月とすっぽん 般若と...
シェアホームの共有リビングが居心地悪くなり皆が避けるのだけが私の心配でした。ところが皆さんここ最近よくリビングにいますの。
各家より居心地が良いらしいわね。それもそれで心配ですが.....。
今晩は適当に居る人で晩ごはんを共にするの。
かずぴは私とキッチンでこんな話をしています。
「綾はどう?この家ならこのまま暮らせそう?」
「どうかな。そう願うけど、まだまだ仮面夫婦の仮面取れてないから、外さなきゃ」
「仮面ね。うちも、結局は仮面よね。だってさぁホントは首根っこ掴んでこの浮気野郎!って言いたいもん。」
「私も般若野郎!って言いたいわ。意味不明だけどね」
ある意味、浮気野郎が羨ましい。般若が堂々と浮気でもしてくれたら話が早いのに....。
適当に料理を並べ取皿と箸を置き、私達は子供達を呼んで「いただきます」
と、すぐに始まりました般若の般若化です。
「綾 しょうゆ」
「七味ある?下から持ってきて」
般若は調子に乗ります。いつもなら無視されて自分で取りますが皆がいるから私が良き妻を演じるはずだと。
「自分でとって来て」
「......」
「......」
「.....食わしてもらっといてその態度か」
「この数カ月だけでしょ。やっと」
口答えを滅多にしない私がした事で般若はキレます。
カイにきこえても困る、皆の空気悪くしても困る。
私は下には行かず、キッチンへ行きしょうゆでは無く、子供用のスプーンを取ります。
振り向けば般若がいました。
私は近くに般若が来るだけで寒気がします。
「なんだよっ......しょうゆ!」
「やめてよね。みんなビックリするじゃない。」
「は?おまえがとれや」
私はどぎつい目で般若を見ます。見たくない顔を......。
「なんだよその目は」
般若はそう言って私のスプーンを握った手首を強く掴みあげました。
キッチンの後ろで悟さんが書類を落としました.....いつからいたのやら。
「おいっ陽介。どうしたんだよ」
その声に般若は
「お、悟。飲みに行くぞ。気分悪いわ」
「行かない」
悟さんは書類を拾い、皆のテーブルへ。
般若はひとり、出ていきました。般若は勢いあるものの、打たれ弱いのです。
自分は褒められて伸びるタイプだといつも般若は言っていました。
誰もあなたを褒めませんね。だから伸び悩んだ結果でしょうか。
私達は何も無かったかのように食事をし、子供達を寝かします。
「大変だね。綾さんとこ」
かずぴの旦那様ともゆきさんが顔を歪めて愛想笑いし言いました。
「あまり普段は言い合わないようにしてるんだけど。」
「数カ月だけ、養ってるってどういうこと?」
「あぁ夫が自由だから。子供産まれたら仕事辞めて無職になって、それからは私が。で最近やっと夫に収入があって......」
その他諸々色々あるけれどそれとなくだけ言いました。
「マジで。それは大変だったね.....」
「綾、今日陽介酔っぱらいで帰って来て大丈夫か?」
悟さん.....大丈夫じゃなかったらどうしたら良いかしら。
「大丈夫。寝室別だし。あっ今度うちの寝室にカギ付けて欲しいな」
私の言葉にみんな目を丸くした。あぁ、そりゃ異常ですよね。家庭内で寝室にカギって普通はつけません。
般若は酔ったら、部屋をよく間違える。私はそれが恐怖でした。だからいつも踏めば音がなるものか、ドアの前にゴミ箱を置いて般若が部屋に近づけば分かるようにしています。
かすかな音でも私は飛び起きるのでした。
かずぴ夫婦が下へ戻ったあと、悟さんが眠ったカイを抱っこして下まで運んでくれます。
カイをベッドに寝かせ、カイの髪を撫でおでこを出し
「可愛いなぁ」
とつぶやくのでした。
あなたがパパだったらよかったのに。
「おやすみ。綾」
悟さんは私にも髪を撫で
「可愛いなぁ」
とため息交じりにいうのでした。
「帰るの?」
「いや後少ししてから。」
悟さんはアトリエへ、彼は実はかなり忙しいよう。時々徹夜するくらい。
事務所は夜21時にビルが閉まる。自宅はあるけれど最近はすっかりアトリエがほんとにアトリエ化している。
―――夜中の2時過ぎ、般若の音で目が覚めた。
ドタンバタン、ドアを開け締めする音が全く気をつかっていない乱暴な音。
こちらの部屋に来ないことを祈りながら私はまた眠ったのでした。
翌朝、私のスマホが鳴り響きます。
「もしもしっ綾ー!今晩行くから新居。週末実家行くけど2泊はよろしくな~」
「えっ今晩?帰ってきたの?」
「今空港ついたよ」
はぁ.....兄でした。私のお兄ちゃんです。なかなか言いたい事言うタイプなので般若の話はほとんど言ってません。母がポロッと言ってなければ。
兄は父の商社系の会社で、海外を行ったり来たり今は東南アジアに支社を作り体制を整えているとか。我が兄ながら仕事はできます。
国際結婚した後、バツイチ子なし、般若と同い年でございます。破天荒なところは似ているかも.....。
私は仕事を片付け、ジュリーに兄が襲来すると連絡を入れました。
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