12 新PV「蒼穹の覇者」
(前書き)
第2.5章 「41 進め! サブリナ探検隊!!」の一部を修正しました。
(修正前)☆カーチャ隊長が称号「聖域の守護者」を取得した!
(修正後)☆カーチャ隊長が称号「聖域の守護者」「蒼穹の覇者」を取得した!
それでは本編をどうぞ!
焼肉店での食事を終えた私とマモル君はガレージへと戻ってきていた。
現実世界では姉の就職祝いや私の高校入学祝いなど数回しか行った事がないような高級焼肉店で自分の財布を気にせず好きなだけ食えるということや、トミー君やマモル君たちの食欲に乗せられて付き合ってしまったことで私のお腹ははちきれんばかり。
あまり言いたい事ではないが、胸よりも腹の方が出てるのではないかというくらいでとても次の依頼に行こうという雰囲気ではない。
中山さんはアセンブリを検討するというし、ガレージに戻ってきたマモル君は目を瞬かせて船を漕いでいるという有様。
クレジットを稼がなければならないのは変わらないが、私も鬼ではない。
私がしばらく寝たらどうかと促すとマモル君はコクリと頷いて事務所内のソファーで横になる。
毛布やら枕やらも持ち出しているところをみるにちょっと仮眠をというよりもガチ寝の構え。
マモル君が横になってすぐに可愛らしい寝息が聞こえてきたので私はプレミアムアカウント特典の動画配信サービスで映画を観てみる事にした。
現実世界で同じ映画を観るのに比べ、ゲーム世界の中でならば所要時間は10分の1。
時間的にも気軽に娯楽を楽しめるというのは便利な世の中になったと思う。
冷蔵庫の中から500mlペットのコーラを取り出して、寝息を立てている子供を起こさないようにワイヤレス・イヤホンを耳にかけて私はデスクトップPCに向き合い、お気に入りの映画シリーズの最新作をストリーミング再生させる。
………………
…………
……
「……あからさまに前作に比べて金がかかってなかったわね」
私は温くなっていたコーラを飲み干して動画を閉じる。
映画はまあそれなりには楽しめたが期待ほどではなかった。
前作から明らかなスケールダウン。
映画館で正規料金払っていたならガッカリというレベルだが、無料で見れたのなら良しといった程度。
1日の締めとしての満足感を求めていた映画は肩透かしに終わり、私はパソコンでブラブラとブックマークしていたサイトを見始めていた。
「……ええと、サムソン系のランク6機『セントリー』の本領発揮はキッキリ強化してから?」
そして結局、辿り着いたのは「鉄騎戦線ジャッカル」の攻略WIKI。
やはり私が気になっているのはニムロッドの次の機体をどうするかという事。
私が現在、所有しているニムロッドはサムソン系の機動性特化寄りのバランスタイプ。
サムソン系のバランスタイプには2系統あって、1つはニムロッドのような機動性寄りの性能を持つ系統と、オライオンのような装甲防御寄りの系統だ。
私の戦闘スタイルとしてはやはり動きが鈍い機体よりかは素早く動ける方が良いと思う。
そしてサムソン製機動性特化寄りのバランスタイプのランク5は「ジャギュア」。
トクシカさんとこの私兵部隊が乗っていた機種であるが、その部隊があっという間に全滅していた事もあってか私の中ではジャギュアはやられ役のイメージが強い。
まあ、見てくれはけっこう恰好が良いのだが。
それにランク5の機体を購入したとて、ニムロッド・カスタムがランク4.5である事を考えると大幅な向上はみられないであろうという理由であまり食指は動かないのだ。
ならばランク6の「セントリー」はどうかというと、こちらはどうもWIKIによると強化すれば強くなるが、それまでは苦行という機体らしい。
設定上、ランク7の「センチュリオン」のモンキーモデルという事でそういう味付けの機体にされているらしいのだが、ランク6の機体にそこまでリソースを投入してもいいのだろうかという不安がある。
対してセントリーの対抗馬である装甲防御寄りのバランス機は「ジャギュアE型」。ランク5のジャギュアに小改良を加えた上で装甲を盛った機体であるらしい。
元のジャギュアの性能もあってか装甲を盛られた上でも機動力の低下は抑えられているらしいが、それでも重量が増している事は否定できない。
つい先ほどのマサムネさんとの戦闘でサムソン製とトヨトミ製の重量差からくる出足の加速を突かれて交戦距離のイニシアチブを取られた経験が頭をよぎってこちらにしようとは思えない。
