと思うんだ。もちろん金は払うし、とっておきの情報も渡そう。彼らは明日のパーティーで何かをしでかすつもりらしい。ここに集結している純潔派自体はそこまで脅威ではないが、ジャンヌが手を貸すとなったら別だ。最悪ここにいる魔物達の何割かは死ぬだろう」



 ホーリークロスの言葉に俺は眉を顰める。だって、ここはサティさんが一生懸命作った人と魔物が共存できる街なのだ。市場で種族なく商売をして、飲み屋で騒いでいた彼らの日常が壊れるのというのか。

 しかも、サティさんがあんなに楽しみにしていたパーティーを台無しにして……



「そんなの許せるはずがないだろ……」

『……』

「ああ、そうだ。これは許されざる事だ。正義でもなんでもない。ただの暴走だ。本来なら私達人間が自分たちで対処すべきなんだろうけどね……だけど、私にはその力がないんだ。デスリッチ殿がジャンヌと腕を組んでいるのをみたよ。君達は何らかの方法でジャンヌの『絶対領域』を無効化にしたのだろう? だったら腕輪だって……」

『なぜ我らがそこまでしなければいけないのだ?』



 沈黙を保っていたデスリッチが口を開く。その瞳はどこか冷たい。氷の様なこいつの目を俺は初めて見た気がする。



『貴様ら人間は変わらんな。異質なものを否定し、そのくせ困った時はその強力な力を借りようとする……純潔派がジャンヌの力を利用しようとする? 本当に嫌ならばなぜあの女は断らないのだ? 我らに害をなすならば敵だ。だったら、わざわざ腕輪を壊し、代わりの物を作るなど面倒な事はせず、ジャンヌをそのまま殺してしまえば純潔派も大人しくなるだろうよ』

「それは……頼む。それだけは勘弁してくれ。代わりに私にできることならば何でもしよう。アリシア達に私の言葉も加われば王も、魔物と人の共存を考えるより可能性が増える。私の力が脅威だというのなら、命を絶とう。だから……」



 ホーリークロスさんはデスリッチに頭を下げる。そして、その様子を見たデスリッチは苦虫を潰したような顔をしてこう言った。



『ふん……そういう所はカーマインと同じだな。反吐が出る。自分の事よりも他人の事を優先しようとする。それにカレンも救われ、惹かれたのだろうよ……だが、今回聖女を救うのは貴様ではない。我だ!! エルダースライムに話は通しておく。あいつの事だ、純潔派の動きもある程度は把握しているだろう』



 デスリッチのやつは渋い顔をしてそう言うと立ち上がって出て行った。だけど、その目はどこか懐かしがっているように見えた。こいつ最初っからジャンヌを助けるつもりだったな……あんなことを言ったのはホーリークロスさんの覚悟を確かめるつもりだったのか……それともただツンデレったのかはわからない。

 だけど、こいつが本当にジャンヌの事をただ迷惑がっているのだったら、とっくに逃げてると思うんだよな。それこそダブルデートに何て付き合う義理はないのだから。



「よかったですね、ホーリークロスさん、俺の方からもサティさんや四天王に説明をしておきますよ。サティさんとエルダースライムもジャンヌを悪いようにはしないと思います。」

「ありがとう、君は……彼らを人間と同じように信頼しているんだな……」

「そりゃあ、なんだかんだ付き合いが長いですからね。あいつらもいいやつ……いや、アリシアを騙したり、俺の中に体の一部をいれてきたり、変な宗教を作ったりろくなやつらじゃなかったな。なんで俺は信頼しているんだ?」



 俺が自分で困惑しているとホーリークロスさんがふっと笑う。



「やはり君はすごいな……四天王と一緒にいても恐れる事がない。それに……今日デートをしていたのは現魔王だろう? お似合いだったよ。そして、お互い心を許しているようだった……」

「え、そう見えます? じゃなかった、あれはティーサさんっていう魔物ですよ。だって魔王って巨乳で銀髪じゃないですか。ティーサさんは君の毛の色も違いますし、その……胸も……」



