ハンドメイド生命

第1話 デキちゃったね

【ホムンクルス】

ルネサンス期の錬金術師パラケルススが生成に成功したとされ、彼の死後誰も成功した者はいないという、フラスコ内でのみ生存可能な人造の小人のことである。

と書いてあった。ネットに。

そうか、パラケルススとかいう人以降、誰も作れなかったのか。

それなら俺は長い人類史上2番目のホムンクルス(？)生成に成功した者となるわけか。さっきから泣きじゃくっているこいつの存在を認めればの話なのだが。

遡る事90分ほど前、小さい頃から趣味で収集していた数々の液体を詰めた小瓶の中の一つ、精液を詰めた小瓶と血液を詰めた小瓶をそろそろ処分しようかと、ひとつの大きい瓶にまとめて流し込んだ時、ぼこぼこと沸騰し始めたように泡立ち始めた。ビジュアルとしては最悪だ。我ながらなにをしているのだろう。

「うわっ、えっ何...汚...」

正しい反応だった、行動は異常なのだが。

液体はスライム状に変化し、少しずつ少しずつ1箇所にまとまり始める。なにがおきているんだ。汚すぎる。

次第に小さな人の形をとり始めたそれは、四肢を動かす。手指もはっきりしてきた。顔も表情がわかるくらいには形になっている。ここまでにだいたい1時間経たないくらいの時間を要している。

──それは唐突に泣き出した。母から生まれ落ちた赤子のように、固く冷たい瓶の中で。