第13話 君と一緒だから

 それからまた時間はあっという間に過ぎた。わたしは悩みながらも充実した、楽しい日々を過ごした。真太郎と毎日登下校して、学校でも色々なことを話したり、受験勉強を教えてあげたり…それこそ、思い出しきれないくらいに。椎崎君とも仲良くなって話せる様にもなれた。まあ、加々美さんは相変わらず気難しかったけど。

 修学旅行のプランも上手い事まとまって、後は具体的に支度をするだけになった。

 母さんと一緒に旅行向きの準備をする為に出た買い物では、本当に色々なものがあって目移りしてしまった。何しろ、ショッピングモールなんて一度も行ったことはなかったし、しかも、服だとかも自分で選んだこともなかった。

 そして、早くも旅行の前日になった。その日は午前授業で部活もなく、わたし達は早めに家に帰れた。と言っても、お互い何か用事があったわけでもないので、わたしの家に真太郎を誘った。

「はい、お腹空いてるだろうし。どうぞ」

「ありがとう…フレンチトースト?」

「そ。お腹空いた時にいつも作ってたから。折角だから君の分もね」

「本当に?嬉しいな。いただきます!」

 そう言って彼は早くもフォークを器用に使ってトーストを食べ始める。そういえば、手作りの何かを振る舞うのは初めてだったな。バニラアイスでも乗せるべきだったかな?そう思いながら、わたしも口をつける。バターの塩味と、砂糖と卵の甘さが牛乳と一緒に上手く絡み合っている。我ながら良い出来だ。

「美味しい!」

「よかった。丁寧に作った甲斐があったよ」

 二人しておやつを済ませて、お皿を片付ける。戻ってまた部屋でまったり過ごして居たら、彼が口を開いた。

「修学旅行の支度って終わった?」

「もちろん」

「すごいね。俺まだ終わってないや」

「知ってる」

 何と言っても、わたしにとっては初めての旅行だ。念入りな支度は当然のこと。今週の頭にはもう準備は終わっていて、今すぐに出発だと言われても大丈夫だ。

 まあ、君と一緒だから柄にもなく舞い上がってるのも事実だけどね…。その声を心の中に隠しながら、わたしは笑った。

「楽しみだね」

「ん?」

「旅行。君と一緒に行けるから」

「ああ、そうだね。…俺、明日のために沢山歴史勉強したから、行くところで面白い話が出来るかも」

「期待してるよ」

 そして、朝が来た。

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