 俺はサティさんに心の中で謝りながら必死に言い訳をする。サティさんの事の正体がばれれば冒険者の受付をやっていることも気づかれてしまうかもしれない。

 だから必死に言い訳を並べるが、彼は全てを知っているとばかりに話を進める。



「ふふ、誤魔化さなくていいよ。私はルシファーをよく知っているからね。彼によく似ているからすぐにわかったよ。それを知っている上で一つ聞きたい? 君は魔王が怖くないのか? 彼女はその気になれば君何て一瞬で殺せるんだよ。それこそ、キミが怒らせたらそれこそ命の危険に晒される可能性があるんだ。なのに対等な関係なんて築けると思っているのかい?」

「え? それはありえませんよ。だって、サティさんはそんなことを絶対しませんから」



 この人は何を言っているのだろうか? サティさんは理不尽に怒ったり、力を振るったりはしない。可愛らしくて、ちょっと嫉妬深いけど、パッドな普通の女の子だ。

 俺が怪訝な顔をしていると、何がおかしいのかほーりクロスさんは笑みを浮かべる。



「私もそう思えていたら良かったんだけどね……ふふ、アリシアの心の支えになるだけのことはある。鑑定スキルを持っているから本質が見えているのかな? いや、これがキミの性質なのだろうね 。アリシアは嬉しそうに言っていたよ。勇者に目覚めても君だけはアリシアをアリシアと見てくれていたと……そんなところに、あいつや魔王殿は惹かれたのだろうね」

「いや、俺はごく普通の中堅冒険者ですよ……アリシアは幼馴染だからですし、サティさんはちょっときっかけがあっただけですよ」

「普通なもんか。相手は勇者や魔王だよ。普通なら恐怖をするか、不必要なまでに尊敬するなりしてしまうものさ。少なくとも対等な存在だとは見れないだろう。だけど、君は違う……君やアリシアを見ていると私が勇者になれなかった理由がよくわかる。可愛い姪を傷つけてしまうような臆病者はもっとも勇者に遠い存在だったとね」



 ホーリークロスは寂しそうな顔をしながらウイスキーの瓶を手に取って、大切なものであるかのように撫でる。



「一体何の話を……」

「難しい話は終わりだ。ジャンヌの事も四天王に頼めたし、君という青年を知ることもできた。アリシアから聞いているよ。君は巨乳な女の子が好きなんだろう? これは私の話に付き合い、願いを聞いてくれたお礼だ。たっぷりと楽しむといい。私もたっぷり楽しむからね」



 俺の言葉を遮ってホーリークロスさんが鈴を鳴らすと扉が空いて何人もの様々な種族の女の子が入ってくる。衣装もメイド服、バニーガール、町娘風、悪役令嬢風、聖女風、女騎士風など、衣装を着ており目の毒だ。しかもみんな巨乳で谷間を強調してやがる。

 天国の様な光景に俺は思わず感嘆の声を上げてしまう



「うおおおおおおお、これは……」

「これこそ『巨乳美少女ファンタジー王国』の裏オプション!! 『なりきりハーレムプレイ』だ!! ここでは私たちは英雄にも、王族にも何でもなれる!!」



 そんな俺を見て、満足そうにうなづいたホーリークロスさんは先ほどまでのしんみりとした空気が嘘の様に生き生きとした顔で注文をする。



「ふっ、私はエルフとダークエルフの町娘でお願いしよう!! シチュレーションは暴漢に助けられて、そのお礼にイチャイチャ!! 女の子の性格は初心系の清純派お姉さんと、ちょっとませた大人のお姉さん系で頼む!!」

「はーい!! 騎士様……私が暴漢に襲われている所を助けてくれてありがとうございました……その……とても強くて、男らしいのですね……」

「へぇー、あんた結構やるわね。お姉さんがお礼にエッチな事を色々教えてあげる♡」



 そう言うと、町娘風の衣装に身をつつんだエルフとダークエルフは、まるで本当にホーリークロスさんに、救われたかのように熱い視線を向けて駆け寄る。エルフは決して、触れることはしない。触れようとしながらも勇気がないかのように手が泳いでおり、それと対照的にダークエルフは誘うように抱き着く。

 演技力すげえな、おい!! そんな彼女達をホーリークロスさんは抱き寄せて愛を囁く。待って? ここでおっぱじめるのかよ!? 

