第8話 優勝宣言までの話
俺達はヒュミドールから貰った杖を使って日夜訓練に明け暮れていた。
やはり杖とというのはかなり重要で、みんな自分に合った杖を使い出してから上達スピードが目に見えて向上している。
魔力効率化に関しては魔力云々よりまず、理解しなければならない事が多いのでグンッと伸びている感じはしないが、スキルや今まで使っていた魔力効率化してない方の術式の練度はかなり上がってきた。
みんなの顔つきももうあの頃の弱いロゼッタではない。
他の冒険者が街でどんちゃん騒ぎしているような時間でも俺達は寝る間も惜しんで鍛錬を続けた。
「私達は本気で冒険者やってるの!本気で夢を叶えたいの!いつかアンタ達、いや世界中のどの冒険者よりも強いパーティーになって私達が次の勇者になるんだからぁぁ!!」
俺はそんな皆を見ながら出会った頃のイルの言葉を思い出していた。
あの言葉本当だ。
みんな本気で夢を叶えるために行動している。
冒険者武闘会で活躍すればランクアップを狙えて勇気への道に1歩近づく。
「絶対みんなで勝とう。」
俺は小さな声でそう呟いた。
そして魔力を使えないシオンもより一層俺との稽古に力を注いでいる。
しかしやはりどこか焦りを感じているようにも見えた。
「アレン、私は魔力が使えません。そんな私が魔力を駆使して戦ってくる相手にどうしたら勝てるのでしょう?」
当然の疑問だ。
今までは相手が下級モンスターだった為肉弾戦でも勝てる見込みはあった。
しかし武闘会は人間が魔法を駆使して戦ってくる。
それに魔法を使わず剣1本で臨むなんて、銃を持つ相手に棒切れで挑むようなものだ。
「そう思うのも無理はない、だからお前には俺からとっておきの武器を授けよう」
「とっておきの武器!!楽しみ!」
シオンは目をキラキラさせながら顔を近づけてくる。
「まぁ落ち着け、ほらよっ」
俺は魔法陣からシオンが普段使っている剣の半分にも満たない長さの小刀を渡した。
それを受け取ったシオンは怒ったような顔で見つめる。
「アレンは私をからかってる?こんなのどこにでもある小刀じゃん!?」
「まぁ待てってそれで俺を刺してみな?」
「はぁ!?そんなこと出来ないよ!」
いいからと俺は柄をもつシオンの手をとりそのまま小刀を腹に突き刺した。
「!?………あれ?」
驚きのあまり一瞬言葉を失ったシオンであったがすぐに目の前で起きているおかしな現象を理解したようだ。
「刃は貫通してるのに、傷1つついてない。何これ!?」
「これは唯一俺が使いこなせなかった魔剣で何者にも囚われず万物を切り裂く剣だ、正直剣の性能で言ったそこら辺の魔剣や聖剣より強いと俺は思う。」
「そ、そんな強いのこれ!?でもアレンの事切れてなかったよね?」
「そう、こいつが切れるのはーーー」
武闘会から1ヶ月が経った頃俺達は久しぶりにギルドに向かっていた。
クエストそっちのけで訓練にあけくれていたので街に来ることすら久しぶりだった。
今日はギルドに武闘会への参加登録をしに行く日だ。
ギルドに入ると参加登録をする冒険者で溢れかえっていた。
そんな中1人の冒険者がロゼッタの存在に気付く。
「おいおい!お前らどうしてここにいるんだ?」
「冒険者武闘会に私達ロゼッタも参加するからよ。」
イルが落ち着いた様子でそう返答した瞬間、ギルド内にいた全員が笑いだした。
「ギャハハハハ!マジかよ!恥かくだけだろ」
「大衆の面前で負けるとこ見せたいなんてマゾなのかな?」
「うわ〜、1回戦お前らとあたりてぇわ!取り敢えず1回くらい突破しときたいし。」
「棄権の仕方だけはちゃんと覚えとけよ〜!」
皆口々にロゼッタをバカにするような発言をする。
しかしロゼッタの誰もそんなことは気にも止めず堂々と受付まで歩いていき、淡々と登録手続きを行った。
今までであればイル辺りが怒って何か言い返していただろう。
しかし誰も何も言わない。
それは言い返せないのではなく言い返す必要が無いくらい皆もう自分に自信を持っているのだ。
「なにか言い返してみろよ腰抜け、お前らなんて皆1回戦落ちするだけだろ?」
冒険者の1人がそんなことを言ってきた。
そして俺たちはそいつに向かって全員で言った。
「俺達(私達)優勝するつもりだから。」
予想外のその発言にバカにしていた冒険者達は誰も言葉が出ないようだった。
俺達はギルド内の全員の視線を浴びながら颯爽とギルドから出た。
俺はギルドのドアを閉め皆の後ろ姿に目をやると、皆少し涙を浮かべ体が震えていることに気がついた。
その瞬間俺は理解した。
みんな怖かったのだ。
そりゃそうだ、今まで弱いとバカにされ続けてそして嫌でも自分の弱さを認めなければならないほど弱い。
そんな状況が一変し力を付けたとしても、今までバカにされてきた奴らに言い返すのは怖かったに決まってる。
俺は後からみんなの肩を寄せ。
頭を撫でながら
「みんなよく言った!お前達はもう弱くない。」
みんなで泣きながら帰路に着いた。
しかしそんな雰囲気をぶち壊すようにさっき腰抜けと言ってきたやつのパーティーが俺達に絡んできた。
「さっきは随分とデカい口を叩いてくれたな。お陰でこっちは恥かいちまったじゃねぇか」
3人程のパーティーで恐らくDランクくらいだろう。
そんな雰囲気ぶち壊し野郎を前にしてもみんな決して臆すことは無かった。
そしてイルがはぁーとため息をついて
「みんな私に任せて。」
といった。
俺達は頷きイルを置いて先に帰ることにした。
「夕飯までには帰ってきてくださいねぇ!」
ビエーブがそう言って俺達は別れた。
「ほう。諦めてリーダーが俺達に謝罪でもしてくれんのか?」
「何言ってるの?私一人で足りるってだけよ。」
「てんめぇ!」
男達は数の差なんて関係なくイルに殴りかかってきた。
戦闘時間は1分も掛からず、イルの圧勝だった。
暗闇の中ブラックコスでアレン達を見つめていた男が水晶を通して何者かと話している。
「えぇ、あれは確かに勇者アレンかと。実に興味深いパーティーを組んでいるようです。特にあの剣士………えぇ、あれはあなた様の理想に叶うかと………アレンは何かしら力を持っているようにも思えます……はい前回のアレは王としてずさんすぎました。次はあなたがふさわしい………はい、ではそのように………魔王様。」
{あとがき}
次回も20時頃に投稿予定です!
小説のフォロー、評価して頂けるとすっごくうれしいです!
今回は少し短めです。ロゼッタと誰が当たるかまで描きたかったんですけど、1万字を超えてしまいそうなので今回はキリのいいここまでにさせて頂きました。
ご容赦下さい!!
次回はいよいよ魔法武闘会が始まります。
ロゼッタの皆がどんな力を手に入れたのかお楽しみに!
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