油断大敵 本末転倒はだめ

 「お邪魔します~」

「お!よく来たね~どう?俺の部屋」

「んー。渋いね」


 3人でビールをいただくことに。私はかなりちびちび飲むためビールもぬるくなり不味いのでした。

「しかしさっきのは感じ悪かったよなぁ」

得意気に義理母とのやり取りを蒸し返す兄に私はストップをかけました。


 すると既に3缶目を飲み終えた兄が

「今日はお前ら泊まって行けよ」

お前ら?

「いいかげんさ。悟!綾もってけよ。グズグズしてたらおばあちゃんになっちゃうぞ」

お兄様......もはやストップかけられないのでした。

「綾は人妻でしょ。一応」

「悟さんまで、一応って....」

悟さんは笑います。私は笑えません。


「俺はさ陰ながら悟押してたんだぜ〜。でもさ昔の純粋な綾は一直線だったもんなぁ。いや、あれは陽介くんが縛って繋いでだからかもな。綾を。」

そうですね。唯一私のたらしを止めたのは般若でしたから。ある意味大した殿方です。


「なんで悟、結婚前に奪わねんだよ」


「基樹さん酔ってんじゃない?」

悟さんからすれば耳が痛い話かもしれません。


「俺は、綾が幸せならそれで良かった。無理矢理壊して奪ったって綾を不幸にするだけ。そんな感じかな。」


「まったー!カッコつけて」


「じゃあさ!幸せじゃなかったら?今」


「もうっお兄ちゃん私を不幸な女みたいに言わないで」


「えっ?違うの?」


「失礼ね。私にはカイがいるし。こんなに素敵なお兄ちゃんに悟さんもいる....だから」


「すー すー う すー」

「お兄ちゃん!お兄ちゃん?」

「あっ寝てた。お前らそこに布団敷いたから寝ろ」

そう言って自分の部屋に入り眠る兄。

私はさすがに帰ろうかな.....あ、駄目だ義理母が。じゃ実家へ。こんな時間に迷惑だろなぁ。

んー。

「俺帰るよ」

悟さんが帰ると言います。いつも悟さんは紳士ね....表向きは。


 立ち上がった悟さんがまさかのフラフラで私を引っばったままソファにコケる。

え?いつの間に酔ったの??

酔っぱらっても、顔にも態度にも出ない悟さんはかなりの量を飲んだのかしら。


 私は掴まれた手をそっと離そうとした。

でもグイッと引っ張られ悟さんに乗ってしまう。

うっすらと目を開けた悟さんはメガネを外し私を見てる。寝てはいない.....はず。

離れるにも彼の上になんて乗ったことがなかった私は一時停止中。


 いたずらに、キスをしてみた。

パッと目を開けた悟さん。メガネが無いと、いつもより目がひと回り大きくなってインテリから知的なイケメンにみえてきた。


くるりと私を下にして、キスをする。私はソファの壁と悟さんの左肘で真っ直ぐ上を向いたまま。

今まではしてこなかったほどの濃厚なキス....。

でもここは兄の家。

私はチュッとするだけのつもりだったのに.....。

また来ました。悟さんの足攻撃。私の太ももにからめて。私が弱いやつ.....。

こうやって私の理性を刺激するのね。きっと酔ってるからいつもより......。

でも悟さんはなんとか紳士でした。

私が顔に熱を持ち、目を逸らすしかなくなると止まった。


「俺ね、......全力で奪いに行くことにしたから」

その言葉だけ残し悟さんは眠りました。きっと兄の影響です。


 私は兄が用意していた布団で半分寝て半分起きていたような感覚で朝を迎えた。悟さんがソファで寝ているうちに私は家へと戻った。そしてちゃんとしてる嫁みたいに朝ごはんを用意しているとカイが起きてきたの、いつもより早く。


「カイ!おはよう」

「まま!どこにいたの?おばあちゃん、いたからままのベッドなかったんだね。かわいそうなまま」

カイ.....カイには、ぱぱとままと一緒に寝るなんて事がない。だから私が居なかったのも理解出来たような物言い。わずか4歳が....。

「ままはお兄ちゃんちにいたよ」

「そっか!おなかすいた〜」


「おはようございます。朝ごはん出来てますよ」

「要らないわ。途中で食べるから。カイ君またね〜。おばあちゃんちにもくるのよ。もう、ままが居なくたって寝れるものね〜」

「俺もいらない じゃあな」

般若親子は去りました。


「カイ おばあちゃんち行くの?また、ぱぱと遊びに行ったら?」

「ままもいっしょがいい〜」

嫌です。ままは.....ごめんね。カイ......。


 カイを幼稚園へ送りたまった給与計算や書類やらを片付けます。はぁ、私はいったいこのシェアホームで何がしたいのやら。悟さんと兄の参戦で、本来の目的を見失いつつあります。


そんなことを考えていた矢先に般若から

『今日カイは綾の実家に預けられるか?ちょっと話がある』


え.....背筋が凍りました。

なんでしょうか。

後ろめたさがあるが故に強気で般若討伐出来ない自分に腹が立ちます。

後ろめたさがあるが故に般若を恐れる自分が馬鹿な女に思えます。

私は馬鹿なのかもしれません。

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