 俺が混乱をしていると、一人の嬢がこちらの不安を取り除くように手を握りながら話しかけてくる。香水だろうか、無茶苦茶甘い匂いがしてくらくらする。



「こういうところの経験はあまりないのかな? お兄さんはどんな人が好みですか? 衣装はもちろん、聖女などの属性、ツンデレなどの性格も選べます。そして、ドッペルゲンガーである私を選んでくれたら、こんなこともできますよ」

「アンジェリーナさん!?」

「報われなかった初恋もここでなら叶う。ここは夢の世界『巨乳美少女ファンタジー王国♡』



 その言葉と共に彼女は俺の初恋の女性と瓜二つになった。俺の記憶を読んだのか? すげえよ、『巨乳美少女ファンタジー王国』!! そりゃあ、色んな人がはまるはずだわ!!

 ちなみにドッペルゲンガーとは触れた物の記憶の表層をよんで変身をする恐ろしい魔物である。本当に恐ろしいな、性的な意味で!!



「ごめんね……本当は君の想い人である魔王様に変身してあげたいんだけど……四天王や、魔王に変身するのは法律で禁止されているの。それに……尊敬すべき魔王様の格好になってエッチな事をするのは恐れ多くて……」


 

 魔王様……その一言で俺の頭が冷静に……うおおおおお、アンジェリーナさん(偽が胸を押し付けてきやがった!! 

 これはやべえって!! 俺は仕込んであるナイフに手をかけて……



「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁ、俺はサティさん一筋何だよぉぉぉ!!!」

「え? 何をやっているの? 大丈夫、痛くない?」



 自分の腿に軽く突き刺した。痛みと共に正気に戻る。その様子にドッペルゲンガーが驚いているが気にしない。

 サティさんというものがありながらこういう事をするのはダメだと思うんだよな。



「すいません、こんなところに来てなんですが、俺には想い人がいるので帰ろうと思います」

「ふぅん、面白いね、君。相手は魔王様かぁ……報われないかもだけど、頑張ってね。フラれたら私の所にきなよ。たっぷりサービスをしてあげるから」

「ありがとう!!」



 俺は彼女から名刺をもらい、急いで『巨乳美少女ファンタジー王国』を出て魔王城へと帰った。あのままいたら、決意が鈍りそうだったからだ。

 ちなみにホーリークロスさんは二人と交互に大人のキスをしていた。あの人イザベルさんとはどうなったんだろうか? まあ、どうでもいいか。



「アルトさんお帰りなさい」



 俺が猛ダッシュで魔王城に戻り、今日泊る部屋の前に着くと一人の少女が壁に寄りかかっていた。フリルのついた黒いネグリジェを着ているサティさんだ。

 プライベートな感じがして最高に可愛いな!!



「俺が帰ってくれるのを待っていてくれたんですか?」

「ちょっと寝付けなくて、寝る前に話したいなぁって思っていたんです。それに、ずいぶんと帰りが遅いなぁって心配していたんですよ。だから、エルダーから帰宅したって連絡がきたんで部屋にいけば会えるかなって思ってつい来てしまいました」



 サティさんは少し照れながら言った。そして、感謝しろとばかりに胸がガッツポーズをとる。ナイスだ、エルダースライム!! って思ったけど、なんで俺が帰ったことを知っているんだ、こいつ……

