16 試乗してみよう!

 バズーカ用の防盾をライフルへ移植。

 マモルの提案を受けて赤ら顔の男はタブレットを手に取り操作し、しばらくしてからサンタモニカたちへ差し出してきた。


「坊主の案だとこんな感じか? 他の装備も合わせてみたぞ!」


 タブレットに表示されていたコアリツィアのCGは両手で防盾付きのライフルを構え、その他にも機体各所へ大小のミサイルランチャーを装備している。


「確かにライフルの盾でコックピットは守られていますね」

「脚部の小型ランチャーは短距離用のものですか?」

「おう。俺なら割り切って脚部のハードポイントにも前線支援用のミサイルを装備させるが、嬢ちゃんたちが気に食わねぇってんならしょうがねぇ!」


 画面の中のコアリツィアの6本の脚部に装備されているミサイルランチャーは軽量小型の物。

 対遠距離での使用には適さない中~近距離用の物である。


 遠距離用のミサイルはバックパック後部や肩部装甲脇に装備されており、固定武装の長砲身砲と合わせて支援砲撃を行う事ができるようだ。

 また敵機の接近を許してしまった場合にはライフルに取り付けた防盾でコックピットを守りつつライフルと脚部短距離ミサイルで敵を倒すという想定。


 これにはサンタモニカも納得して感心したような顔をしていた。


「なるほど、なるほど。これならジーナちゃんを乗せても問題なさそうでごぜぇますね……」

「ちなみにオプション一式の料金は工賃込みでこんくらいだな」

「お値段も問題なし、っと……」


 サンタモニカが不安視していたのはジーナのパイロット能力であった。

 そもそもまだ幼いジーナであるからパイロットとしての技量自体が控えめなものであったのに加えて、これまでジーナが乗ってきた機体は雷電重装型。大量のミサイルで味方を援護する事に終始してきていたために撃破を他の味方に譲る事が多くパイロットスキルが育っていないのだ。


 そんな状況で赤ら顔の男が提案してきたのは「盾で身を守りながら大量のミサイルとライフルの連射でやられる前にやる」というもの。

 肝さえ据わっていさえすれば技量の求められる事ではない。


 そういう意味においてこの提案は非常に魅力的なものであったのだ。


「ジーナちゃんはどうでごぜぇます?」

「いやぁ、雇い主がランク4の機体に乗っているのに自分だけランク6の機体ってのはちょっと気後れしちゃうっていうか……」

「おいおい! ここまできてそりゃねぇぜ!? とりあえず試乗してみてきてくれよ! ウチの多脚型にも良いとこあるから! 乗ってみれば分かるから!!」


 自身の担当プレイヤーと兄よりも格上の機体を与えられるという事もそうだが、ミサイルランチャーなどを含めたオプション装備の金額に当のジーナは尻込みしていた。


 だが、プレイヤーであるサンタモニカはすでに乗り気。ウライコフのセールスマンの後押しもありそのまま2人は試乗する事となる。


「姉ちゃんもコアリツィアに乗ってみるかい?」

「いえ。そもそも交換チケットは1枚しかありませんし、自分の紫電改も持ってきてるんで連携の確認もしてみたいので私はそちらに」

「オーケー。そんなら今から手配しとくぜ。で、坊主は?」


 赤ら顔の男はタブレットの画面を切り替えて試乗会用の待機所と持ち込みの機体を補完しているガレージに連絡を取って演習用の装備を手配する。


 ミサイルはすべて演習用の弾頭を、ライフルには演習用のペイント弾の他に実弾射撃訓練のため実弾の弾倉も少し。

 さすがにコアリツィアの目玉とも言える主砲は大口径故にペイント弾でも命中した際に被害が出るだろうという事で代わりにレーザー測定器を取り付け。


 この測定器はレーザー測距器と弾道コンピューターを組み合わせたもので実際に砲を撃たなくともトリガーを引いた時の照準で目標に命中するかどうかを判定してくれるものだ。


 手筈はすぐに整い、ふと男がマモルへ声をかけると少年は渋い顔をしてみせる。


「そういえばライオネスさんは竜波のところでごぜぇますか? それならマモル君は私たちと模擬戦にでも行ってみませんこと?」

「んん……。あのトンチキに付き合うのもなんなんでそうさせてもらいます。おじさん、傭兵ライオネスのニムロッド・カスタムも演習用装備をお願いします」

「あいよ!!」


 これが戦場であれば担当プレイヤーであるライオネスを置いてマモルがニムロッドに乗っていく事などありえなかったであろう。


 プレイヤーが主で補助AIが従という原則からいってもそうであるし、生来の臆病者という気質からいってもマモルが1人で機体に乗り込むなどありえない事だ。


 だが演習ともなれば話は別だ。しかも演習とはいえ軍隊がやるような堅苦しいものではなく半ばレクリエーションのようなもの。


 ライフル弾やミサイルが命中したとして機体が塗料で汚れるだけの危険の無いものであるし、勝手に機体を借りていったとしても彼の担当であるライオネスも竜波に御執心であったのだからその内に機体をレンタルしてやってくるかもしれないという気楽さが彼を後押しした。

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