まあ、現時点だとランク6の機体を購入するための資金は半分も貯まっていないのだからまだ考える時間はあるさとトップページに戻ると公式の最新情報に更新があった。
「……ん? 新PV公開?」
現実世界だとすでに午後の8時を回っている時間。
このような時間に新しいPVが公開されるとは、運営もウチの姉さんみたいに遊んでいる人間だけではないようだ。
ていうか、そもそも虎姉は遊んでて大丈夫だったのか? と姉の将来を心配しながらもリンクをクリックすると動画投稿サイトのページが開いて動画が再生され始める。
まず映し出されたのは砂漠、荒野、草原といった様々な戦場で戦う雑多なHuMoたち。
ジーナちゃんの雷電重装型に似た履帯式の機体が一列に並んで肩に背負った巨砲を斉射する砲兵代わりの部隊や、険しい岩山で戦う昆虫のような脚を持つ四脚型機の部隊。
雪原をホバー装甲で駆けていく機体群。スラスターで巻き上げられた雪が地吹雪のようになって美しい。
「うん? 何を見ているんですか?」
いつの間にか起きてきていたマモル君が私の傍らにまで来てディスプレーを覗き込んできていた。
「ああ、おはよう。新しいPVが公開されてたから見てたのよ」
2時間ほど寝ていたマモル君はまだ気怠そうな様子ではあったが大きく背伸びしてから再びディスプレーを見つめる。
「あっ、これ、マンガ版に出てくるキャラの愛機ですよ!!」
「ん~? この蜂のエンブレムの機体?」
「はい!」
再び場面転換があって今度は夜戦か?
夜空の草原で戦うHuMoたちの1機の姿を見てマモル君が色めき立つ。
そのトヨトミ系らしき小型の機体は黒系統で塗られて大型の直刀を持つその姿はまるで忍者のよう。
そしてその肩にはスズメバチを模したエンブレムが描かれていた。
どうやらその機体はマモル君がいつも読んでいるコロンコロンコミックスで連載しているマンガに出てくる機体らしく、いわゆるファンサービスなのだろうか?
さらに場面転換。
「ああ、もっと見てたかったのに!」
「ま、公式のPVに出て来たって事はマンガ版のキャラとか機体もゲーム本編に関わってくるって事じゃない?」
ぶうたれる少年を宥めながら続きを見ていると、映し出されているのはHuMoではなく戦車の大部隊であった。
だが、荒野を進む戦車の大部隊は空から降り注ぐ爆弾の雨によって瞬く間に吹き飛ばされていき壊滅状態に。
カメラが上空へと向かうと双月の部隊が地上の戦車隊へと爆弾を投下しているところであった。
だが、その双月の部隊も最初の1機が不意に大爆発を起こしたかと思うと次々に撃破されていく。
その大空に咲いた爆発の花から現れたのは翼端から白い飛行機雲を引いて飛ぶ戦闘機部隊であった。
「は? 仮にもHuMoである双月がなんで戦闘機にやられてんのよ?」
「いや、アレもHuMoですよ。戦闘機じゃなくて空戦用HuMo『飛燕』です」
「うん? あ、胴体に足付いてる!」
よく見るとその戦闘機だと思った機体の胴体下には折り畳まれた2本の脚があり、戦闘機ならばガラス張りのキャノピーがある場所にも装甲が張られて小さなカメラアイがあるのみ。
そしてまた再び場面転換があるも、映し出されていたのは再び戦闘機に似たHuMo飛燕であった。
機体後部のスラスターを全開にして、主翼や尾翼の稼働部位を使って大気を切り裂いて飛ぶ飛燕は曲芸飛行のように旋回や急上昇、急降下を繰り返して見えない敵へと攻撃を仕掛ける。
だが、敵の爆発や被弾の音は聞こえず、飛燕の攻撃が続いているという事は倒せていないという事か?
「ん~? 何と戦っているんだろ?」
飛燕はすでに先ほどの攻撃でミサイルは撃ち切り、機体上面のターレットに取り付けられている小口径機関砲と機体下面の固定しき大口径機関砲の2種の砲で果敢に戦うが、そもそも姿すら捕らえられないような敵を相手にどう倒すというのだろうか?
それに動画の流れとして考えるならば、先ほどは荒野を進む戦車隊が上空の双月の部隊に撃破され、その双月の部隊が飛燕に撃破されてきたのだ。
ならば次はこの飛燕が撃破されるというのは道理だろう。
私の疑問と期待が最大限に高まった頃、飛燕が戦っている相手がついに姿を現した。
白い雲から飛び出してきたのは雲よりも白く、そして陽光を浴びて七色に光を反射する美しい機体。
その機体を見た時、私は言葉を失ってしまっていた。
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