 それはさておき、ジャンヌと恋バナをしたせいか、余計サティさんを意識してしまう。



「じゃあ、部屋に入りますか。お茶とかって誰かに言えばもってきもらえるのかな?」

「いや、そのちょっとお喋りをしたかっただけなので、大丈夫ですよ。ふふふ、なんかただの客室だというのにアルトさんが寝る場所だと思うと不思議と緊張してしまいますね」


 

 そんな可愛い顔をしているサティさんだったが、俺が部屋に招き入れようとすると、怪訝な顔をする。



「どうしました?」

「いえ……ちょっと気になることが……」



 そう言うと彼女はなぜか俺の方によってきて、顔を近づける。だめですよ、サティさん。そんなに近づかれたら俺も我慢できなくなってしまう。特にさっきエッチな雰囲気の中にいたから……すこしにやけながらそんなことを思ってサティさんの顔を覗く。

 しかし、彼女の表情には一切の感情がなかった。え? どうしたの? 怖いんだけど。



「アルトさん……あの後どこにいったんですか? 女性ものの香水の匂いがするのですが……」

「そんなはずは……あ……」



 否定しようとした俺の頭に『巨乳美少女ファンタジー王国』での出来事がよぎる。あの時だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。ドッペルゲンガーにむっちゃ近づいたわ。むっちゃ甘い匂いしたわ!!

 俺がどう言い訳をしようとした時だった。ポケットから一枚の紙が飛び出していった。



 まずい!!



 すぐに回収しようとしたがサティさんの方が圧倒的に早かった。流石は魔王だ。素早しさも段違いである。二回行動とかできそう。



「ふーん『巨乳美少女ファンタジー王国』ですか……ずいぶんとこの街を楽しんでくださっているよう私としても嬉しいです」

「いや、これには深い事情が……」

「別にいいんですよ。私とアルトさんはお付き合いをしているわけじゃないですしーー。私に止める権利はないですしーーーアルトさんが巨乳好きっていうのも知ってますし―ーー」




 無茶苦茶拗ねた顔でサティさんが頬を膨らます。可愛いな……じゃなかった何とか誤解を解かなければ……

 そんなことを考える余裕はサティさんのせいで一瞬で消えた。



「でも、ちょっと悔しいのでこうしちゃいます」



 俺の体が暖かくて柔らかいものに包まれる。抱き着かれている。何を……? と聞こうとしたが、サティさんは顔を俺の胸にうずめながらささやいた。



「匂いを上書きしちゃいました……今は別にいいですけど……私は、もしも、お付き合いする人がそういうところに行くのはちょっと嫌だと思ってしまうと思います……重くてめんどくさいでしょうか?」

「いえ、そんなことないです!! 俺も彼女とかいたら絶対行かないです!! それにサティさんは重くてめんどくさくなんかないです。しっかりしていて優しくて素晴らしい女性ですよ」



 いきなりの事に俺は何を言っているんだろうと思いながらとっさに返事をする。当たり前だ。こんな可愛い彼女がいたら風俗には行っている場合ではない。



『あの……私もいるのを忘れないで欲しいのですが……ちなみにサティは誤解をしていますが、アルトさんはとある人物との密会に『巨乳美少女ファンタジー王国』に行っただけですよ。色々と楽しんでいたらこんな時間には帰ってこないでしょう」

「え……あ……じゃあ、私は勘違いしてこんな恥ずかしい事を……」

「いやあ、でも嬉しかったですよ」



 デスリッチから事情を聞いたらしきエルダースライムのおかげで誤解が解けた。そして、事情を知ったサティさんは真っ赤になった顔を手で覆う。



「ああ、もう死にたい……今日はもう帰りますね……」

「え? 何か話したいことがあったんじゃ?」

「いえその……抱き着いたらアルトさん成分を十分摂取したので満足しました。それにさっきの言葉が嬉しくて……これ以上いたら自分の部屋に戻れる気がしないので……」

「可愛すぎる……」



 俺が思わずそういうと俺と同様に顔を真っ赤にしたサティさんが駆け足で戻って行った。その夜はサティさんの顔が思い浮かんで全然寝付けなかった。

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