類は友を呼べるか

 私には友達があまりいなかったのです。なんせ男ったらしでしたから。今はカイのおかげで同じマンションや幼稚園の友達が出来ました。

毎月一度は決まって子供を旦那に預け女子会を開くの。うちの店で。

般若は面倒くさそうに「ババ会か」失礼極まりないっ。


 うちの店はバー。どちらかというと女性向け。白いイタリア風の壁にベトナムやバリから取り寄せたラタン家具を使い、開放的なテラス席も。約30席のリゾートバーみたいな雰囲気。


 バーテンダーは、オープンから変わらずのジュリー。

日本人離れした顔と金髪で、母がジュリーと名付けたあだ名だけど。

ジュリーも今年で30歳。彼に会いに来る女性客も少なくない。ウェイターのたっくんは最近入ったの。

たっくんは、元々ここのお客さん。たっくんもアラサーよ。

そう、ピチピチし過ぎない、リゾートチックなバーは大人女子?なお客さんが集まりやすいのです。


 今日のババ会じゃなくて、女子会は

あこ・・・初めてあった日に、子供が成人したら離婚する宣言したひと。

かずぴ・・・・年下旦那に浮気されまくりの悲しいひと。

ゆり・・・おおらか美人 家庭内別居状態らしい。

みのり・・・明るい母さんキャラ 夫婦円満


私の5人。そう私が目をつけているシェアホームの入居者候補。


 「あぁーうまいっ。酒がうまい!!」ビール片手に幸せそうなみのり。

「ねっ綾が言ってる集合ハウスみたいなの、説明して!」

あこが食い付いてくれているの。

「うん。うちね、マイホーム建てたがってて...」

「般若が?」

「うん。家建ったらますます閉塞的でしょ。奥様奥様みたいで」私はいつしか奥様になりたくなかったよう。


「家建ったら、はいさいならって出られなくなるしね〜」


「だから、どうせ建てて暮らすなら。夫婦関係つらい家族で集まって生活しようと。私からすれば夢の家。どんな日にもすぐ近くに友が居て、困ったときはお互い様。休日は夫と顔合わせなくてもみんなでバーベキューしたり。

もちろん。みのりみたいに夫婦関係はオッケーみたいなのもウェルカムよ。みんなで遊べるしね。子供も。」


「私にはすんごい魅力的ーっ。でもさ費用がね」

「費用は、うちが建てるからあくまで賃貸契約でいいわ。」

「えー!??」貴婦人方の目が変わった....チャンスね!

「俺も住みたいな〜そこ」

ジュリーがふざけて入ってきます。


 私達は全員一致で大賛成。あとは夫達をいかに巻き込むか.....。それぞれ家に持ち帰りました。


 肝心の提案者の私は、具体的な完成イメージと費用の確認にとある建築デザイン会社を訪ねます。


「綾 ほんとにこんなデカイもの建てるの?」

「うん。多分ね。あっごめん、多分でここまでしてもらって。」

「いや、いいよ。綾のお願いなら何でも。」

このとびきり優しい人は、安藤あんどう さとるさん。般若の友人なの昔からの。



 あれは友達の結婚式に出る為

般若と悟さん、私は山口県宇部うべまで新幹線で行った。

20代のまだ独身時代に。

この日の為に二人は昭和女性アイドルの振付も歌もマスターした。

私は二人をメイクしたの。完全にお笑い女装ダンスの出し物をやり切った二人。

般若が顔を洗いに行き、私が残る悟さんのメイクを丁寧に落としていく、目をきゅっと閉めて可愛い顔をしてたなぁ。そんな悟さんの唇まで拭ききった頃、夢中でコットンを動かしていた私は、ふいに私を見つめて今にもキスしてきそうな悟さんにびっくりしたわ。

まさか、友達の彼女を....って。


 その夜、般若は二次会でベロベロその辺の女性と話が盛り上がっていた。私は面白くなかったから歌を歌えと言われ、断らずカラオケステージにも立った。

悟さんはずっと私を気にかけて、けっこう酔っ払った私は悟さんが先に宿泊先のホテルに送ってくれることに。

途中で気分が悪くなった私は、花壇らしき塀の横に座り込んだの。

私の前で同じようにしゃがむ悟さん。私の顔を両手でピタッと挟んでしちゃったの。チューを。

遠くから般若が叫んでた。

「綾〜悟〜 どこー?」

私達は、花壇から飛び出した。


 それだけ。それ以降は優しい友達なの。




 悟さんは、パソコンに入っているラフ図やパースを見せてくれる。筒状の建物。

1から2階が住居部分。独立した玄関が5つ。3階はみんなで共有のキッチンリビング

屋上はバーベキュースペース。

「そうそう!リビング共有じゃなきゃ意味がないもんね。ありがとう!」

私は悟さんに話すときは昔の私に戻れるの。あっ昔といっても、男たらしの頃の私ではなくってよ。

まだ般若が般若と知らぬ頃の私。


「俺も住みたいな。綾の夢の家。仲いい家族達のシェアホーム。いいね。綾らしい。

俺も結婚して入居したいよ」

夢の家.....ではないわ。強いて言うならば、裁きの家。

悟さんは、私の中に潜む鬼には全く気づいていない綺麗な目をしてた。

ごめんね。こんな家考えさせて....。

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