侵略者
四季島 佐倉
偽名《コードネーム》を持つ者
さて、どうしたものか。
私は考えていた。敵の魔の手から逃れ、どう生き延びようかと。
素早さには自信があるし、頑健といっていいほど生命力には自信がある。
我々が潜伏しているのはかなり天井の近い洞窟のような場所だ。
勿論、殆ど光は届かないが、奴らの気配はしっかり伝わってくる。
振動、音、仲間の断末魔、空気の流れ。
「大変だ!こっちは五人やられた!」
「相手の武器は?」
「拠点に毒ガスを撒かれて全滅、偵察隊も半分が命を落としたらしい」
なんてことだ。このままではここら一体の集団も皆殺しにされる。
せめて新たな命だけでも……
事態の深刻さに焦っていると、遠くから歓声が聞こえた。
「隊長!」
「どうかお救い下さい!」
なんと、隊長自らが赴くとは。
これなら、勝てずとも生き延びる活路が見い出せる!
「どうしますか?」
「相手は鈍器で打撃を与えるだけでなく、我々のような者どもを凍らせるほどの強力な冷凍光線を放つらしい」
「な、なんと!」
ここまで被害が甚大化しているのは、それの所為か。
「しかし奴らにも弱点がある」
「本当ですか!」
周囲の作戦部隊が笑い合う。
「それで……弱点とは?」
「ああ、奴らは動きが鈍い。つまり、攪乱して動きをさらに鈍くすれば、犠牲を最小限に抑えられる」
やっぱり、誰かしらは犠牲になってしまうのか。
そんな悲しみが頭を過るが、そんなのは私たち次第ではないか。
「必ず生きてここから脱出するぞ‼」
「おぉぉ!」
作戦は至って単純。密集せずに分散して、尚且つ同じ方向、速度で出口へ向けて最短ルートで走る。
子供などを優先させて、必要とあらば、私たちが囮になる。
これから死ぬかもしれないというのに、私の心は全く迷っていなかった。
そして、遂に決行の時間だ。
「進めー!」
「オー!」
続々と脱出していく彼らを護りながら、私たちも出口へと少しずつ前進する。
それでも犠牲者は出てしまったが、その彼らの分も私たちが生きなければ。
「いける、いけるぞ!」
そう油断した束の間。
上空から物凄い勢いで、叩きつけられる物体。
「えっ……」
私の隣にいた同志は、次の瞬間もういなくなっていた。
そして、彼がそれによって命を落としたことを理解したのは、それが再び上へ戻った時だった。
そして、もう一度。
「うわぁぁ!」
隊の統率が取れず、陣形が崩れている。
そこにすかさず、かの冷凍光線なるものが放たれる。
それはもう、地獄絵図だった。
「守り抜け……少しでも時間を稼ぐのだ……」
その声の主はもう既に絶命しかけている隊長だった。
すると、また皆の瞳に理性が戻った。
これはただ虐殺されているわけじゃない。種の存続の為の防衛行動だ。
私は何か戦いの意味を勘違いしていた。
何故戦うのか、それは相手を殺すためでも、略奪する為でもない。
大事なものを護るためだ。
そう思って、私は駆け出した。
そんな私たちを奴らは恐れ、こう呼んだ。
Gと。
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